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狂化グレーター・デーモス

 ウィリアム王子はわたしだけを引き連れて魔獣の討伐に向う。


「ウィリアム、騎士さんたちを置いて行っちゃうの?」


「足手まといになるからな……」


「でも、わたしたちだけで戦うのはキツくない?」


「大丈夫だ。これが最適解なんだ」


 ウィリアム王子に置いて行かれたことに気が付いた騎士さんと魔導士さんが血相を変えて縋りついて来る。


「王子、なんで我々を置いて行かれるのですか? 我々も魔獣の討伐にお供させてください。王子だけを危険な目に遭わせるわけにはいきません!」


 ウィリアム王子は縋りつく騎士さんたちを強く切り捨てた。


「ならぬ!」


「なぜなのですか? 連れて行かぬというのならば、せめて理由をお教え下さい」


「狂化したグレーター・デーモスは強い。お前たちでは全く歯が立たぬどころか無駄死にするだけだ」


 騎士さん、魔導士さんも無駄死にするだけとの理由を突き付けられるとなにも言えない。


 ウィリアム王子は続けて指示を出す。


「今お前たちに与えられた使命はこのコロシアムを死守し怪我人を守り通すことだ!」


「でも王子!」


「今は手を出さずに防御に専念し、チャールズ王子とガレス騎士団長、ラインハルトが到着し次第合流し、彼らの指示に従って欲しい」


「でも、それですとウイリアム王子の身が……」


「グレーター・デーモスなど、俺とアイビスだけで退治できるから心配するな」


「でもお二人だけですと、狂化したグレーター・デーモスは攻撃も防御も強化されているので非常に危険です」


「くどい! 俺様がグレーター・デーモス如きに倒されるとでも言うのか?」


「い、いえ、そんなことは……」


 あまりにも騎士さんがしつこく食らいついて来るので、面倒になったウィリアム王子は怒声を浴びせ話を打ち切った。


 騎士さんたちはウィリアム王子が普段見せない怒り方をするので、それ以上なにも言えなくなり、黙りこくってしまった。


 ウィリアム王子にはわたしたち二人だけで倒す作戦があるのかも知れない。


「ウィリアム、狂化したグレーター・デーモスをどうやって倒すつもりなの?」


「足を使っての一撃離脱の繰り返しかな?」


「そんな方法で倒せるの?」


 それで倒せるなら、足の速いマリエルとブラッドフォードが既に倒していたわ。


 でも、実際は狂化前のグレーター・デーモスでさえ二人は倒せなかった。


 わたしでも理由はわかる。


 一撃離脱作戦は瓦礫で溢れかえっている、この学園廃墟では使えない。


 おまけに防御値のやたら高いグレーター・デーモスに一撃離脱の攻撃を弱点となる頭以外に与えても微々たるダメージしか与えられず通用しないはずだわ。


 でも、ウィリアム王子は「この作戦で絶対に行ける」と言い切り自信満々だ。


 その根拠のない自信はどこから来るのよ……。


 わたしが不安げな顔をしていると、ウィリアム王子は言い切る。


「俺を信じろ!」


 グレーター・デーモスは校舎があった辺りの瓦礫をひっくり返していた。


「あの下になにかがありそうだな」


「なにかを探しているのは間違いなさそうね。マリエルとブラッドフォードがまだ生きていて探しているのかも?」


「これだけの瓦礫の山だ。二人の生存は絶望的だろう」


 確かにウィリアム王子の言う通り、二人が瓦礫に埋もれて生きているとは思えない。


 おまけに灼熱の炎でマリエルたちが焼かれたとの目撃者もいたし、生存は絶望的だわね。


「死者を弔うのは魔獣を倒した後だ。アイビスはあいつを倒すことだけを考えろ!」


「わかったわ」


 ウィリアム王子はどこからともなく剣を取り出す。


 それは見覚えのある剣だった。


「聖剣?」


「王城から呼び寄せた。これが通用するかわからないけどな。行くぞ!」


 ウィリアムは一瞬で距離を詰めグレーター・デーモスの前足に聖剣を振り下ろし、離脱をするということを繰り返すが、全くダメージが通らない。


 なんどやっても弾かれる。


 凄まじい防御力で足でさえ攻撃が通らなかった。


「全く効かないか……。なんとか前足を(ひざまず)かせて体勢を崩し、弱点の頭に攻撃をぶち込めば倒せそうなんだが……」


 わたしはこのグレーター・デーモスの攻略法を知っていた。


 乙女ゲーの『リルティア王国』物語では、マリエルの立ち回りで橋を破壊し谷底に落とし、攻略対象たちが谷底に向かって飛びこみグレーター・デーモスの弱点である首に飛び移り連撃で首を落として倒していたの。


 狂化したグレーター・デーモスに連撃が効くかどうかはわからないけど……首が弱点なのは間違いないと思う。


 ここには橋は無いけど瓦礫の山があるわ。


 谷底に突き落とすことは出来ないけど、瓦礫を吹き飛ばして前足ぐらいは跪かせるのは出来るはず。


「わたしにいいアイデアがあるの。ウィリアムは魔獣の注意をひいて」


「どうやって?」


「瓦礫に穴を掘ってグレーター・デーモスを跪かせるの。ウィリアムは今までと同じように攻撃し続けて」


「わかった」


 わたしは得意魔法の『炸裂』を魔獣の足元に放つ。


 しかも詠唱ありで魔力を込めまくった特大の威力の炸裂だ。


 『ズゴゴゴ』と凄まじく重い地響きが鳴る。


「ウィリアム、逃げて!」


「!」


 前足を攻撃していたウィリアム王子が避けると同時に炸裂が発動、(まばゆ)い光が辺りを包み込みグレーター・デーモスの足元の瓦礫を吹き飛ばす。


 突如足元に大穴が空き、巨体を支え切れなくなったグレーター・デーモスは体勢を崩し頭から地面に突っ伏す。


「今よ!」


「おう!」


 ウィリアム王子は弱点の頭に飛び乗り聖剣を振り下ろす。


『聖《セイクリッド》・切断スィション!』


 決まった!


 グレーター・デーモスの首は切断され、切り離された頭はゴトリと瓦礫の山へと転がり、息絶えたのであった。

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