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アナザー・ワン  作者: コスモス
第一■■■ 神域の魔法使い
9/19

第九話 保険

 ──またこれか、とレックは思った。


 ナイルと会った時も、ゾンと会った時もそうだった。

 基本、自分に選択肢はない。

 ただ事なきを得るために、相手に同調する。

 これが最も合理的で、最善の選択。


 何故なら、よくある異世界転生の物語にある圧倒的な力というものを、持ち合わせていないのだから。


 強いて言えば、この状況をゾンが見守っているだろうという程度。

 それだって、今のこの状況を変えられるかと言えば、答えはノーだ。

 結局、無力な己という存在が招いた結果。

 誰かを恨むというのは、お門違いだろう。


 (四天王、水天、魔界戦線、戦う、選別の儀)


 クトラの言う幾つかの単語を思い出す。

 それの詳細を知る術を、今のレックには持ち合わせていない。

 だが、憶測を立てることは出来る。


「分かりました。力の限り、この地を守る為に尽力します。ですが、今のボクは無力です。誰かの助け無しに生きていくことが出来ません。なので──」


 今の自分に足りないモノがあるならば、それを補わなければならない。

 力がないのならば、力を手に入れればいい。


「──戦うための力を、ボクにください」


 ベッドから降りたレックは、そうクトラに言いながら頭を下げる。

 その様子に少し驚くクトラだったが、ニッと笑みを浮かべながら答えた。


「へー。凄いね、君。勿論! そのための選別の儀と修練の儀だからね。一人前になるまで、アタシ達が面倒をみようとも!」


「はい! よろしくお願いします!」


 レックは、元気に声を上げながらもう一度頭を下げた。

 そんな健気なレックの姿を微笑ましく見ていたクトラだったが、不意に小首を傾げる。


「あれ? でもアタシそこまで説明してたっけ?」


 当然、そんな説明をレックは受けていない。

 まだ寝ぼけ気味のクトラから、何かあった際の大義名分を得るためだ。


 選別の儀や修練の儀とやらが何かは分からないが、少なくともそこまでは自分の身は保証してもらえるはずだ。

 クトラの人柄的に、わざわざそんなことをしなくても良いとは思うが、念には念をというやつだ。

 即興のアドリブだったが上手くいった。


 四天王を名乗るということは、恐らくこの世界の高い地位にいる存在。

 異世界である以上、言葉そのままの意味とは必ずしも言えないが、それでも後ろ盾が有るか無いかでは雲泥の差だろう。


 願わくば、戦うための力が魔法みたいなものであれば、これ以上ない。

 しかし、下手に期待して違った場合の絶望感が計り知れないので、期待しないほうが無難か。


「あっ! そうだった! このことを早く国王様に報告しないと」


 またも思い出したように声を上げると、クトラは扉へ向かおうとする。


「えっ! でもナイルさんからちゃんと説明してやれって言われてるんじゃないんですか!?」


 実際にはまだ何も説明してもらっていないレックは、焦りながらもそう呼び止める。


「うげっ! どうしよう。選別の儀の連絡は早いほうがいいんだけど、確かにレック君をこのままほったらかしにするわけにも──」

「お姉ちゃん! 後はあたしに任せて!」


 クトラが頭を抱えて困り果てていると、突如扉が開き、先ほど椅子に座っていた少女が現れた。


「うおー!いつになく頼りになるな、わが妹よー。でも大丈夫?」


「勿論! あたし、いつも家にいて、お姉ちゃんの役に立てないんだもん。こんな時くらいあたしを頼って!」


「うーん、背に腹は代えられないか。じゃあ悪いけど、よろしくね! レック君、後はハイラにいろいろ聞いてね。アタシも用事を済ませたらすぐ戻ってくるから! それじゃ!」


 慌ただしく部屋を飛び出すクトラ。

 部屋の中には、レックとハイラの二人のみとなった。


「よし!」


 額のヘアバンドを掴み、そう気合を入れると、ハイラは険しい表情をしながらレックに近づく。


「椅子に座ってもらっていいですか!」


「は、はい!」


 言われるがまま、最初にハイラが座っていた椅子に座るレック。

 ハイラは少し考えた後、思い出したように部屋から出たかと思うと、同じような椅子を持ち出し、レックの前に置き、向かい合うように座った。


「それじゃ、よろしくお願いします!」


「あっ、はい。よろしくお願いします」


 面接かな? と苦笑いを浮かべながら答える。

 見た目に反して、思ってたよりも元気な子だな、とレックは思った。

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