聖女様は最悪です
「あー、それはさすがに両親が反対しますね。冒険者は荒くれ者が多くて、中には犯罪者まがいもいますから。名門フィンハイムへの入学だからこそ、帝都行きを許されたようなものでした。あわよくば貴族の令息とどうにかなってくれないかと薄い望みを託されていた感もありましたし。それにやっぱ騎士が一番かっこいいじゃないですか! フィンハイムに入学した年にちょうど皇太子殿下がご結婚されて、祝賀パレード見たんですよ。沿道に詰めかけて。そのときに見た騎士のパレードがもう、かっこ良くてかっこ良くて。その日初めて女性騎士を見たんですが、鮮烈に記憶に残りました。単純に憧れました」
颯爽と白馬に跨がり、煌びやかな細剣を腰に差していた。凛としたその姿は気品溢れる美しさで、パレードに華を添えていた。
「おい、皇太子の結婚祝賀式なら私も出たぞ。パレードは出てないがな、皇居のバルコニーに立って祝辞を述べたんだ。見てないのか」
「あー、そういやそうでしたね。滅多に下界にお姿を現さない聖女様がーっていうんで、見に行きました。けどすんごい人垣で、遠くの方からしか見れなくて、豆粒みたいでしたね。聖女様」
「おいおい、初対面の感想が『豆粒』って失敬だな」
「あー、あと豆粒ながらも子供ってのは分かりました。聖女様ってまだ子供なんだなって初めて知りましたね。あのときおいくつでした?」
「十二だったな。子供といえば子供か。お前はいくつだったんだ?」
「十五ですね」
「で、初めて見た私に憧れて、それから9年の時を経てようやくこうして直に話せるまでになったわけだな」
「憧れ対象を勝手にすり替えないで下さい。私が憧れたのは、豆粒の聖女様ではなく女騎士ですから」
「では女騎士になれば良かったではないか。何故わざわざ男に。そんなに聖女騎士になりたかったのか? 憧れの私の専属護衛に」
「聖女騎士は一応名誉職ですから、経歴に箔がつきます。そのわりに誰もつきたがらない職ですから、私に御鉢が回ってきたんです。二年我慢すれば、分団長にしてやると約束されて。平たく言えば出世のためです」
「おいおい、お前ぶっちゃけ過ぎだろう。私を踏み台にして出世しようとは、酷いやつだな。大体、誰もつきたがらない名誉職って何だ」
「それは聖女様、胸に手を当ててお考え下さい。騎馬ごっこがしたいと駄々をこねて馬役をやらせて背中で跳ねたり、魔力調整の訓練だと言って空気銃で撃って爆笑したり、聖女塔の女性への愛の告白を強要したり。パワハラ、セクハラのオンパレードじゃないですか。最悪です」
「それはいくつのときの話だ。子供のときの可愛い悪ふざけだろう?」
「いえ、最後の件はわりと最近の事と聞きましたが」
私はどうせ今日クビになる身だ。後任者のために言ってやることにした。
「ああ。あれは、あの青びょうたんがいつまでもウジウジねとねとしておるから、背中を押してやったまでのこと。見事に振られたが、諦めがついて良かっただろう」
「と、に、か、く。もう少し思いやりを持って臣下に接してください。聖女ともあろうお方が。私の後任者は誰になるか分かりませんが、頼みますよ」
「後任者? 二年はお前が務めるのだろう。聖女騎士を。せいぜい私を踏み台にして、出世するがいい」




