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運命の赤い糸ですか?

そういって魔女は魔法のステッキを出すと、ちちんぷいぷいと冗談のような呪文を唱えて、空中に大きくハートを描いた。

するとそのハートマークからぼわっと煙が出てきて、それが人影を生み出した。


私と向き合って立っているその男は確かに美男子だったが、どこか親近感があった。

筋肉質でバランスの良い体つき、手足がすらりと長い。少し赤茶けた金髪はウェーブがかっていて、自然に流した感じが洒落て見える。

凛々しい眉の下には暗めのブルーアイズ。くっきりとした幅広の二重まぶた。鼻筋がすっと高く通っていて男らしく、下唇が少し厚めでセクシーだ。

「THEハンサム」といった感じの、イケメンっちゃあイケメンだけど、ちょっと古いタイプのイケメンだ。


「あらぁ、反応イマイチぃ? タイプじゃない? あたしは好きなタイプよ~。これ、あなたをベースにした顔だから、まるっきり別人にはならないのよ~。土台のオリジナルはあなたなの」


なるほど、言われてみれば確かにそうだ。

髪の色も瞳の色も私と全く同じだし、髪質や唇の形も似ている。

似ているがやはり男で、私にはない精悍さがあって、私よりパーツが整っていて品のいい顔立ちをしている。


「十分でございます。是非ともよろしくお願い致します」


私は魔女に深々と頭を下げた。

最初は竜の鱗(上級魔術の最高位素材)を手土産にするつもりだったが、チャーリーにして本当に良かった。


ちなみに王子チャーリーは、遥か大昔にはどこかの国の本物の王子だったそうだ。

最果ての魔女と恋仲だったが、人間の王子には寿命があった。寿命が尽きる前にチャーリーは魔女に願ったそうだ。

「例え肉体が滅びて魂だけの存在になろうとも、ずっと君の側にいたい」と。

だからといって「じゃあ魂を人形に移して、人形がボロボロになったらまた人形を縫って魂を入れ替えて、繰り返せば永遠に一緒だね♡」なんて発想には普通至らない。


そんなサイコパス相手に喧嘩腰だった自分が恐ろしい。

大体この魔女、麻袋を開くまでチャーリーのこと忘れてなかったか?

落ち込んだ様子もなかったし、自分で探しに行っていない時点でお察しだ。

やはり永遠の愛など無いのだと、不敏なチャーリー人形を見て学んだ。

まあそれ以前に、愛だの恋だのは私には無縁だけど。


立ち去ろうとしたとき、魔女に呼び止められた。


「あっ、そうそう~。言い忘れてたわ~」


ここまで回想して、まさに今、思い出した。

この後に魔女から言われた言葉を。すっかり忘れていた。


「誰の目にも男に見える魔法だけど、例外があるのぉ。この世に一人だけ、あなたの本当の姿が見える相手が存在するわ」


「誰ですか?」


「赤い糸で結ばれた、運命の相手よ。あなたの運命の相手にだけは私の魔法も効かない。跳ね返すの。何故なら赤い糸で結ばれた運命の相手だからよ~、きゃあ運命的っ」


赤い糸で結ばれた運命の相手?

どこの占い雑誌の情報だ、乙女か。馬鹿馬鹿し。


「あたしとチャーリーみたいねえ、ダーリン♡」

「ああ、そうだよ。 マイハニー」


どうせ恋愛脳サイコパス魔女の戯言だろうと本気にしなかった。

どちみち愛だの恋だの私には無縁だし。

そう思って忘れていたのだ。


『赤い糸で結ばれた運命の相手にだけ、本当の姿が見える』


えっ、ウソっ……まさか、あの聖女じゃないよな?



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