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聖女専属になれましたが前途多難です

前任者からの引き継ぎを終え、二人きりになった部屋で、聖女は派手派手な羽根の扇を使い、ちょいちょいと私に手招きした。


聖女フィオナはよそゆきの外面はいいが、普段は横柄な態度で怠慢で可愛いげが全くない、と前任者からこっそり聞いている。


我が国に天与の恵みをもたらし、魔物の侵入を防ぐ結界を保つため一役買っている聖女様には、誰も強くは出れないのだ。

皇帝でさえも彼女には媚を売っている。


「はい」と大きく返事をし、大きな貝殻を模した趣味の悪い聖女専用椅子の前に跪くと、聖女の組んだ足先がぶらぶらと揺れているのが視界を掠めた。

人の顔がすぐ近くにあるのに足をぶらぶらさせやがってと内心毒づくも、従順な下僕よろしく頭を垂れるしかない。


聖女騎士セインテスナイトという一応は名誉職についたのだ。これで出世コースには乗った。後はこのワガママ聖女のお守りを少しの間我慢すれば、晴れて団を一つ任される。

自分の団を持つ、小団長となれるのだ。


それにしてもさっきからぶらぶらしてるこの足、妙にでかくないか? 私よりでかい気が。


「お前、なんで女なんだ?」


聖女の口から発せられたのは、信じられない言葉だった。

弾かれたように顔を上げると、顎先を上げ傲慢そうに私を見下ろしている聖女とばっちり目が合った。


「聖女様こそ、どうして男なのですか?」


男にしては高音で透明感があるが、明らかに女性とは違う声の元を辿れば、立派な喉仏が確認できた。

どうりで足もでかいわけだ。

聖女は組んだ足を下ろし、身を乗り出した。


「お前には私が男に見えるのか」


奇妙な質問だが、私もまさしく同じように驚いていて、同じ質問を返したい心境だ。

貴方には私が女に見えるのか、と。

私は四年前まで女だったが、最果ての魔女に頼み込み、男にしてもらった身だ。いや、正確に言うと「誰の目にも私が男に見える」という特別な魔法をかけてもらった。


しかし例外が存在することを今知った。

さすが我が国の偉大なる加護者、聖女フィオナだ。最果ての魔女の魔法が効かぬとは。

てか聖女だよな?

男だけど。

私の目がおかしいのか?


「はい、私には男性に見えますが。私の目がおかしいのかもしれません」


「いや、合ってる。私は男だが、皆の者には女に見えるように術をかけている身だからな」


「どうしてそのような術をわざわざ……」


「どうして? 私は聖女だぞ。『女』と付くからには男ではなれないのだ。ああ、お前もその口か。聖女騎士は男にしかなれない。だから私と似た術の類いを使い、男に成り済ましているんだな。私以外の者は皆、お前を男だと思い込んでいるようだったものな」


聖女フィオナはふふんと鼻で笑い、「飲もう」と言った。


「え?」


「お前とは同胞意識が芽生えたぞ。このような仲間は滅多にいるものではない。同志よ、盃を酌み交わそうぞ。下までひとっ走りして、伝えて来い。祝宴の用意をと。お前の聖女騎士就任の祝いだ」




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