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≪零≫

 宮殿内ーー


 任務が終了し、一人で宮殿内の見回りをしていた。


「ジン!何やってんだよ!心配したぞ!」


 アレスが物凄い剣幕で俺の方へと向かってきた。


「見ての通りだ。少女を助けてたんだ。文句あるか?」


「いや、見てたから知ってたし文句もないけど……王様や、魔導師達と口論を繰り広げていた時なんて心臓止まるかと思ったぞ。急に姿が消えたと思ったらあの女の子の前に立っていたんだから。冷や汗が止まらなかったぞ」


 本気で焦っているようだった。

 まぁ、今日で宮殿魔導師団を辞めるわけだしな。

 任務外だが、儀式の邪魔をしたわけでもない。むしろ間違いを指摘してやったのだ。感謝して欲しいぐらいだ。


「ジン」


 空気が張り付く。


 振り返ると、一人の男の姿があった。

 同じ宮殿魔導師団の服を身に纏い、長い黒髪を一つ縛りに結んでいる。


「どうも」


 手短に挨拶をする。


「どうもじゃない。最後の最後で盛大にやってくれたなお前は」


 男はハァっと溜息をつく。


「ナインさん。お疲れ様です」


「おう、お疲れ」


 ナイン・テンタネルト。齢二◯九歳。

 宮殿魔導師団隊長。俺の次に若い十三で宮殿魔導師団に引き抜かれた後、順調に出世し二◯四で隊長という座についた。普段は温厚かつ面倒見が良くいが、任務となると鬼と化す。それでも宮殿魔導師団の皆からの信頼は厚い。


「確かにあの現場を見れば飛びつきたくのも分からなくはないが……。まさかお前とは。どちらかと言えばアレスの方を心配していたんだがな」


「ちょっと!それはひどくないっすか?」


「お前女の子好きだろ?あの女の子だってかなり可愛かったからな。それに聞いたぞ。口説いていた女の子にビンタ喰らったそうじゃないか」


「それはプライベートの事でしょ!?任務中は別です!それにあれはたまたまっすよ!俺が本気を出せば女の子なんてイチコロっすよ!」


 と必死に弁解を図ろうとしている。

 ビンタを喰らうほどって……。どんな口説き方をしたんだ。


 ナインは、コホンと咳払いをする。


「ジン。五年間という期間ではあったが国のためによくその身をすり減らして戦ってくれた。今日を持ってお前を、インベリッテ宮殿魔導師団及び≪零≫から解任する」


 ナインの言葉が宮殿に響き渡った。


 俺は胸章を外し、ナインに渡す。


「俺にはもう必要のないものだ」


「……そうだな」


 ナインは胸章を受け取り、ポケットにしまう。


「ジン。これからどうするんだ?」


 アレスにも聞かれた質問だな。


「静かに暮らす。今のところはそれ以外考えていない」


 すると、ナインがムッと顔をしかめた。


「なんだ?何か不満でもあったか?」


「お前、明確なライフプランすら考えていないのにあの少女を引き取ると言ったのか?」


「いや、考えていないわけではない。ただ、このままだと居場所がないと王が言っていたからな。多分今頃≪転生(アステル)≫の失敗作だとか国でも騒ぎになっているはずだ。インベリッテだと住み心地が悪いだろう」


 俺が魔法の間違いを指摘したとは言え、連中のあの罵詈雑言は簡単に振り払えるものではないだろう。


 言葉は時に剣や魔法以上の力を持つ。


「そうか。今≪零≫のみんなであの少女を保護という形で育てるのはどうかという案が上がっているのだ。急に男と二人で屋根の下、一緒に暮らすというのもどうかと思ってな。それに魔導師としての力に目覚めるかもしれないしな」


「なぬっ!」


 さっきまで黙っていたアレスが大きな声を出した。


「ジン!お前まさかそういう目的で引き取るとか言ったのか!」


 そんなわけないだろう。

 と、言ってやりたいが面倒な事になりかねないのでスルーする。


 確かに≪零≫なら少女を育てるだけの環境は整っている。優秀な魔導師も多いのでもしかしたら力に目覚めるかもしれない。


「これはあくまで俺達の考えだ。一番は少女がどうしたいかなんだが」


 そう。俺達がどう言ったところで決めるのは少女なのだ。


「今、少女は≪零≫の特務室で保護している。今から今後の話をしようと思っていたのだ。向かうぞ」


「あぁ」


「ジン!俺は許さないからな!あんな可愛い子ちゃんと二人で生活するなんて許さないからな!」


 俺達は宮殿を後にし、≪零≫の特務室へと向かった。

今のところ登場人物がほぼ男性しかいないので次回からは可愛い女性が登場します!

可愛い女性が登場します!!

登場します!!!

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