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金髪幼女の先生

 リナは、天音を連れて「二人きりで話をしましょう!」と言い、立ち上がる。


「ビジャさん!どこか使っていいお部屋ってありますか?」


 そこにはビジャの姿がない。リナの講義を受けていたときは俺達の後ろで聞いていたはずなのだが。ビジャが座っていた椅子に置き手紙らしきものが置いてある。リナは置き手紙を手に取って、


「年寄りには何を言っているかさっぱり分からん。若者達で有意義な時間を過ごしておくれ。

p.s.リナの性格の事だから、天音と話したいと言うだろうから、部屋は好きな所を使ってくれて構わん。ビジャ」


 ビジャは超能力者なのか。リナの考えが分かっているかのようだ。それにしても、この場から去るなら何か一声掛ければ良いものを。講義の邪魔をしたくないというビジャの心遣いと受け取っておくか。


「流石ビジャさん!私の考えなどお見通しというわけですね」


「聞いてなかったが、リナとビジャはどういう関係なんだ?お前が遅刻してきた時のビジャの口ぶりからして昔からの付き合いのような感じがしたんだが」


「小さい頃、この村で暮らしていたんですよ。ビジャさんにはその時からお世話になっていて」


「そうだったんですね。今、精霊の研究をされているのは、昔から精霊に興味があったんですか?」


「えぇ!研究の為に、精霊を一度この目で見てみたいのですが、因子を持たない私は見ることができないのですよ。だから精霊因子を持つ天音さんはとても羨ましいんです!」


 キラキラとした目を天音へと向ける。


「さっき持ってた精霊石はどこで手に入れたんだ?」


「それはですね……。企業秘密です」


 人差し指を唇に当て、小悪魔的な笑みを浮かべた。まぁ、見たところかなり純度の高い精霊石だったからな。もし、誰かにでも知られれば希少価値が下がるという考えでもあるのだろう。


「そんなことより!天音さん!お話を早く聞かせてください!」


「きゃ!」


 パン!と手を叩き、天音の手を取り部屋へと案内していく


「天音。先に戻ってるぞ」


「分かりました、ちょっと!話しているんでもうちょっと待ってください!」


「ほらほら!一分一秒も無駄にできないのですよ!早く早く!」


 リナのあの様子だと一時間で解放してくれるとは思えないな。天音はなんとも気の毒なことだ。俺は立ち上がり、ビジャの家を後にする。


「違う違う。もっと魔力を正確にコントロールするんだ。じゃないと、こいつは浮かないぞ」


 広場から声が聞こえる。このまま家に戻ってもやることがないしな。俺は広場へと足を運ばせる。あれはーー、


「アテンか」


 そこには見慣れたアテンの姿がいた。

 すぐ側には、アテンと同じくらいの背丈の人物がいた。長い金髪は、見る者全てを魅了するように美しく背中に流れている。


 あの光景を見て、誰もが幼い子供達が遊んでいるように見えるだろうがーー、


 アテンが俺に気づく。

 続いて金髪の人物が振り向いた。


 長い睫毛に深く青い瞳。童顔に透き通る白い肌。桃色のリボンが多様にされている水色のドレス。幼女、という言葉が似合う可愛らしい少女である。おそらく、百人いたら百人が可憐な少女だと思うだろう。


「ジン。久しぶりだな」


 彼女はそう言って笑う。

 

「セリーナ、なんでここにーー」


「セリーナ?単語が一つ抜けてないかー?んー?」


 そう言って、彼女は俺へ詰め寄ってくる。表情は笑顔のままだが、その裏にはとてつもなく言葉では表現できないようなものがあると悟った俺は、


「セリーナ、、、先生。なんでここにいるんだ?」


「よろしい」


 彼女は満足げにそう言った。


「ジン。この人は誰?」


 アテンが俺の元へと駆け寄り尋ねてくる。


「紹介する。セリーナ・ジェネラド先生。俺が魔法学校に在学していた時の担任だ」


「よろしく」


 セリーナは微笑みがらドレスの裾を掴み、優雅にお辞儀をする。一つ一つの動作が美しく、まるでお姫様のような佇まいである。最も年齢はあれだがーー。


「それでセリーナ先生。なんでここにいるんだ?」


「そりゃもちろん教え子に会いたいから来たんだよ。私が少し遠出していた内に、お前が魔導師団を辞めたことを聞いて、心配して来てやったんだ。少しは感謝しろよ」


 インベリッテからそんなに離れた場所でもないのだがな。これを口にすれば、面倒なことになるので心の中に留めておく。


「それで、ジンの所へ向かう途中に少年と会ってな。中々面白い少年だったから、これをやらせていたんだよ」


 セリーナは地面に転がっている球を指差す。

 見た目はただの黒い球体である。


「魔力玉か」


「そう、自身の魔力を無駄なく送ることで、こいつは浮遊する。魔力が少しでも乱れるとびくとも動かん。魔力操作を身につけるには持ってこいの魔道具だ」


 懐かしいな。確かこれは、魔法学校の入学試験にあったものだ。いくら魔力を持っていてもそれを操作できる技術がなくては、魔導師としてやっていけないからな。魔力操作は、魔導師になる為の基礎中の基礎なのである。


「で、アテンの結果は?」

 

「まだまだだったな。自分の魔力を制御できていない。だが、魔力操作が完璧にできるようになれば良い魔導師になれる。この少年はその素質を持っているよ」


「良かったな、アテン」


 そう言って、俺はアテンの頭を撫でる。

 アテンは「エヘヘ」頬を緩ませた。


「ほう、アテンと言うのか。このまま精進するが良い」


「うん」


 アテンは頷いた。


「ジンが来てくれるのは丁度良かった。どうだ?この後時間はあるか?」


「大丈夫だ。場所は俺の家でいいか?」


「うむ」


「アテン、この調子で頑張れよ」


「うん、じゃあね」


 アテンと広場で別れた後、俺とセリーナは俺の自宅へと向かった。

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