語られた真実
犯罪魔導師にはそれぞれランクというものが存在する。
被害者に軽傷や重傷、窃盗など働いた人間ははイエローリスト。
被害者を一人から五人まで殺した人間はレッドリスト。
五人以上の人間を殺した人間は、ブラックリストに記載される。
それを集団で行う者もおり、それぞれイエロークラウド。レッドクラウド。ブラッククラウドと呼んでいる。
ここにいる男の集団≪闇夜に蠢く蛇の集団≫は、約二年前から様々な場所で犯罪行為を行なっている。
その数は一五四七件。
重傷者、死者は二◯◯◯人を超えている。
つまりブラッククラウドという訳だ。
だが、三ヶ月前に俺と≪零≫、魔導師団の総攻撃にによって、ほぼ壊滅に追いやってやったはず。取り巻きは何人か残してしまったが、最近は特に目立った動きがないという報告も受けていた。ということはこいつはその生き残りと言うわけか。
「ん……?お前……その魔力は……」
男が何か呟く。
「サーペンは壊滅したはずだ」
サーペン、というのは略称みたいなものだ。
あんな長ったらしい名前、一々言うのは面倒だからと言って、誰かがサーペンと名付けたそうだ。
それ以来、≪零≫ではサーペンで通っている。
「サーペン……。あぁ、確かに壊滅したさ。魔導師団とかいうクソのせいでな」
男は苛立ちを見せる。
「だが、持ち直したのさ。あのお方のおかげでな」
あのお方だと?
あの時、サーペンのトップと言われていたアルガ・ネイビアとその幹部の二人は捕らえ、今はインベリッテの地下で拘束されているはず。
他にも幹部がいたと言うことか?
「あのお方は凄いぜ。あれだけ壊滅していた集団をここまでしてくれたんだから。いや、今はそれ以上と言ってもおかしくねぇな。俺はガビデル。見たところお前は村人か。秘密を知られた以上、生かしてはおけねぇな」
男はそう言って魔法陣を描く。
バチバチと雷が鳴る音がする。
「≪雷鳴≫!」
青い雷が俺に襲いかかる。
俺はアテンを抱え、避ける。
「いつまで逃げ切れるかな!」
ガビデルは≪雷鳴≫を撃ち続けるが、俺は難なくと躱しつづける。
魔法の技術を見るからにサーペンの良いとこ中の下と言ったところか。
「チッ!」
ガビデルは舌打ちする。
「ガキ!お前の大事なママがどうなってもいいのか!?俺は≪聖凛の花≫を持っているんだぞ!」
異空間に収納していたのか、魔法陣を描きそこに手を突っ込むと、そこから≪聖凛の花≫を取り出した。
俺は即座にガビデルの懐に飛び込み、≪聖凛の花≫を奪い取った。
「≪魔法分解≫」
すると、≪聖凛の花≫が崩れていく。そこに現れたのは、どこにでも咲いてある普通の花だった。
「これはどういうことだ?」
マキナに話を聞いた時からずっと疑問だった。≪聖凛の花≫はどんな病も治すと言われる奇蹟の花だ。アテンがガビデルに協力していたのは三週間ほど前。それを薬に変換させるのに時間を要したとしても、その薬を処方し始めたのは二週間前だろう。
だが、治るどころか症状は悪化している。
≪聖凛の花≫にも治せない病気があるのかもしれないが、≪聖凛の花≫がそう簡単に入手出来る訳がない。
だから一度、自分の目で確認しておきたかったのだ。
これは≪偽造≫によって、相当精密に創られた偽物だ。並の鑑定士ではまず気が付かないだろう。だが、処方すればすぐ偽物だとバレてしまう可能性がある。
そこら辺に咲いてある花だからな。≪聖凛の花≫の見た目でも効果はゼロ。申し訳程度に回復魔法が組み込まれているが、焼け石に水だ。
「まさか気付かれるとはな……。さっきの動きといい、お前、何者だ?」
「え……?ジン。どういうこと?」
アテンはまだ理解できていないらしい。
「マキナが飲んでいたのは、限りなく≪聖凛の花≫に似せた偽物。回復魔法を組み込んでいたようだが、この程度ではマキナを治すのは不可能だ。アテン、お前は騙されていたんだ」
「そんな……」
アテンは俯く。
「ガビデル。お前の≪偽造≫は一流と言っていいだろう。だったら、何故アテンに≪擬態生成≫をやらせていた?≪偽造≫も≪擬態生成≫に類似している魔法だ。お前ならもっと上手くやっていたはずだろう」
ガビデルの表情が薄気味悪い表情になる。
「お前の言う通りさ。確かに俺ならもっと上手くやっていただろうな。でもな、持ち直したとはいえ、全盛期より人間が大幅に激減しちまってななら、今のうちから将来有望な人間を見つけようって考えに至ったわけ」
「だが、何故アテンだったんだ?」
アテンも魔法が使える方だが、魔法が発展している今、アテンよりももっと実力のある子供がいるはずだ。
「このガキは、物体を創り出す能力に長けている。今はまだ未熟だが、将来は決して誰にも見破られない偽造品を創り出せる能力がある!
それに……弱みを持っている人間の方がこっちが操作しやすいからな……。そして、一度罪を犯せばもう普通の一般人ではいられない。犯罪者の仲間入りさ。そこからどんどん手は罪で汚れていき……」
なるほど。
ガビデル達サーペンは、今人手が足りない。
だから、今すぐにでも補強したいが、出来れば弱みを持っている、自分達の指示に逆らうことが出来ない人間で、将来的に見てサーペンにとって利益のある人間。そして、アテンはたまたまそれに当てはまったということだ。
「お前が邪魔をしなければ、もう少しでこのガキは完全にこっち側の人間になれそうだったってのに……。まぁいい。お前さえ始末出来ればこのガキに今日も教育が施すことが出来る。今日は人を殺させようと思っているんだよ」
中々どうして不快な話だな。
アテンは必死に母親を助かるならと、協力していたにも関わらず、≪聖凛の花≫は偽物。
そして、犯罪者としてのレールを無理矢理歩かせようとしている。
アテンだって悪くない訳ではない。
アテンも断ることが出来たのに、そうしなかった。母親を助けられるならと、という想いが強かったのだろう。
ガビデルはそれを利用した。
何より、サーペンを全滅させることが出来なかった俺の責任だ。
俺は、懐にしまっておいたインペルタルを取り出した。
「なんだよ?俺とやる気か?ただの一般人がしゃしゃり出てんじゃねぇよ!≪肉体強化≫!」
ガビデルは突っ込んでくる。
≪肉体強化≫によって身体能力を上げたようだが。
「オラァ!」
ガビデルは拳を振るう。
俺に当たると確信したのだろう。
しかし、既に俺はその場にはいなかった。
アテンもだ。
「い……いねぇ!」
「ここだ」
俺とアテンはガビデルの背後をとっていた。
「いつの間に……」
何か言おうとしていたが、俺はガビデルに向けインペルタルの引き金を引いた。




