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310/310

310・はじめての ないせん1

|д゜)ユニーク数65万突破しました!!

応援ありがとうございます!!


「君が我が国に来るのは、これで何度目

 だったかな?」


ウィンベル王国王都・フォルロワ―――


アラサーのブロンドの短髪の国王は、

王宮のとある一室で、


リーゼントのような髪型をした、

他国の官僚と対峙していた。


「確か、ええと……

 4回でしたかしら♪


 おかげで、こういう損な役回りを―――

 押し付けられるようにってしまいましてねぇ♪


 まあ、自業自得ではあるんですけどぉ」


タクドルはうやうやしく(ひざまず)くと、

一通の書類を差し出す。


ラーシュ陛下はそれを一読すると、


「これを見るに……

 ザハン国は万一の場合、ウィンベル王国および

 辺境大陸各国に救援を求めると読めるが。


 そこにザハン国施政者ではなく、

 ロックウェル家の名前しか書かれていないのは

 どうしてだ?」


「まぁそれは、こちらにもいろいろと

 事情がございまして―――」


そしてタクドルは説明し始めた。


メナスミフ自由商圏同盟の上層部が、

未だ楽観的な予想を捨て切れていない事。


正式に救援要請を出せない事。


半ば事後承諾のような形で、最新の情報を

理解している諜報機関が書面を整えた事などを。


「ロックウェル家というのは?


 このような書面に名を記す以上、

 相当有力な名家だと思われるが」


「財閥ではありますけどぉ、

 ザハン国だけではなく、自由商圏同盟各国に

 影響を持つ家でございますわぁ。


 正直、ザハン国統治者よりこちらのサインを

 頂けた方が嬉しいくらいでして」


「実質上、ザハン国の実権を握っていると

 いう事か」


「ご理解がお早くて助かりますぅ♪」


そこでウィンベル王国の国王は静かに

ひと息吐くと、


「だが、これは問題だ。


 差し迫った危機である事は、こちらもある程度

 情報を入手していてわかっているが、


 余計動く事が難しくなった」


「あらぁ?

 実質上の支配者のお墨付きでは不足で?」


ラーシュ陛下の言葉にザハン国の官僚は

聞き返すが、


「これが正式に、ザハン国からの要請であっても

 同じ事だ。


 まだそのモトリプカ始め、そちらの強硬派が

 こちらに敵対姿勢を見せたわけでもない。


 だがこの要請に応じるという事は……

 こちらから、完全に敵対するという明確な

 メッセージとなってしまう」


「いやいや、でもですよぉ!

 モトリプカの内情をすでにご存知であれば、

 決して相容(あいい)れないのではありませんかぁ!?


 あの国の奴隷は元より、人外の現状を

 わかっておいでならば―――」


必死にタクドルは食らいつくも、


「相容れないという事と敵対は異なる。


 それに、同盟諸国への救援要請は……

 クアートル大陸の四大国も巻き込む形となる。


 それは承知の上なのか?」


「そ、それはですねぇ」


彼は言いよどむ。


もちろん、それは考えなかった事では無いが、

いくらロックウェル家の同意を得たとはいえ、

諜報機関ごときがクアートル大陸の列強に対し、

独自に申し出など出来るわけもなく。


つまり、ウィンベル王国及び辺境大陸への要請を

足掛かりとして―――

四大国へも緊急事態であるという事を間接的に

知らしめて、


さらに、借りを作るにしても……

いきなり四大国ならともかく、辺境大陸ならば

ザハン国一国でも『返済』が可能という打算も

合った。


「一応、話は(うけたまわ)った。

 同盟諸国にもこの件を掛け合う。


 こちらがどう動くかは、その結果次第だと

 心得てもらいたい」


国王から事実上の拒否を言い渡され、さしもの

タクドルも意気消沈(いきしょうちん)するが、


そこでラーシュ陛下は彼に近付き小声で、


「(……人間の都合では、な。


 王の地位であっても、そちらとお馴染(なじ)みの

 フェンリル様や―――

 魔族は支配下ではない。


 その行動まで責任は取れん)」


暗に、彼らが独自で動く可能性を指摘されると、

ザハン国の官僚は表情をパアッと明るくしたが、

すぐに冷静になり、


「仕方がありませんわねぇ……♪


 確かに現状、そちらと敵対しているわけでも

 無し―――

 ましてや同盟もまだ組んでいない国のために、

 うかつに動く事は無理ですわよねぇ。


 あちらも、今すぐ攻めてくるわけでもないで

 しょうし……

 こちらで何とか対応しますわぁ♪」


「うむ。悪く思わないでくれ」


こうして、ザハン国の使者との密会は終わり、

形式上、タクドルは何の成果も得られず……

帰国する事となった。




『という事になっているようだが―――』


数時間後、私はその話をライさん経由で、

公都『ヤマト』の冒険者ギルド支部にて

聞かされていた。


「よっぽど切羽詰(せっぱつ)まっているんだな」


アラフィフの筋肉質のギルド長が、

頭をガシガシしながら返すと、


「まあ、あっちは当事者ッスからねえ」


「気が気じゃないのはわかりますけど、

 上の方が危機感が薄いっていうのは

 どうなんでしょう?」


黒髪短髪の、褐色肌の青年と……

その妻である丸眼鏡のタヌキ顔の女性が

それぞれ感想を述べる。


「それが、現場と上の違いというヤツなんで

 しょうね。


 いい悪いではなく、実際にその目で見て

 みないと状況を把握出来ない人っていますし、


 それに上に行けば行くほど権限が高くなり、

 対応可能な幅も広がっていく。

 それが必要以上に、上層部を楽観的に

 させているんだと思います」


「ウィンベル王国は―――

 ライの野郎から王に直接情報が

 届けられるからな。


 まあ、あんなのは特殊な部類だろうが」


『オイ、聞こえてんぞ』


魔力通話機から前国王の兄の声がして、


「それでライさん、同盟諸国会議は?」


『俺だって今回の件を聞いたのは少し前だ。

 まだ終わっちゃいないだろう。


 だが別に宣戦布告(せんせんふこく)をされたわけでもなけりゃ、

 自国に被害を受けたわけでもない。


 公式な要請が無い限りどこも動かんだろうな』


厳しいが、それが現実だ。


奴隷や亜人・人外が酷い扱いを受けている事を

知ったら、その度にその国に向かう正義の味方

なんて、現実にはあり得ない。


その国の王や皇帝、施政者というものは、

世界平和のために動くのではなく、

まず自国の安全が最優先であり……

そのためにしか動けないからだ。


「そういや、ワイバーン隊で奇襲する件は

 どうなっている?」


ジャンさんが魔力通話機の向こうに問うと、


『そっちは順調だ。

 シンが以前やった、滑空移動を軸に

 計画を立てている。


 もう一週間も訓練すりゃ、投入出来るように

 なるだろう』


ふむふむ、とレイド君とミリアさんがうなずき、


「あの機動力が魔力ゼロで襲い掛かって

 来るって、つくづく反則ッスよね」


「しかも現場近くまで、浮遊島で接近出来るん

 ですから―――

 本当にシンさんが味方で良かったですわ」


次期ギルド長夫妻がしみじみと語る。


「すでに1つ、向こうのフラーゴル大陸上空に

 待機してもらっていますしね。


 『ゲート』で移動、浮遊島まで飛行し、

 即座に攻撃に入れますから……


 何か事が起きても、モトリプカへは

 1日以内で攻撃が可能でしょう」


『おう。

 それに大魔導塔か?


 それが完成したら、恐らく行動に出る前に

 何らかの交渉か発表が行われるものと

 踏んでいる。


 まあ一方的な通達かも知れんが―――

 まずはそれを元に、有利な条件なり

 従属を求めてくるだろう』


そうライさんが見解を語ると、


「そういうものッスかねえ」


「いきなり行動に入る可能性は?」


レイド君とミリアさんが聞き返すと、


「無くは無いと思うが、せっかく新しい

 オモチャを作ったんだ。


 見せびらかしてからだろうよ。

 遊ぶのは」


その例えに同じ室内の人間は苦笑する。


でもまあ、確かにそんなものかも知れない。

まずは示威(しい)行為……

デモンストレーションから入るのは定番だ。


『よし、じゃあそろそろ通信を終わるぞ。

 ご苦労だった』


「あれ?

 同盟諸国会談の結果がまだ」


『さすがに今回ばかりは長引くだろうよ。

 下手をすると今日中には終わらないかも

 知れん。


 連絡をするのは明日あたりになるだろう。

 じゃあな』


そこで魔力通信は切れ―――

その後しばらく子供の事で雑談してから、

私は冒険者ギルド支部を後にした。




「ほーん、またあのタクドルって人が

 来ていたんだ」


「何というか、ご苦労な事だのう」


数時間後、私は自宅で夕食がてら……

アジアンチックな童顔の、黒髪セミロングの

妻と、


ドラゴンの方の―――

もう一方と同じく長い黒髪を持つ、欧米モデルの

ような目鼻立ちがしっかりした妻と情報を共有

していた。


「んでおとーさん、今回はどうするの?

 別にワイバーン隊での奇襲が決まって

 いるのなら、行かなくてもいいんじゃ」


黒髪ショートの、燃えるような瞳を持つ

娘がそう言ってくるものの、


「んー、確かにそうなんだけど。


 何かいろいろと理由付けて呼ばれそうな

 気がするんだよなあ」


それを聞いたメルとアルテリーゼはそれぞれ、

シンイチとリュウイチを抱きながら、


「あー……

 まあ、それはあるかもねー」


「想定外の事があっても、シンがいれば

 どうとでもなるからのう。


 ある意味、最大の保険じゃて」


万が一の時のバックアップと思えば、

絶対出番があるわけでもなし、気が楽

なんだけど。


だけど、たいてい何か起きるからなあ。

特に自分の場合は―――


「おとーさん、何で遠い目をしてるの?」


「ん……?

 あ、うん。

 まだ何か起こると決まったわけじゃないし、

 出来れば、呼ばれないで済めばいいんだけど

 って思って」


ラッチの問いに誤魔化すように答えたが、

この時の私たちは知らなかった。


事態が思ったより急激に進んでいる、

という事を―――




高高度(こうこうど)新魔導塔はどうなっている?」


「各パーツが山に到着したようです。

 組み合わせれば3日で完成出来ます」


メナスミフ自由商圏同盟・モトリプカ……


その首都・エムビーアにおいて、アラフィフの

男と、20代半ばの青年が語り合っていた。


「それでどうするのですか?


 新魔導塔の完成をもって―――

 自由商圏同盟内部の慎重派・反対派への

 攻撃の狼煙(のろし)としますか?」


主従の従の方と思われる青年は、

その赤い短髪を揺らしながらたずねる。


「そこで新魔導塔の性能を内外に知らしめ、

 まずは言葉で威嚇し……

 敵や中立派の同調者を誘う、か。


 定番であればそうするであろうな」


「と言いますと?

 ドルミン様」


そう呼ばれた男はため息をついて、


「そういうところがまだまだだな、

 プラクス。


 我がモトリプカとて一枚岩ではない。

 いるだろう?

 奴隷や亜人・人外の扱いに異議を唱える

 自称正義気取りが」


「いるにはおりますが、脅威となるほどの

 数ではありません。


 しょせん、負け犬かその身内でしょう?」


名前で呼ばれた青年はそう返すも、


「だが、いるにはいるのだ。


 そんな連中が外部と組んで、内側から

 崩そうとしてくれば―――

 それなりに厄介な事になる。


 ましてや、海の向こうから……

 奴隷・亜人・人外に寛容な政策を持った

 国々が接触し始めているのだぞ?


 これを千載一遇(せんざいいちぐう)の機会ととらえる者が

 出てきても、おかしくはない」


「では、どうなさるので?」


従の青年がそう聞き返すと、


「先の先を読め。


 あの高高度新魔導塔は一基ではない。

 すでに数台、同様のものを作っている。


 まずは周辺諸国を支配下に置いた後、

 さらに支配地域にあの新魔導塔を設置させる。


 このフラーゴル大陸全土を手中に収めるのに、

 1週間もかからんだろう」


「!?

 宣戦布告もなく―――

 ですか!?」


そこでドルミンは窓の外を見て、


「手間取っていたらクアートル大陸から、

 四大国がやって来る可能性もある。


 だが、いくら援軍を得ようと……

 すでに大陸全土を支配してしまえば、

 四大国も手出しは出来ん。


 別大陸との交易はあったが、同盟その他の

 交渉はまだ始まったばかり。


 介入される前に全てを片付ける」


「しかし、あまりに急なのでは。


 他の同士に連絡はついているのですか?」


不安そうな声でプラスクが問うも、


「わかっておらんなぁ。

 これは敵味方を問わぬ『戦い』だ。


 ここで内部の『敵』を一掃(いっそう)し、

 『味方』の中で主導権を握る。


 せっかくこんないい機会が巡って来たのだ。

 ついて来れなければ置いていくぞ?」


「お、仰せの通りに―――」


その言葉の後、青年は考えていた。


「(この方に取って、今回は危機的状況では

 なく、むしろ利用すべき時だと考えたのか。


 メナスミフ自由商圏同盟で内乱になる事すら、

 計算済みで……


 何の戸惑(とまど)いも躊躇(ちゅうちょ)もなく―――)」


プラクスはそこで格の違いを感じ、

本能的に頭を下げた。




「おお、これがですか!」


「はい。

 一応、試作までこぎつけましたので、

 シンさんに見てもらおうかと」


私の目の前にあるのは、やや茶色が混じった

白い錠剤。


それを、夫婦揃って長い銀髪を持つ医者兼

研究者であるパックさんとシャンタルさんが

屋敷まで持って来てくれた。


「効能は、今のところ風邪に効くみたいです。

 熱や体中の痛みが一気に引いたと」


そして身長2メートルはあろうかという―――

薄いダークブラウンの短髪をした男性が、その

錠剤を指して説明してくれる。


元傭兵団のリーダーで、今は商会『鷹の爪』の

会長、ラジーさんだ。


「シンー、これが?」


「例の抗生物質というやつか」


「お薬なんだねー」


そこで家族もやってきて、興味津々(しんしん)

それを見つめる。


これは以前、ラジーさんたちの故郷で

マイコニドという人型のキノコのような

魔物を退治・捕獲した際、

(■303話

はじめての いらいしっぱい参照)


それから抽出された成分が、地球でいうところの

抗生物質らしい事がパック夫妻の研究で判明。


この魔物の第一発見者という事で、ラジーさん他

元傭兵団のメンバーに商会設立を依頼し、


抗生物質を商品として扱ってもらっている。


「まだ一ヶ月ちょっとしか経っていなのに、

 ずいぶんと早かったですね」


私が驚きを込めて賞賛すると、


「まあ、私たちも子供がおりますし」


「幼い子が熱を出したり体調を崩したり

 するのは、避けられませんから」


パック夫妻の子供……

リクハルド君はドラゴンハーフであるし、

治癒魔法(ヒール)』を持つパックさんなら

何ら問題は無いはずなのだが、


それでも、子供が産まれた以上―――

他の子供たちの事も心配になるものなのだろう。


臨床(りんしょう)試験とかは……」


さすがにそれは子供では出来ないよなあ、

と思っていると、


「まずは大人で様子見して、副作用の有無を

 確認してから、熱が出た子供たちに使用して

 みました」


「パック君同伴という条件ではありましたけど」


なるほど。

そこは医者夫婦、備えは万端のようだ。


「んで?」


「効果のほどはどうだったのだ?」


「まー、試作品だからまだまだって感じ?」


メル、アルテリーゼ、ラッチが順にたずねると、


「いやいや!

 とんでもありません!!


 正直、どんな薬草よりも効いたって―――

 試した仲間が言ってやしたぜ!」


ラジーさんの言葉にパックさん、

シャンタルさんがうなずき、


「あれは劇的な効果がありましたからね」


「特に子供たちは、もう治ったと思って

 動き出そうとするのを止めるのが大変

 でした」


初めて抗生物質の効果を身をもって知れば、

そうなるかも知れない。


細菌の繁殖を抑える、イコール各症状を

緩和するのだから……

治ったと勘違いするのも無理はないかも。


「だから問題は―――

 むしろ飲んでいる時なんですよね」


「??

 と言いますと?」


医師の彼に私が聞き返すと、


「ですから、子供たちです。


 もう治ったと思い込んで、遊びに行こうと

 したり、走り回ったり……


 まだ病気が完全に体の中で無くなった

 わけではないと説明しても、なかなか

 言う事を聞きませんし。


 元気いっぱいになってしまった彼らを

 止めるのが、本当に大変でした」


苦笑するシャンタルさんに、家族も

『あ~……』という顔をする。


公都『ヤマト』婦人会の関係や、児童預かり所で

他の子供たちの面倒を見る事もあるので、

そのパワフルさはよく理解しているのだろう。


「ですがこれは、子供たちが病気の苦しみから

 解放される、画期的な薬でございやす!!


 これがありゃ、薬師や治癒師のいない

 辺境の子供たちでも―――

 助ける事が出来るでしょう!」


元傭兵団の隊長は、自身の経験もあるからか、

ガッツポーズのような姿勢で熱く語る。


「確かに、それは便利になるねー」


「パック殿やシャンタルとて、常に公都に

 いるわけではないからのう」


母親である2人はその薬をじっと見つめながら

そう感想を述べ、


「じゃあ治療途中で動き出そうとする子供は、

 このボクが止めよう!」


と、娘が胸を張る。

まあラッチは純粋なドラゴンの子供だし、

彼女が止められない種族はいないだろうしな。


こうして、抗生物質生産の成果と新たな課題を

考えながら、その日は過ぎていった。




「へ? ザハン国が?」


数日後、急遽(きゅうきょ)冒険者ギルド支部に呼び出された

私は……

フラーゴル大陸において、戦争が勃発(ぼっぱつ)したという

話を聞かされていた。


『ああ。

 現地に潜入している『見えない部隊』からの

 報告によると―――


 最初の数日でメナスミフ自由商圏同盟の

 2/3が陥落(かんらく)


 今はザハン国を始め数ヶ国がなんとか

 抵抗しているが……

 内陸国はほぼモトリプカの勢力下にはいった』


「いくら何でも早過ぎる―――

 それに強過ぎる」


通話先のライさんの言葉に思わず本音が()れる。


「ま、最初から画策していたんだろうな。


 こればっかりは予測が外れたなぁ、オイ」


ジャンさんが頭をガシガシとかく。


「本気でおっ始めたッスか……」


「それで、今は膠着(こうちゃく)状態なんですか?」


レイド君とミリアさんが続けて戦況を

たずねると、


『正直、もう時間の問題だと。


 今踏ん張っている国々は海沿いにあるんだよ。

 つまり立地条件で後回しになっていただけだ。


 ザハン国もすでにいくつかの港湾都市まで

 追い詰められていて、このままじゃ遠からず

 海に追い出されるだろうとの事だ』


「いったいどうしてそこまで、侵攻が早かったん

 ですか!?」


私が少し熱くなって問うと、その反応が意外

だったのか、


『落ち着け、シン。

 それもこれから説明するから―――


 前回、入手した情報の中に新魔導塔というのが

 あっただろ。


 どうもアレ、一基じゃなかったらしい』


「……と言いますと?」


『複数、それも分解して運べるようにしていた

 ようだ。


 自国内で一基完成させると同時に、

 周辺国に攻め込み支配下に置く。


 そして支配下となった国に、またその

 新魔導塔を置く。

 この繰り返しで一気に勢力を広げたらしい』


それを聞いたギルド長は眉間(みけん)にシワを寄せて、


「えげつねぇな―――


 で、クアートル大陸の四大国は?

 この事を知ってんのか?」


『すでに緊急連絡で伝えた。

 ランドルフ帝国を始め、慌てて防衛体制と

 出撃準備を整えているらしい。


 特に大ライラック国が一番近いからな。

 ただ軍事大国だけあって、最も冷静に

 対応しているように見える』


すると次期ギルド長夫妻は顔を見合わせて、


「えっと、次はクアートル大陸に攻め込む

 つもりって事ッスか?

 そのモトリプカとやらが」


「そこまで準備しているとは思えませんが……」


その言葉に通話機の向こうから、


『そりゃ別の大陸とはいえ内戦をおっ始め

 たんだ。

 警戒は最大限にするだろうよ。


 最悪なのは、それでフラーゴル大陸を統一した

 モトリプカと相対する事だな。


 これまでの、こちらが進めてきた友好関係が

 一気に壊されかねん』


新魔導塔で奴隷や亜人、人外を尖兵(せんぺい)

しているのは間違いないだろうし、


今までこちらが築き上げてきた、共存共栄の

戦略をひっくり返しかねない。


「そういえば、タクドルさんは大丈夫で

 しょうか―――」


『んー、まあまだ本国に戻っちゃいない

 だろうよ。

 運が良けりゃ、クアートル大陸のどこかで

 補充のため寄港している可能性もあるし。


 一応、『見えない部隊』に見かけたら

 保護してくれと伝えてある』


まだ海の上か、本国に到着していないのなら

安心だけど……

と思っていると、


『というわけだ、シン。


 至急、『ゲート』でザハン国へ向かってくれ。

 最低でもその一国は死守しないと、今後援軍に

 向かうだろう四大国の船の拠点が失われる。


 魔族やルクレセント、人外もいくらか向かう

 ようだ。

 もちろん、こちらからもワイバーン隊を送る』


こうして私は即座に、ザハン国へ向かう事を

要請された―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
昔ですけど中東でイスラエルがやった「防御的先制攻撃」を今回はやらなかったんですねぇ。まぁ内乱ですから迂闊に外から手出しを出来ないのは解りますけど。
(*ゝω・*)つ★★★★★  主人公氏の能力は目に入る範囲でしたか。 中継画像でも可能なら、戦術の幅が広くなると思うのですが。
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