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309・はじめての かみんぐあうと

|д゜)洗濯機がヤバそう。

(25年以上の仲)


「あ! ラッチおねーちゃん!」


『ガッコウ』で、ゴールドに近い黄色の髪の

少年が、黒髪ショートの娘に声をかけてくる。


「ヘンリー様、こんにちは。


 ご両親や前大公様はいらっしゃい

 ますか?」


彼はヴィンカー・サイリック前大公の孫にして、

現大公の跡取りであり―――


ラッチの婚約者として、公都『ヤマト』の

『ガッコウ』に、わざわざ年齢を前倒しにして

入学していた。


「おじい様や父上、母上は……

 他の保護者の方々とあいさつをして

 回っております」


「そうですか。

 私も後であいさつに伺いますので―――」


会釈すると、ラッチの方を向いて、


「でもおねーちゃん、今日で卒業かあ……

 寂しくなります」


すると11・2歳くらいの彼のオデコを

娘が人差し指でつついて、


「なーに言ってるのよ。


 別にこの公都から出て行くわけじゃ

 ないし、いつでも会えるでしょ?」


このやり取りが示すように―――

今日は『ガッコウ』の卒業式だ。


そしてラッチも、今年卒業するメンバーに

含まれていて、


「アレ?

 おかーさんとメルおかーさんは?」


妻2人の不在に娘が首を傾げると、


「2人とも、シンイチとリュウイチを

 児童預かり所に預けに行っているよ。


 なに、すぐ来るだろう」


そう娘に返すと、今度は背中にまで伸びた

純白に近い髪を持つ少年と、


それに続いて彼と同じくらいの年齢の、

ショートのブロンドの少女が来て、


「あ、ナイアータ殿下にファム様」


私がお辞儀すると、ラッチとヘンリー様も

頭を下げる。


「ラッチお姉さんの卒業式なので、

 いらっしゃったのですね」


「アタシたちは来年ですけど……

 うう、緊張しちゃいます」


王族の夫妻はそう言いながら、日常の会話に

参加し、


「まあ、一年なんてあっという間ですよ。

 緊張する間もなく過ぎてしまいますって」


「そうかも知れませんね―――

 私も、公都に来てからこれまでの期間が、

 すごく短く感じています」


「それでは、アタシたちはこれで」


殿下にファム様が2人揃って退室すると、

入れ違いに下級生らしき人間とラミア族と

獣人族のパーティーがやって来て、


「ラッチおねーちゃん!」


「おねーちゃん!」


そう言って複数の子供たちが、ラッチに

まとわりつく。


「何よもー、別にこれでお別れって

 わけでもないのに……」


その光景をしみじみとながめていると、


「おねーちゃん!

 これからも『ガッコウ』に通ってね!」


「まだ俺、おねーちゃんから麻雀で

 巻き上げられた分、取り返していねーし!」


「少しは勝てるようになったのに、

 卒業なんて酷いよー!」


それを聞いた娘は笑顔になって、


「よーしわかったみんな表に出ろ」


ラッチがそう返すと、「「「キャー!!」」」と

言いながら、逃げるように彼らは去って行った。

しかし『ガッコウ』で何してんだ娘よ。


「あ、おとーさんこれはその、アハハ―――」


笑って誤魔化そうとするラッチに向かい、


「まあ、今日は卒業式だし大目に見るけど。


 ヘンリー様、普段のラッチはどんな感じ

 だったんでしょう?」


「え、ええと、アハハ……


 そ、それよりラッチおねーちゃんの進路は

 決まっているんですか?」


話をそらされた気がするが―――

まあ婚約者として、本人がいる前では

話し辛いか。


「んー、進路って言われてもね。

 一応ボク、冒険者登録しているし。


 ここの冒険者ギルド支部所属、

 シルバークラスだよ」


ここでヘンリー様と一緒に『ああ』という

表情になる。

そういえばラッチ、そういう事に

なっていたっけ。


「今おとーさん、すっかり忘れてたでしょ」


ジト目で私を見上げる娘から目をそらして、


「あ、ええと……

 そろそろメルとアルテリーゼも来るだろうし、

 迎えに行ってくる。


 じゃあヘンリ―様も、ラッチをよろしく」


こうして私は逃げるようにその場を後にして、

ラッチの卒業式を保護者席から見るため、

そちらに移動する事となった。




「アレ?

 卒業生代表、ラッチちゃんじゃ

 ないんだ?」


「ちょっと意外だったのう」


代表の祝辞(しゅくじ)を聞きながら、私の両隣りで、

アジアンチックな童顔の妻と、ドラゴンの方の

欧米風の目鼻立ちの妻が語る。


「さすがにまあ、ラッチはいろいろ

 目立っていたしね。


 それにこっちが辞退すれば、貴族の方々も

 無理強いはしなくなるという狙いもあって」


卒業生代表のスピーチは、やはり目立つという

事もあり―――

その地位を盾にして代表になろうという動きが

続出したため、


ドラゴンが辞退した、という事にして……

各貴族や豪商へのけん制にしたのである。


実は当のラッチにも打診があり―――

一応聞いたのだが、『別に興味無いしー』

という回答で、


その状況を利用して、代表者争いを

黙らせる事にしたのであった。


「まぁそのヘンはいろいろあるよねー」


「まったく、人間世界というのは面倒な

 事が多い」


「あ、そろそろ卒業証書の授与(じゅよ)だよ」


そして今年もまた、卒業式は無事に

終わったのであった。




「……ふむ。

 ドラゴンの巣に出向く必要があると」


「まあ、たまには顔を出した方がよかろう。

 せっかくドラゴンと縁を持つのだし」


卒業式が終わり、『ガッコウ』の食堂へと

場を移した私たちは、


70才ほどだろうか、すっかり頭頂部の髪が

無くなり、他は白髪で覆われた老人と、


金に近い黄色の短髪をした紳士と、銀と金の

間のような長髪を持つ女性が、


ヘンリー様と一緒に、私たちの家族と―――

主にアルテリーゼと対峙していた。


「では……」


「ヘンリーとの結婚に賛成してくださるの

 ですね!?」


シュヴァン・サイリック現大公と、その妻、

マルテ夫人が身を乗り出すようにして

ドラゴンの妻にたずねると、


「賛成も反対も何も、2人が望んでおる

 事であれば、我は口出しせん。


 ただドラゴンと結婚、という事になれば、

 それは両種族の問題でもあるしの。


 現状を考えると―――

 大公家に嫁入りしてハイお終い、という

 わけにもいくまいて」


「確かにその通りだ。


 我がウィンベル王国を始めとして、各国が

 共存という方向に動いている以上は……

 人間の都合だけを押し付けるわけにもいかん。


 それについては、こちらも最大限考慮する

 つもりでおる」


ヴィンカー・サイリック前大公が、その白髪を

なでながら答える。


「でもまー、ラッチはヘンリー様が卒業するまで

 待つつもりなんでしょ?」


「うん。

 あと2年あるし、それまでにみんなで

 ドラゴンの巣をたずねてみるのも、

 いいと思うよー。


 その時はおかーさんの『乗客箱』で

 行けるから」


メルとラッチが今後の方針について語り、

現大公様がそれをメモ帳みたいなものに

カリカリと書き込んでいく。


「どちらにしろ、ラッチも私たちも公都から

 離れる事は考えていませんので、


 機会を設けて、話を詰めていきましょう」


「そうですね」


「そうですわねぇ」


大公夫妻はそう言ってうなずき―――

両家の話し合いはしばらく続いた。




「ふぅ、ただいまー……ってアレ?」


夜になって、屋敷兼自宅に戻ると、

手紙が届けられており、


「ランドルフ帝国から?

 まさか、何かあったのかな」


私の言葉に、メルとアルテリーゼがそれぞれ

シンイチとリュウイチを抱きながら、


「いやそれは無いんじゃない?」


「緊急時なら、魔力通話機でまず連絡が来ると

 思うでな」


なるほど、確かにそうだ。

どうもフラーゴル大陸のメナスミフ自由商圏同の

件で、神経質になっているのかな。


場所をリビングに移し、封を切って中身を

確認してみると、


「おとーさん、何だったの?」


「あー、帝都グランドールの冒険者ギルド本部

 からだ。


 へえ、ベッセル本部長と受付嬢の

 カティアさんが結婚するんだって」


ベッセルさんは、実はエルフであり―――

立場的にはモンステラ聖皇国に所属している。


「おおー!?」


「ほう、あの小娘とな」


「やるじゃん!」


と、女性陣は女性陣で盛り上がるが、


「う~ん……


 でもカティアさんって人間だよね?

 普通の」


私の疑問に家族は首を傾げ、


「そうだね。

 別に、獣人とかではなかったはず」


「何かおかしなところでもあったか?」


そう妻たちがたずねて来るので、


「いや、さ―――


 だってベッセルさん……

 正体はアウリスさんっていうエルフ族でしょ?


 それが人間と結婚っていいのかなって思って」


「おとーさんは反対なの?」


ラッチが聞き返してくるので、


「反対というか―――


 だってアウリスさん、もう何百年と

 生きているって言ってたし。


 そのあたりはどう折り合い付けるん

 だろうって、やっぱり思ってしまうよ」


これは、かくいう自分もアルテリーゼと

結婚しているので、どうしても気になって

しまうのだ。


生き物だから死ぬのは仕方がないが、

それでも人間より寿命がはるかに長い

種族と、結ばれるのが本当にいいのか

どうか……


ラッチとヘンリー様―――

2人の結婚も具体的に現実味を帯びてきた

せいか、その事を考えてしまう自分がいた。


するとメルとアルテリーゼ、2人の妻が

微妙な表情になって、


「う~ん……


 アルちゃん、もうコレ話しておいた方が

 いいんじゃね?」


「そうだのう。


 いずれは話すつもりであったし、

 ちょうどいい機会かも知れぬ」


妻たちの言葉に私は首を傾げて、


「ん? 何の事?」


きょとんとして返すと、メルとアルテリーゼは

意を決したように、


「多分、だけど―――

 私とアルちゃんとシン、すごく長生き

 するよ?」


「前にちょっと言いそびれた事があったの

 じゃが……

 実は、我のような長命の種族と結婚した

 場合は、


 寿命が長い方に引っ張られるのだ」

(■223話

はじめての もっていくもの参照)


ある意味衝撃的な事実を前に、私の思考は

しばしフリーズして、


「えーと、つまり?」


「おとーさん、おかーさんと同じくらい

 生きるって事ー」


娘の答えに、私は思わず妻たちの顔を

交互に見ると、


「まーそういう事♪」


「というわけで末永くよろしく頼むぞ、

 旦那様♪」


肩の力が抜けたような、全身が脱力したような

感覚が体を襲い―――


「はぁあ~……

 良かったような、今まで悩んでいた事が

 バカらしくなったというか。


 ってちょっと待って。

 メルは?

 『私とアルちゃんとシン』って言って

 なかった?」


湧いた疑問をすかさず口にすると、


「まあその、それはね?


 だって、子作りしている時ってたいてい

 アルちゃんと一緒で―――

 その、私も交わった?

 って事になるとかで?」


「だってシン、2人同時に愛してくれたでは

 ないか。


 1人1人別々に、であれば違ったかも

 知れぬが……

 ああも一緒に交わってしまってはのう」


「ちょ!! 2人とも!!

 子供の前! 子供の前ー!!」


言いたい事はわかるが、ラッチがいる場所ではと

焦りまくっていると、


「え?

 そんなの今さらだよー。


 同じ部屋でボクがいる時に、いったい

 どれくらいヤったっていうのさ」


娘があっけらかんと答え、


「まあ、これに関しては英才教育だと

 思って―――」


「せ、性教育?

 をやる手間が(はぶ)けたと思えば」


ある意味、自分の寿命よりも破壊力の大きな

爆弾を投下され、


そこからしばらくは家族会議となり……

そして私を異世界人だと知っているメンバーに

限って、この情報を共有する事にした。




「また無茶苦茶大きな問題を持ってくるな、

 お前さんは―――」


「いや好きで持ってきているわけでは

 ないんですけど……」


後日、公都『ヤマト』の冒険者ギルド支部で、

その支部長室にて、アラフィフの責任者と

話を交わしていた。


「でも話の通りだと、シンさん―――

 ドラゴンと同じ寿命になるッスよね?」


「まあメルさんやシンイチ君?

 も同様に……

 という事なのが救いと言いますか」


長身の、褐色肌の次期ギルド長の青年と、

その妻で、タヌキ顔の丸眼鏡の女性が

複雑そうに語る。


あの後、家族会議で話し合ったところに

よると―――

つまり血液なり体液なりが互いに混ざるのが、

ドラゴンと『交わる』という事らしく、


そういう意味ではメル、そしてその血を受け継ぐ

シンイチも、同じ寿命になる事が予想されるの

だという。


確か地球のどこかの神話でも……

ドラゴンの血を浴びた事で不老不死になった、

英雄の物語があるし、


これもそういう事なのかなあ、と納得は

出来るものの、


「まあ、ライシェ国の宰相(さいしょう)をやっていた、

 ミマームの例もあるしな。


 これからウィンベル王国の裏の支配者に

 なるのもいいんじゃねぇか?」


「嫌ですよそんな立場!!」


私がジャンさんに反発すると、


「まあでも―――

 シンさんが支配者になれば、

 食事や生活その他が劇的に改善しそうッスね」


「そういう支配者なら大歓迎ですよ~♪」


そしてレイド君とミリアさんが続く。


「シンはこの世界に来てからというもの、

 酷い事はしていねぇし、国の不利益になる事も

 やってねえ。


 多分特別顧問とかそういう形で取り込まれるん

 じゃねーの?」


「まあそれは考えられますね……

 今でも王家直属の研究機関とは、

 協力体制を築いておりますし」


実際、ここまで深く関わってしまったのなら、

むしろどんどん重要なポジションに組み込んで

いきたいだろうしなあ、国も―――


と、そこで魔力通話機が鳴り出し、


『オイ、こちらライオネルだ。

 ジャンはいるか』


「おう、いるぞ。

 ちょうどシンもいる」


『シンもか?

 それなら好都合だ。

 至急、知らせたい事があってな。


 ブロウたちが新たな情報を入手して

 帰って来た。

 その報告を聞いてくれ』


そして私とギルドメンバーは、例の

モトリプカについての情報を追加される

事となった。




「魔導塔、ですか」


『ああ。

 これに関しては、悪い方の推測が

 当たったみたいだ。


 奴隷契約の効力を広範囲に強化・制御する

 シロモノでな。

 だから国内のあちこちに建てていたらしい』


やはり、魔力を電波に見立てて、広範囲に効力を

発揮する用途だったか。


「シンの予想が当たっていたって事か。


 だが、相手の手口がわかっているのなら、

 対処のしようはある。

 ワイバーンでの奇襲攻撃計画は

 どうなっている?」


こちらのギルド長が聞き返すと、


『それは緊急の同盟諸国会議で合意は

 取れている。


 だが今回、再び会議を開かなければ

 ならないだろう』


「どういう事ッスか?」


「今回の情報共有のため?」


続けてのライさんの言葉に、次期ギルド長夫妻が

質問を投げると、


『……今回、新たに得た情報の中に、

 新魔導塔計画というのが発覚した。


 これはそれまでの魔導塔の、数倍の高さを

 誇るものらしい。


 首都ではなく、モトリプカの高山に建設中

 との事だ』


彼の言葉に、支部長室の全員が顔を見合わせる。


『シン、これをどう見る?』


本部長の言葉に対し、私は眉間にシワを寄せて、


「それまで国内に限定していた塔の効力の

 範囲が、広がるという事です。


 周辺諸国―――

 最悪、そこの大陸全土まで」


私の説明に、レイド君とミリアさんが

つばを飲み込む音が聞こえ、


「で、でも契約していないと無効ッスよね?」


「建てただけでは、別に脅威(きょうい)ではないのでは。

 新たに契約させなければならないでしょうし」


2人は楽観的な意見を口にするも、


「国内限定だった奴隷の行動範囲が、

 広がるって話だぞ。


 それも強力な隷属(れいぞく)契約をした連中の……


 死ぬまで戦い続けるバーサーカーを、

 国外に派遣する事が可能になるって事だ」


ジャンさんの言葉に室内と通話機の向こうが

沈黙し、


『まあ、万全を()すなら―――

 俺ならそれで、まず周辺諸国を完全に

 支配下に置く。


 いくら何でも、モトリプカ一国だけで

 他のメナスミフ自由商圏同盟にケンカは

 売らんだろう。


 息のかかったところを取り込んでから、

 反対派・慎重派の国々に切り込む。

 そんなところか』


王族という施政者・トップの立場から、

ライさんが分析して私見を語る。


『俺はこれからこの件について、

 同盟諸国会議にかけるよう、陛下に

 進言する。


 またシンには悪いが……

 結果次第ではすぐ動く事になるだろう。

 それを念頭に置いて待機していてくれ』


結局、予想が悪い方向で当たっちゃったかあ。


それも仕方が無いと思っていたが、そこで

こちらのギルド長が、


「おう、そういやライ。

 こっちもお前に報告しなけりゃならない

 事があるんだ」


『ん?

 何かあったのか?


 まあ別に、今のモトリプカ以上の事では

 ないだろうが―――』


「まあ、聞けや」


そして、私や家族がドラゴンと同じくらいの

寿命になったと、報告をしたのだが、


『……………………


 まあ、今はモトリプカの対応が先だ。

 その話はいずれ、な』


疲れたような声を最後に通信は切れて、


「気持ちは痛いほどわかるッスけど」


「シンさんの件については、完全に

 思考放棄しましたね、アレは」


次期ギルド長夫妻は同情気味に話し、


「まあ何にせよ、向こうの大陸の脅威の方が

 優先だろうしな。


 多分、シンにはその新魔導塔計画とやらを

 当てて、メナスミフ自由商圏同盟の強硬派は

 同盟諸国で対応する事になるだろう。


 ご苦労だったな、シン」


そこでジャンさんが話をまとめ―――

情報共有はお開きとなったのであった。




「そんなにマズいのか?」


「マズい、何てものじゃないと思いますわぁ♪


 多分、このままでは……

 自由商圏同盟の内乱に発展しますわよ」


ザハン国のとある政治機関の施設の一室―――


リーゼントのような髪型の若い官僚は、

上司にとある報告をし、そして今後の想定を

語っていた。


「いや?

 内乱にすらならないかも知れませんわね。


 下手をすれば一方的に蹂躙(じゅうりん)される

 だけかも」


タクドルはロックウェル家の会長・

ベルマイヤからもたらされた情報に、

相当な危機感を抱いていた。


ウィンベル王国の『見えない部隊』、

ブロウたちの調査結果は、協力関係である

ロックウェル家にも伝えられており、


(すさ)まじい隷属契約の効力を広範囲に及ばせる

魔導塔の情報は……

ザハン国の上層部のみならず、賢人会議でも

取り上げられたのだが、


「上も、賢人会議も―――

 情報確認という名の無駄な作業で、

 お茶を(にご)しているようだ。


 恐らくはこうまで、モトリプカが決定的に

 敵対するとは思っていなかったのだろう」


「自称賢人が聞いて呆れますわねぇ。


 で、わたくしたちに勝ち目はあるん

 ですかぁ?」


相変わらず踊るような動きで、

彼は室内をクルクル回る。


そんな部下を見て上司は、


「上の方は……

 むしろ今すぐ戦端(せんたん)を開いた方が、

 望みはあるらしい。


 だがもし、周辺や影響下にある国々を完全に

 手中にした後で、となると―――」


「そーれがわかっているのなら、

 何ですぐに動かないんですかぁ?」


ため息をつきつつ、タクドルが聞き返すと、


「本気で動くかどうか探っているのだろう。


 まだ、楽観的な予測を捨て切れないらしい」


上司からの言葉を、彼はさらに深いため息で

返す。


「それでわたくしたちは、このまま?」


「いや……

 さすがに状況が緊迫(きんぱく)し過ぎている。


 今諜報機関は―――

 ロックウェル家に、辺境大陸への同盟要請、

 及び救援を打診出来ないかと願い出ている。


 ザハン国上層部には事後承諾(じごしょうだく)となるが」


そこで彼はスピンしていた足をピタッ、

と止めて、


「そこでわたくしので・ば・ん?」


「良くも悪くも、辺境大陸との付き合いが長く、

 顔が()くのはお前だからな。


 出来ればすぐに出立(しゅったつ)してくれ」


「出来る男っていうのは忙しいですわねぇ♪


 でもコトが済んだ後……

 トカゲの尻尾切り、というのは嫌ですよぉ?」


タクドルは笑顔で、しかし目だけは笑わずに

切り返すと、


「だからロックウェル家を挟むのだ。


 それにいざとなれば、私も無傷では

 済むまい。


 まあこの首は、そんなに軽くないと

 思ってくれ」


手刀で自分の首をポンポンと叩く上司に、


「頼もしいですわねぇ。

 それでは行って参りまーす♪」


軽やかにステップを踏みながら、

若い官僚は部屋を退室した―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

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