308・はじめての でんぱ
|д゜)会社近くのお店のタイムセールが、
去年の11月から続いている事に違和感。
「……あの『塔』に興味を持つ者が?」
「はい。
商売がてら、観光をしていたようで。
あれはどうしても目立ちますからな―――」
フラーゴル大陸・メナスミフ自由商圏同盟の
一国、モトリプカ。
その首都・エムビーアにおいて……
とある屋敷の中、主従関係と思われる男と
青年が語り合う。
「それでどうしたのだ?」
「『案内』しようとしたところ、あんな高い
ところはゴメンだと―――
従者であろう2人にも全力で拒否されて
しまいましてね」
それを聞いた、アラフィフくらいの男は
口元を歪め、
「まあ、アレに登ろうという物好きは
そうはいないからな……」
「『塔』の下まで案内して、いざ登ろうという
時に―――
やっぱりやめますという者しか、今まで
いませんでしたからね。
しかし、あの高さはやはり気になる者は
気になるようでして」
主従の2人は視線を交わし、
「あの塔が……
大規模な魔導具だとは思いもよるまい」
「そうですね。
あれこそが、我が国の根幹にして
支配装置―――
奴隷契約の効力を強化・制御するものだと、
想像すら出来ないでしょう」
「難点は他国に持ち出せない事だな。
あんな目立つ物、特段の理由でも無ければ
疑われるであろうし。
定期的に点検も必要となる」
主従の主の方の男はアゴをなでながら語り、
「国境近くに置く事は可能でしょうが、
目を付けられる可能性もあります。
やはり、首都を中心に設置して内政に限定し、
外部へは支配してから、というのが確実で
ございましょう」
従の青年が頭を下げる。
「それで、だが……
その例の商人たちはどうした?」
すると青年は持っていた書類に目を通し、
「まだ商談が残っていたのか、それとも
観光を続けたかったのか―――
あの後、5日ほど滞在した後に出国して
いますね」
それを聞いた男は、
「ふむ。
別段、急いで行動しているフシも無し……
まあすでに出て行っているのなら問題も
無いだろうが」
「そうですね。
諜報目的なら、情報を手にしたらすぐに
その場を去る事が鉄則。
少なくとも、どこかの国家機関の手の者では
ないと推測出来ます」
彼らがそう判断したのは理由があり、
ブロウたちが所属する『見えない部隊』は、
確かに国家機関であったものの―――
彼らはもと裏社会の出身であり、そうした
処世術を経験上身に付けていたからである。
いわば半官半民のようなもので、恐らく
正式に国家上層部に属しているであろう、
『育ちの良い』2人には認識出来るものでは
なかった。
「まあ今回も、『行方不明者』が出なかったのは
いい事だ。
商売上、差し障りがあるからな」
「そうですね……
イメージは良くしておきませんと。
全てを手に入れる、その日まで」
そこで男と青年は互いに視線を交わすと、
「ところで―――
最近のお前はどうだ?
『奴隷』は新たに手に入れたか?」
「まあ、それなりに……
問題は質が悪い事ですね。
私に勝てば一発逆転! のような連中には
辟易しています」
それを聞いたアラフィフの男はニヤリと笑い、
「ならば―――
俺とやるか?
質としては十分だと自負しているが」
そう話を向けると、彼は一瞬その無表情だった
顔を引きつらせ、
「現時点ではとても。
もっと優秀な手駒が手に入れば、
考える事もあるでしょうが」
「いいだろう……
完全には否定しないところが頼もしいぞ」
そう言うと、どちらからともなく笑い―――
「では引き続き、あの『塔』に関しては
警戒を続けろ。
これに関しては内外を問わん」
「わかりました。それでは……」
そして青年は退室し、部屋には一人、
アラフィフの男だけが残され、
「まあ、あの『塔』自体すでに古いしな―――
今作っている高高度の新魔導塔さえ
完成すれば……
あれは用済みになる。
少なくとも、フラーゴル大陸は支配下に
置けるだろう」
彼は独り言のようにつぶやき、そして
窓の外を見上げた。
「暖かくなってきたねー」
「もうすっかり春じゃのう」
屋敷の庭で―――
童顔の妻と、ドラゴンの方の目鼻立ちが
ハッキリした妻が、お茶を飲みながら話す。
「ホント。
この前まで雪もあったのに」
「だー」
「うー」
黒髪ショートに燃えるような真っ赤な瞳を持つ
娘が、まだ幼児の弟2人と一緒に縁側に座る。
実は、中庭に続く部分は和室にしてあり、
畳は鬼人族の里から取り寄せ、リフォームも
彼らに発注し……
庭には梅や桜、栗を植えてもらった。
以前はこの中庭に―――
ラミア族がセッケンの代わりとなる、
『アオパラの実』=ムクロジの実を取るため、
それを植えていたのだが……
(■62話 はじめての たっぐまっち参照)
公都に亜人・人外の専用居住地が出来た事で、
それ関連の施設と共に、そちらへ引っ越し
したので、
中庭がフリーとなり、自由にカスタマイズする
事が出来るようになったのである。
「そういえばそろそろ桜の季節だねー」
「という事は、『ガッコウ』の卒業式も
近いのう」
「そうだねー」
そう、メルとアルテリーゼ、ラッチが
話しているのを聞いて、
「あれ?
ラッチが『ガッコウ』に入学したのって、
いつくらいだっけか?」
私がそうたずねると、妻2人が顔を
見合わせて、
「結構前から行ってたけど―――
正式には3年前じゃない?」
(■225話
はじめての ぎゃくむこうか
■264話
はじめての せんごのほうしん参照)
「正式に入学式に出たのが2年前で、
それより1年ほど前から通って
いたからのう」
「そーそー。
通い始めた年は、入学式に参加
出来なかったんだよねー。
まあ人間の姿になった後に通い始めたから、
それは仕方がないんだけどさー」
そこで私は家族の顔を見渡して、
「……ラッチの卒業式……
一応、3年をめどに卒業するような
感じだけどさ。
3年目って今年じゃない?」
私の言葉に、3人は一瞬沈黙した後、
「あ」
「お」
「うえっ!?」
続けてシンイチとリュウイチも、
「あー!」
「だー!」
と声を上げ、その後しばらく私たちは
卒業式に向けての準備に追われる事と
なった。
「そいつぁ危なかったな―――」
「ハハハ、まったくですよ。
もう3年も経つなんて」
公都『ヤマト』、その冒険者ギルド支部で、
私はアラフィフの筋肉質の男性……
ジャンさんと話していた。
「そういえば、ラッチちゃんが人間の姿に
なって、もうそんなに経つッスか」
「あっという間ですねえ」
褐色肌の次期ギルド長の青年、レイド君と、
その妻である、丸眼鏡にタヌキ顔の
ショートヘアの女性、ミリアさんもうなずく。
「基本、成人年齢になったら自動的に
卒業なんですけど―――」
「ラッチはもともと30才を越えていた
からなあ。
そりゃ混乱もするわ」
私とギルド長もしみじみとうなずく。
娘は外見こそ中学生くらいだが……
ドラゴンとしてすでに30年以上生きて
きたのだ。
「あれ?
そういえばナイアータ殿下も同じくらいに
入学していたような?」
そう次期ギルド長が首を傾げると、
「確かそうだったわね。
年齢的にはやや早めの入学でしたけど。
お妃であるファム様も一緒に入学して
いらっしゃるから―――」
そこで私は記憶から王族の2人を引っ張り出し、
「10才くらいで入学したから、
じゃあ13才? 14才で卒業って事に
なるのかな?」
「あの時のチビたちがなあ……
ホント、月日が経つのは早いモンだ」
ジャンさんにかかると、王族でもチビたち
だからなあ。
この人本当に、顔見知りや子供たちには
甘いから―――
「じゃあラッチは、ナイアータ殿下と一緒に
卒業って事になるんですか」
私がそう話を振ると、ギルド長は両腕を組んで、
「いや、確か……
ナイアータ殿下もファム様も、卒業は
来年だと聞いたな。
2人とも公務で公都を空ける事もあるし、
逆に他国から来賓がここへ来たら、
顔を出さなければならん。
だから特例で、もう1年過ごされる事が
決まっていたような」
なるほど。
まあ一般人じゃないし、政務に取られる
時間も考えると―――
それは考慮しなければならないだろう。
そう考えているとジャンさんが不意に、
「んで、シン。
お前さんを呼び出した件だが」
「あ、そういえば何でしょう?
また王都から連絡があったと聞いて
いますけど」
そう、私が冒険者ギルドに来たのは、
その用もあったからで、
「んじゃ来た事だし、こっちから王都に
聞いてみるか」
そしてギルド長は、支部長室にある魔力通信機を
操作し始めた。
『……あーあー、こちら冒険者ギルド本部長、
聞こえるか』
通信機から、ライさんの声が聞こえてきて、
「おう、聞こえているぞ。
こちらにシンもいる。
それで用ってのは何だ?」
『あー、フラーゴル大陸でモトリプカに
潜入してきた、ブロウたちが帰って来た。
その報告と情報を共有しようと思ってな』
あ、そういえばメナスミフ自由商圏同盟の
中で、最も強硬な姿勢を示している国を
調査してくるって話があったっけ。
今じゃ向こうの大陸にも『ゲート』を設置した
せいか、動きがかなり早い。
「おー、もうッスか」
「それで、何かわかりましたか?」
レイド君とミリアさんも聞き返すと、
『後は本人から聞いてくれ。
直接話した方がいいだろう』
そして向こうはブロウさんたちに
バトンタッチし、
モトリプカの情報がもたらされた。
『……という状況だったけどさ。
これで何かわかるかい?』
奴隷同士を戦わせ、それで諍いの
決着をつける―――
ポケ〇ンバトルか、とも思ったが、
しかしそれ以外の情報は、どれもこれも
他の国と大差ないもので、
「お疲れ様です。
それで、危ない目にはあわなかったん
ですか?」
向こうを労って私が問うと、
『あー、ちょっとあったね。
これは詳しく調査出来なかったんだけどさ。
何かあちらさん、あちこちに妙な建築物が
たくさんあって。
それに近付いたら、かなりヤバいのと
会ったのよ。
ワタシの未来予知魔法が反応するくらいにね』
「そ、それはまた……
しかし、その妙な建築物というのは?」
予想外の出来事に私が問い質すと、
『なーんかねえ。
やたら高い塔?
みたいなモンがいっぱい建っていたのさ。
でもぶっちゃけ、一番気になったのは
そこなんだよ。
塔に登ってみますか?
って聞いて来たヤツがいたんだけど、
ソイツについて行ったらヤバかったね。
それで、それ以上は調査出来ずに
帰ってきたってわけさ』
そこで私は両腕を組んで考える。
高い塔、って言ってたけど―――
「その塔の高さは?
どれくらいありました?
王国のお城くらい?」
『いや、そんなものじゃなかったねえ。
上の方はとても細くて……
途中までは人間が上がれそうな感じみたいに
言ってたけど、先端はそれこそ山みたいな
高さだった』
「いやちょっと、大げさじゃないッスか?」
「そんなに高い塔って……
倒れたら被害がすごそう」
次期ギルド長夫妻が感想を述べるが、
「う~ん。
ブロウさん、ちょっとライさんに
替わって頂けますか?」
すると通信機の向こうから、
『あ?
いや、このままでも聞こえるぞ。
聞かれてはマズい事か?』
「いえ、これはライさんと直接話した方が
いいと思いまして。
私の世界の話になるんですが―――」
そして私は、電波塔なるものについて
レクチャーし始めた。
『……まあ何だ、要するにだ。
魔力を電波と見立てた時―――
その効力を発揮する範囲は、その塔が
高ければ高いほど広がる、という認識で
いいんだな?』
「そうです。
これ自体は、この魔力通話機の次の段階として
すでに王国の研究機関に伝えてありますが。
向こうがすでにそれを実用化していると
したら……」
私が魔力通話機に向かって話していると、
後ろからジャンさんが、
「その塔とやらが―――
隷属契約を強化、もしくは補佐している
可能性があるってワケか」
「それなら、他の国に無いというのも
納得ッスね」
続けてレイド君も補足するように語り、
『なるほど……
ユールやジャーヴの話では、その塔があるのは
首都近辺だけで―――
国境近くには無かったらしい』
「他の国に、それを建てさせているという
話は?」
すると魔力通話機の向こうからゴソゴソと
聞こえて、
『いやあ、少なくともザハン国にはあんなの、
1本も建ってなかったね。
それに、こっそりやれるようなモンじゃ
ないだろ。
あんなに高くて目立つもの』
話し相手がブロウさんに代わり、答えが
返ってくる。
「確かにそうですね。
じゃあ今のところ、自国専用って
事でしょうか」
ミリアさんが分析しながら返すと、
ふとある事に気付いて、
「あの、ブロウさん。
その塔って、高さはみんな同じだったん
ですか?」
『ん?
そうだねえ、全部近くまで行って見たって
ワケじゃないけど―――
多分どれも同じくらいの高さだったと思う。
それがどうかしたかい?』
「じゃあ、ものすごく高い塔とか、
他とは一線を画すくらい大きな塔とか、
そういうのは無かったんですね?」
『少なくとも首都には無かったねぇ』
その答えにひとまず胸をなでおろし、
「オイ、高さがそんなに気になるのか?」
「いえ、実は……」
ジャンさんの問いに、魔力通話機の
向こうのメンバーも含め、彼らに説明
する事にした。
『なるほど。
今はそれくらいの高さだから、自国内のみの
運用になっちゃいるが―――
高さを上げれば、他の国もその範囲内に
入ってしまう恐れがあるのか』
「最悪そうなります。
もし私の想定通りの運用をしているのなら、
さらに次の段階を計画していてもおかしく
ありません」
私の言葉に、魔力通話機のこちら側と
あちら側で……
重苦しいうなり声が聞こえてくる。
『対抗策はあるのか?』
施政者であるライさんは、すぐに切り替えて
解決に向けて動く。
「一応は。
それが魔力やその効力を広範囲に伝えるもので
あるのなら―――
それ自体を無効化してしまえばいいのです。
手っ取り早いのはその塔を破壊して倒す。
高ささえなくなれば……
広範囲に影響を及ぼすのは不可能に
なりますから」
「じゃあ、ワイバーン部隊に奇襲・急襲させて、
ブッ壊すのが一番か」
こっちのギルド長が両腕を組みながら話し、
「他は―――
その塔を無力化すればいいだけですので、
魔力を封じる、もしくは吸収する魔導具を
取り付ければあるいは」
『ふむ。
『見えない部隊』に潜入させて、魔導爆弾を
取り付けるのが、被害が少なそうだが。
どうだ、出来そうか?』
向こうでブロウさんたちに聞いているの
だろうが、しばらくしてから、
『どうだろうねぇ。
ワタシらが潜入出来るのは、あくまでも
魔導具での監視を行っているところだけだ。
あの感じだと、見張りは付けていると
思った方がいいよ。
何せあちらは、奴隷をいくらでもコキ使えるん
だからねぇ』
彼ら『見えない部隊』は、魔力封じの腕輪などを
自らに装備し、任意で取り外したりする事で、
魔力感知の目を誤魔化す事が出来る。
だが実際に、直接目視で見張られているのは
誤魔化しようがない。
「夜間じゃどうッスか?
むしろそっちが基本ッスよね?」
レイド君がそう提案してくると、
『確かに、成功率は夜の方が上がるかも
知れないけどね
ただ昼間だって、塔に近付く怪しいヤツらを
警戒していたんだ。
多分夜はもっといるんじゃないか?』
その答えに肩をすくめるレイド君の隣りで、
ミリアさんが、
「それより、アタシが気になっているのは、
シンさんのさっきの言葉なんですけど……
それらの塔よりものすごく高い塔―――
それが首都じゃなく郊外とか山奥とか、
もしくはこれから建てるという話になって
いたら?」
彼女の言葉に、支部長室にいた全員が
顔を見合わせる。
おそらく、通信機の向こう側も同じ事が起きて
いるだろう。
『こりゃ、もう一度モトリプカに調査しに行って
もらわないといかんな。
今度は完全に潜入捜査だ。
塔そのものには近付くな。
塔に『関する』情報収集だけ行え』
向こう側から、
『はぁ、またかい』
『仕方ねぇな』
『報酬をはずんでもらわないと』
と、それぞれの声が聞こえ、そして
ライさんから、
『俺はこれからこの問題をラーシュ陛下に
報告し、同盟諸国会議にかけてもらう。
いざとなったら、ワイバーンでの奇襲攻撃も
視野に入れて対応する。
シンには悪いが、引き続きこの問題で
何か進展があったら連絡するから、
公都で待機していてくれ』
それから一通りの挨拶を済ませ……
私は冒険者ギルド支部を後にした。
「しかし、今年で卒業かー。
結局、『ガッコウ』では―――
ヘンリーちゃんと1年しか一緒に
いられなかったなあ」
自宅の屋敷に戻り、一通りの情報を共有した後、
日常会話に移行して、
話の内容はラッチの卒業式になっていた。
「あれでもかなり前倒しで入学させた
方だからね。
それ以前、児童預かり所でも彼とはよく
会っていただろう?」
ヘンリー様は、ヴィンカー・サイリック前大公の
孫にあたる人物で、
特にその母親がラッチの事を気に入っていて、
是非とも息子の嫁にと熱望しており、また
当人も『お姉ちゃん』とラッチに非常に
懐いており、
公都の『ガッコウ』に通うため、わざわざ
現地に居住する屋敷を建て……
休日は『鉄道』で交互に、ヘンリー君が
王都に戻ったり、家族が公都に来るという
生活を送っていた。
(■277話 はじめての さんけつ参照)
「しかし、もしヘンリー様も卒業すれば、
結婚話が加速するねー」
「あのマルテ夫人、完全にその気だからのう」
メルとアルテリーゼも半ば当然のように
受け止めており、
「い、いやぁ~、それはどうかな?
だってヘンリー様、卒業したところで
12・3才だろう?
向こうだってまだ早いと思うんじゃ」
私は義理とはいえ男親として複雑な感情で、
そして娘に振り返ると、
「それにその、ヘンリー様にだって、
『ガッコウ』に通うようになってから、
交友関係もあるだろうし―――
それがいきなり結婚ってなったら、
みんなびっくりするんじゃ」
自分でもよくわからない理屈で、何とか結婚話を
うやむやにしようとしていると……
「ん?
でも『ガッコウ』じゃ、ヘンリー様との仲は
公然の認識だったんじゃないかな?」
「職員も先生も、みな気付いていたと思うぞ?」
「えっ!?
そうなの!?」
妻たちの言葉に驚いていると、
「んー、授業中とはそんな事ないけど、
食事とか休憩とか、あと放課後は
だいたい一緒だったもんね。
よくヘンリーちゃんのお屋敷にも
遊びに行ってたし」
ラッチの話に、私がポカンとして
口を開けていると、
「シンはちょっと鈍感過ぎるよー」
「まあ、そこが女親と男親の違いだとは
思うが―――」
知らない間にいろいろ外堀が埋められているのを
聞いて、ちょっと放心状態になる。
気を取り直して、近くのベビーベッドで
眠るシンイチとリュウイチを見ながら、
「じゃ、じゃあ……
2年後にヘンリー様が『ガッコウ』を
卒業したら、そのまま結婚?
向こうに嫁入り?」
するとラッチがテーブルの上に身を乗り出して
私にチョップをかまして来て、
「あたっ!」
「おとーさんはおとーさんで、飛躍し過ぎ!」
「ドラゴンとお貴族様の結婚だよ~?
国も絡むだろうしさ~」
「我とて、いくらか承知してもらわねば
ならぬ事もあるしのう」
そう続けて家族に総スカンを食らう。
まあ確かに言われてみれば、今までのは全て
人間側の都合だ。
それだって、貴族とドラゴンとの結婚ともなれば
国が動く事態だろうし、
ドラゴン側とて、確かラッチが一人前と
認められるための『試練』があった。
子供にもそれをさせるのか? とか、
それらのすり合わせもあるだろうしなあ。
(■223話
はじめての もっていくもの参照)
「こうして考えてみると、対応しなければ
ならない事は山積みなんだなあ」
私が一人納得してうなずくと、
「まあでも、それが親の―――
っていうかシンの責任だよ」
「え? 私の?」
メルの言葉に私が首をひねると、
「だってのう。
シンの時は別に何事も無かったであろう?
我と結婚する時は……」
あ、そういえばそうだな。
付き合ってから結婚するまで、かなりの
スピードだった気がする。
じゃあ何でラッチの場合は?
と思っていると、
「でもおとーさん、それから他のドラゴンとか
種族とか―――
仲良くやっていこー!
って世界にしちゃったんでしょ?
そりゃ好き勝手には出来ないってー」
ラッチの言う事を聞いて目から鱗が落ちる。
ああ……そういう事、か。
自分は平民で成人同士という事もあったし、
メルやアルテリーゼと―――
それが人間だろうとドラゴンだろうと、
好きな人と一緒になっても、何の問題も
無かった。
ただの1つのレアケースだったはずだ。
でも今は、世界がそういうケースを
認める方向で動いている以上……
きちんとした対応が求められるように
なってしまった、というワケか―――
「そっかー……
何かスマンな、ラッチ」
私が娘に頭を下げると、
「ん? 何でー?
そもそもおとーさんがおかーさんと
結婚したから―――
ボクはヘンリーちゃんにも会えたんだしさー」
「そーそー。
それに、誰もこんな時代が来るなんて
思ってもなかったはずだよー。
多分、一番人間とドラゴンの距離が
近い時代だと思うよ?
他の種族もそう」
「そして双方、それで出来る事が広がった
わけじゃからのう。
だからまあ……
次の世代が少しばかり苦労したって、
気にする事はなかろうよ。
それ以上の事をシンはしたでな」
家族から、慰めと気遣う事を言われ、
屋敷での夜は更けていった―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
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【指】【完結】
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【かみつかれた】【完結】
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【ロートルの妖怪同伴世渡り記】【完結】
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