307・はじめての ちゃーしゅー
|д゜)あけましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いします!!
「相変わらずおとーさんたちは、何かしら
持ち帰ってくるんだからー」
「よ、よくある事なんですの!?」
黒髪ショートに、燃えるような紅い瞳を持つ
娘、ラッチと、
やや薄いブロンドを姫カットにした、
タリス伯爵の令嬢、ルミナ様が……
私たちが持って来た魔物を見上げる。
雪男王の討伐後―――
その解体のため、伯爵邸の中庭まで
運び入れたのだが、
「オーガ……ですか?」
娘より濃いブロンドの髪をお団子ヘアで
髪をまとめた婦人、モニカ夫人が目を丸くして
つぶやくように驚いていると、
「あー、それとはちょっと違うみたいで」
「雪男王、とか言っていたか」
アジアンチックな童顔の妻と、ドラゴンの方の
欧米モデルような顔立ちの妻が答える。
「まーなんだ、被害が出る前に倒せて
よかったよ。
コイツ、何でも食うからなあ」
和風の着物に、透き通るような白い長髪をした
女性が続く。
「そういえばお父さま、ドラゴンが抱えて
飛んで来ましたけど」
「ドラゴンのアルテリーゼ殿に運んで
頂いたのだ。
何せふもととはいえ雪山―――
血抜きだけでもその場でしたかったのだが、
あまりに寒くてな」
娘の疑問に、四角顔のアラフォーの伯爵が
説明する。
「いやでも大丈夫なんでしょうか。
お屋敷の庭でこんな事をしても」
私が心配しながら聞くと、
「場所を確保出来るところがありませんし、
街中の広場はありますが、そこでやったら
それこそ大騒ぎですぞ」
タリス伯爵が正論を返して来て私は黙る。
いつの間にかギャラリーも集まって来ていて、
「あんな魔物が山にいたのか」
「万能冒険者が倒してくれたらしいぞ!」
「ドラゴンが飛んで来たから何事かと思ったが、
こういう事か」
住人が伯爵邸の中庭まで、多分断りもなく
入って来ているのはどうなんだろう、と
思っていると、それを察したのか、
「ははは、ここは田舎ですからな。
屋敷の門に鍵などかけておりませんし、
基本、日中は人の出入りは自由にして
おりますれば」
「ここの住人もみんな似たようなものです。
ルミナにあんな事があったので、一応
見張りは立てるようにしましたけど」
「時々、野菜とか差し入れも持って来て
くださりますから」
そう、伯爵の後にモニカ夫人、ルミナ令嬢が
続けて話してくれる。
「おーし、じゃあ伯爵様!
取り掛かりやすぜ!
やるぞ、お前ら!!」
「「「おうっ!!」」」
と、今度は解体職人であろう人たちが
やって来て、雪男王の死体に群がる。
ワイワイガヤガヤと喧噪が広がる中、
俺は雪女さんに近付き、
「ちなみにアレ、食べる事って可能ですか?」
その質問に彼女は両腕を組んで、
「う~ん……
まあ猿みたいなものだし、食えない事は
無いと思う、多分。
わらわは経験が無いが」
すると、その会話を聞いていたであろう
職人たちが、
「肉質はかなり固めですが―――
まあハンバーグみたいにすりゃ、
イケると思いますぜ」
「冬に肉は貴重ですからね。
多少味は悪くても、喜んでみんな食べると
思います」
という答えが返って来て、
「なるほど。
あれ?
でも王都で、魔物の養殖にある程度
成功していたはずですけど。
魔物鳥プルランも……」
私が首を傾げると、
「まあ確かに、鉄道もありますから―――
買い付ける事は出来ますが、
輸送費がかかるのか遠い領地はその、
割高になってしまいまして」
「プルランも、シン殿が来られてからすぐ
導入したのですが……
今はまだ、卵生産を重点的にやっている
最中ですので」
タリス伯爵夫妻が申し訳なさそうに話す。
そういえば、私がここに関わったのは一昨年。
公都でも、卵が生産ラインに乗るまで紆余曲折が
あったわけだし―――
何でもスムーズに物事が進むわけはない。
ましてや彼らは領地のトップだ。
仕事は何もそれだけではない。
個人で好き勝手出来る私とは違うのだ。
「あ、いや、そうですよね。
いろいろありますし」
私は頭をかきながら下げ、謝罪の意を示す。
しかし固いお肉、か……
柔らかくする方法があったような気がするん
だけどな、チャーシューとか。
「―――ん?
あの、すいません。
ここに重曹ってありますか?」
「え?
ええ、確か厨房にあったと思いますけど。
料理人に聞けばわかると思いますが」
私の問いにルミナ令嬢が答え、
「おりょ?
また何か考えたの?」
「しかし重曹など、何に使うつもりじゃ?
パンかラーメンでも作るのか?」
「まーおとーさんの料理、何でも美味しいから
いいんだけど」
メルとアルテリーゼとラッチ、家族が
私の顔をのぞき込むように言って来て、
「まあ試しというか思い出したというか。
少し時間がかかるから、帰るのは明日に
なると思うけど」
ある事を思いついた私は、屋敷の厨房へと
案内してもらった。
「こ、これは……!」
「固い肉だと聞いておりましたけど、
何て柔らかな」
「フォークもナイフも、何の抵抗もなく
入っていきます!
まるで魔法みたい―――」
翌朝、やや重たくなるが朝食として
その料理を出してみた。
確かにあの雪男王の肉とやらは、筋肉もあってか
ガチガチの固さを誇っていたが……
「昨夜、ハンバーグにしてもらったけど、
それはすごく苦労したって言ってたのに」
「今日のこれはトロットロじゃ。
まるで魔法のよう」
「たぶん、お箸でも切れるよコレー!」
家族も、その柔らかさに目を見張る。
これは―――
重曹を混ぜた水に肉を漬け込み、
一晩放置して、
その後、味付けと共に30分煮込んだ
ものだ。
柔らかい肉といえばチャーシューを思い出し、
その作り方は知らなかったものの、
確か重曹を使うと、過去の記憶から
その方法を引っ張り出して、試して
みたのである。
「これなら、お年寄りでも食べられる
でしょう!
レシピまで教えて頂き、ありがとう
ございます!!」
タリス伯爵が料理の手を止めて頭を下げ、
「いえ、ずっとこの方法を忘れていたので、
思い出す機会を頂き、こちらこそ感謝して
おります。
それと出来れば、雪男王の肉を少し分けて
もらう事は出来ますか?」
「これはシン殿と奥様方が討伐し、ここまで
運んでもらったものです。
どうぞいくらでも……!」
その答えに私は両の手の平を向けて振り、
「いえ、そんなに必要では―――
知人に研究者がおりますので、
そのお土産として頂ければ」
「でもまあ、大きかったし?
1/100でも結構な量でしょ」
「出来れば毛皮も少し。
シャンタルが研究素材として欲しがるで
あろう」
妻たちも会話に参加し……
そうして朝食後、30kgほどの肉のカタマリ、
さらに少量の毛皮・爪・骨などを渡され、
私たちは帰りの鉄道に乗り、公都『ヤマト』へと
帰還したのであった。
「ふぅん―――
街並みだけ見れば、あんまり他の国と
変わらないねぇ」
赤毛の、恰幅のいい女性が独り言のように
つぶやく。
フラーゴル大陸・メナスミフ自由商圏同盟……
その中の一国、モトリプカ。
現在、辺境大陸との関係を巡って―――
自由商圏同盟は強硬派か穏健派に別れており、
そして強硬派の中でも特に反発を示して
いるのが、このモトリプカであった。
そしてそんな国の内情を探るため、元マフィアの
女ボスであるブロウは、
同じウィンベル王国所属の、
『見えない部隊』メンバーである……
ジャーヴとユールと共に商人に化けて潜入
していた。
「いくつか商談はしてみたけど―――
相手はまあ普通なんだよねえ、これが。
奴隷の扱いはアレだったけどさ」
ブロウはこれまで得た情報を分析する。
ワタシも、かつて王都・フォルロワで……
足踏み踊り用の子供たちを奴隷として扱って
いた事はあったけど、
『商品』に関しちゃ、食事や睡眠、そして
休息―――
また、暴力は厳禁だと部下に命じてあった。
逃亡防止用の何らかの魔導具なんて着けた
日にゃ、赤字もいいところだし、
また体の小さい子供は、いくら戸締りを
厳重にしたって、逃げる隙間や機会は
いくらでもあったからだ。
なので少なくとも衣食住を保証し……
浮浪者をやっているよりはマシ、という
環境は与えていたんだけど、
それがこの国と来ちゃ―――
確かに、知的労働者に関しては身なりも
綺麗にしてはいる。
そしてどの奴隷も、暴力を振るわれるのを
見た事が無い。
だがこれは、権利や待遇を考えての事では
ないと、すぐに理解した。
・・・・・・・
する必要が無いからしないだけなのだ。
肉体労働系の奴隷は、ボロボロの衣服に
最低限の食事。
休息もほとんど認められていない。
倒れるまで働く、そんな感じだが……
反抗も反発もせず、黙々と働く。
知的労働を行う奴隷も何度か目にしたけど、
必要最低限の交渉は行えるが、それ以外の
雑談には一切応じなかった。
まるでその時その時で、必要な知識を
出し入れしている感じ。
いくら強力な隷属契約を結んでいるとはいえ、
こうまで自我を抑制する事が可能なのだろうか?
そんな魔法があるのか?
ワタシの中ではぐるぐると疑問が渦巻く。
「アネーシャさん!」
「ご主人様!」
そこへ、痩せ細った男と、さらに頬骨が
浮いているほどの男2人が駆け寄ってくる。
ワタシと別行動で調査していた、マフィア時代の
元部下ジャーヴ―――
そしてもう1人はユールだ。
もちろんアネーシャというのは偽名で、
「どうだったい?」
ワタシが聞くと彼らは小声で、
「やはり奇妙ですぜ。
肉体労働系の奴隷はかなり酷ぇ待遇ですが、
誰一人文句も言わねぇ」
「恐ろしいのは、それが当然のように
まかり通っている事です。
今支配層である住人だって、奴隷階級になる
可能性があるんでしょう?」
2人がそれぞれ持ち帰った情報を共有
してくる。
「それなんだけどねぇ。
この国で……
国民がどうやって奴隷に落ちるか
知っているかい?」
「え? いやそりゃ」
「犯罪、もしくは経済的理由―――
派閥争いという事も考えられますが」
ワタシはその答えに首を左右に振る。
「もちろん、それもあるんだろうけどさ。
戦うんだよ。
正確には『戦わせる』、かな」
ワタシの言葉に2人は顔を見合わせる。
まあ、そりゃそうだろうね。
「戦わせるって」
「まさか……」
同時に、同じ答えに行き着いたようで、
「そう―――
この国ではね、どうしようもない、
どちらも手が引けないくらいの争いに
なった時は、
『奴隷同士の戦い』で決着をつけるのさ。
名誉だか何だか、時には自分自身さえ
賭けて。
そしてその戦いで勝利すればするほど、
手に入れた奴隷が多ければ多いほど、
それがこの国での社会的地位を表すのさ」
ゴクリ、とジャーヴとユールが喉を鳴らす。
「じゃあ、やけに身なりがいい奴隷ってのは」
「知的労働奴隷のほとんどが、元国民じゃ
ないかい?
それも階級的には上の方の。
国民同士がそうやって争ってんだ。
そりゃ奴隷や、ましてや亜人・人外に対する
寛容さを求めるなんて、夢のまた夢だろう」
元部下の問いに答えると、それを聞いた2人は
揃って大きく息を吐く。
「……これからどうしますか?」
もう1人の問いにワタシは両目を閉じて、
「十分とは言えないけど、新たな情報は
手に入った。
あまり欲張ってもダメさね。
今回はこれで満足しておこう」
「そうスね」
「いつまでも我々の好きにさせておくとも
思えませんし、今回はここまでで」
ワタシの意見にジャーヴとユールも同意する。
「そういや、シンさんが何か言ってたって
聞いたんですけど」
不意に元部下が万能冒険者の名前を口にし、
「ああ。
確か、メナスミフ自由商圏同盟の中で、
モトリプカだけ異なる部分を見つけて来て
欲しい、と」
もう1人もそれを思い出したように話す。
「そりゃあワタシも聞いていたけどさ。
だけど、今言った以外の情報だと、
この街並み一つ取っても、例えばザハン国と
大差ないんだよねえ。
建物も、様式とかも―――」
ぐるりと周囲を見渡しながらワタシが語ると、
「そうなんだよなぁ。
せいぜい……」
「うむ。
ところどころ、塔のような高い建築物が
あるが―――
住居ではないようだし、まあ確かに
このモトリプカ独自の風景といえば
そうなるか」
ジャーヴとユールの言う通り、無理やり他の国と
違う点を挙げるとすれば……
2人の言う『塔のような建物』がそれに
当てはまるだろう。
決して多くはないものの、あちこちに
建てられているそれは目を引き、
「じゃあ、最後にアレだけ調べて行くか」
「ですねぇ」
「行ってみましょう」
そしてワタシら3人で、その塔の元まで行って
調査してみる事となった。
「うはぁ、思ったより細いんだねぇ」
「途中までは人が行けそうな感じですが」
「塔というより、槍の先端のような」
何せあちこちに建てられているので、
すぐその根元まで行く事が出来た。
しかしその高さたるや―――
まるで天に向かってそびえ立つ槍のようで、
初めて都会に来たような観光客のような
感じで、感想を述べていると、
「他国の方ですか?」
一般人のような青年が、にこやかに話しかけて
来たが、
「ええ。
この国に来るのは初めてでしたので。
あー、見上げていたら首が痛くなって
きちゃったよ」
そう言って首をコキコキと動かしながらも、
ワタシは内心、この青年に対し最大の警戒を
行っていた。
多分、ジャーヴとユールもそうだろう。
『コイツは一般人などではない』、
雰囲気とか、空気とか……
五感がそう告げていたからだ。
「確かに、どこ行っても目に入ります
からねぇ、これ」
「これは何なんでしょうか?」
2人も表面上はとぼけながら、さりげなく
塔について質問すると、
「う~ん、自分もよくわからないん
ですよね。
国が建てたのは確からしいんですけど。
自分が生まれる前からあって、
見張り台の名残だとか、当時の
建築技術の高さを競う目的で建てられた
ものだとか、いろいろ言われている
ようですけど」
彼は申し訳なさそうにそう答えるが、
目の表情だけは変わらず、
「途中の高さまでは人が入れるようなん
ですけどね―――
……登ってみますか?」
こちらを品定めするかのように、
ジロリと見つめながら聞いて来て、
っ!!
この時、ワタシの未来予知魔法が
反応を示した。
それも、かなりの危険性を告げて―――
「いやいやいや!!
途中までってどの高さまで!?
ワタシゃ、あんな高いところなんて
ゴメンだよ!!」
正直な恐怖も手伝って、ブンブンと手を
垂直にしてそのまま水平に振ると、
「ホラ!
あんたたちが行って来たらどうだい?」
そうアイコンタクトを交えてジャーヴとユールに
話を振ると、
「うへっ!?
い、いやこっちだって嫌ですよ!」
「いくら他国の土産話に、と言っても
限度が……!」
そして2人も拒絶し、
「そうですか―――
まあ、よほどの物好きでもなければ、
あそこに登ろうとする人はいません
からね」
「ワタシも物好きっちゃ物好きだけどさ。
高いところだけはゴメンだよ!」
「ははは……
では、どうぞ良い旅を」
そう言うと、一見人の好さそうな青年は
去って行き―――
ワタシたちもその場を離れ、完全に
距離が開いたところで……
誰からともなく安堵のため息をついた。
「こりゃ確定だね。
あれ、何かとんでもないシロモノだよ」
ワタシの言葉に2人は顔を見合わせ、
「久しぶりに、未来予知魔法が出たんスね?」
「いったいどのような?」
その問いにワタシは彼らの顔を見て、
「もし少しでも登ろう、って興味を
示したら……
案内される途中で、その辺で待ち構えて
いる連中に捕まっていたね」
確実に捕まる未来が見えた。
その先は、想像もしたくない。
つまりそれほど、調べられては困る何かだと
いう事だ。
「とにかく、この情報は何としてでも
持ち帰らないと。
2・3日滞在してからこの国を出るよ」
「へ?
すぐに戻らないので?」
元部下がそう聞き返してきたので、
ワタシは頭を抱え、
「こういうのは焦っちゃいけないんだよ。
慌てればすぐボロが出る。
疑いを持たれるようじゃ、そういう
仕事の者としちゃ失格さね」
その言葉にもう1人も黙ってうなずき、
ワタシたちがモトリプカを出国するのは、
数日先の事となった。
「おう!
肉が柔らかくなるとこうも美味くなるのか!」
宿屋『クラン』で、肉料理を頬張りながら
アラフィフの筋肉質のギルド長が声を上げる。
タリス伯爵領から戻って数日後―――
私と家族は、持ち帰った雪男王の肉を方々に
ご馳走したのだが、
この時に使用した重曹を使った調理方法で、
他の肉も柔らかくなるのか、ここの女将さんに
頼んで試してもらい、
そして今日改めて、ボア肉やプルラン肉、
ムースやディーアなど……
各種様々な肉を料理してもらったのである。
ちなみに雪男王の肉はというと、ジャンさん曰く
『雪男は何度か倒した事があるが、食うのは
初めてだなー』
との事だった。
「いやでも、こんなに柔らかくなるなんて」
「ぷるぷるして、お餅やゼリーみたい」
次期ギルド長である褐色肌の青年と、
その妻でギルド職員のタヌキ顔の丸眼鏡の女性が
フーフー言いながら食べ、
「細かくすれば、歯の無い赤ちゃんでも
大丈夫かな?」
「伯爵は、お年寄りでも食べられると
言っておったのう」
妻であるメルとアルテリーゼも―――
そう評価しながら口に運び、
「うまっ!!
飲み物のように流し込める!!」
「ちゃんと噛んで食べなさい……」
料理をどんどん胃袋に納めていくラッチを、
私は注意する。
「固いのもいいけど、こっちもイケるね」
「いくらでも食べられますぅ~♪」
向こうでは、焦げ茶の髪の長身の夫と、
亜麻色の髪を三つ編みにした妻、
ギル君とルーチェさんが、
「しかし、まだこんな調理法が
あったなんて」
「シンさんのネタは本当に尽きないよなー」
その奥では、ブラウンの短髪に焦げ茶の
ボサボサ頭の2人組の公都部隊長―――
ロンさんとマイルさんもいて、
それぞれが味を堪能していた。
「う~む。
また新たな味に出会えるとは……
おいフレッド!
次の料理本のためにも、レシピを
聞いておいてくれ」
「ご安心を―――
すでにまとめておりますれば」
あちらでは、すっかり太った体形が定着した
ロック前男爵様に、髪を後ろでまとめた
執事さんのフレッドさんが受け答え、
「この料理方法は、ちょっと手間がかかるのが
難点だけどねぇ。
ただ固めの肉って、本当に調理が
悩みの種だったんだよ。
今じゃハンバーグもあるけどさ。
あれは身体強化でやってもらうとはいえ、
みんな疲れちまうからねえ」
赤髪を後ろで束ねたこの宿の女将、
クレアージュさんが料理を運んで来て、
そしてこの異世界では初にして念願の、
チャーシューメンを置いていく。
もちろん、これも私の知識から何とか近いものを
再現しただけで、本物のチャーシューではないの
だろうけど……
「まあハンバーグは文字通り―――
力業ですからね」
「しかし重曹ってのはホント、いろいろ
使えるんだねえ。
重曹サマサマだよ♪
ありがとね、シンさん」
また新たな調理方法をマスターした喜びからか、
彼女は上機嫌で厨房へ戻っていき、
公都全体にそれが広まるまで、そして
チャーシューがラーメンの具材として
定着するまで、たいした時間は
かからなかった……
「おー、これはこれは」
「すいませんなぁ、シン殿。
こんな事でご足労頂いて」
白衣を来た痩せた白髪の老人が、私に
頭を下げる。
数日後、私はメルとアルテリーゼ、妻たちと
共に―――
王都フォルロワ、そこの王室直属の
研究機関に来ていた。
理由は、例の巨大化畜産の獲物を倒すため。
前回の事故もあり、試験場や施設は厳重な
警備体制と、ゴールドクラス級の冒険者たちが
常在していたのだが、
(■210話
はじめての きょだいか(ちくさん)参照)
対応方法はというと……
絶対に脱出させないよう、頑丈な施設で
育てるというものだった。
眠り薬や麻痺毒、またはその魔法で
大人しくさせるという方法も考えられた
らしいのだけど、
そっちは効くまでに時間がかかるのと、
物理的な薬や毒は味が落ちる・売れなくなる
という理由から、
多少は傷ついても、倒すという方法で
落ち着いたらしい。
そして今回私が呼ばれたわけは、
「でもまー、超巨大化が同時に出るなんてね」
「冒険者やワイバーンでも倒せない事は
ないであろうが―――
なるべく損傷させずに倒せるのは、
シンしかおるまいて」
妻たちがそう言いながら見つめる視線の
先には、
超ジャイアント・ボーアと化した魔物が
2体、養殖用の広場にいて、
「あの中に入って倒せって言われても、
下手をすれば2体同時に相手する事にも
なりかねませんし。
じゃあ行くか、メル、アルテリーゼ」
「りょー」
「わかったぞ」
そして妻たちと共に、私はその開けた
場所へと降り立った。
「ブモォッ!?」
「フゴーーーッ!!」
私たちが彼らの視線に入ると、興奮した
様子で、
さらにこちらを標的に定めたのか、
姿勢を低くして、いかにもこれから
突進するという構えとなる。
「お肉の需要も高まっていますし、
恨まないでください。
せめて美味しく食べて差し上げますから。
その巨体で、四足歩行で……
それだけの体重を支える事など、
・・・・・
あり得ない」
私がそうつぶやくと、
「ピギィッ!?」
「プギィイイイッ!!」
こうして私は、一仕事終えたのであった。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
本作品は毎週日曜日の16時更新です。
休日のお供にどうぞ。
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