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305・はじめての じょうほうしゅうしゅう

|д゜)今回は各国の思惑と諜報回。


「ザハン国が?」


「ああ、正確にはメナスミフ自由商圏同盟が、

 って事らしいが」


とある日、公都『ヤマト』の冒険者ギルド支部に

呼ばれた私は―――


アラフィフの筋肉質のギルド長と、褐色肌の

次期ギルド長、そしてその妻であるタヌキ顔の

丸眼鏡の女性に囲まれて事情を聞いていた。


「何とも厄介な事になっているッスねえ」


「普通なら、そんなのそちらで好き勝手に

 してくださいって話なんですけど」


レイド君とミリアさんがため息をつきつつ

話すと、ジャンさんが続けて、


「そこなんだよなあ。


 内輪揉(うちわも)めなら内政干渉せず一択なんだが、

 結果次第じゃ亜人や人外に差別的な勢力が

 台頭(たいとう)するって言われちまったら」


ガシガシと髪をかくギルド長を見て、


「タクドルさんの話では……

 『こちらの現状を伝えに来た』でしたっけ。


 本当に嫌な手というか何というか。

 まあ表立って動く事は出来なかったん

 でしょうけど」


「どういう事ッスか?」


聞き返す次期ギルド長に現ギルド長が、


「これが正式な申し入れで―――

 こちらに味方してくれってんなら話は別だが、


 『こっちはただ、現状を伝えただけですよ』

 ってなると……

 それを受けてウィンベル王国他どの国が

 動こうが、それはその国々の責任という

 事になる。


 ったく、いやらしいやり口だ」


そうジャンさんが吐き捨てると、


「まあ実際―――

 現段階で働きかけは、どちらにしろ

 出来なかったのではと思います。


 むしろうかつに動く事で、反対派に

 口実を与えてしまう恐れもありますし」


「それで、今後どうするんですか?

 ウィンベル王国や同盟諸国としては」


私の言葉の後、ミリアさんが続けると、


「一応今、緊急の首脳会議にかけられている。

 その結果待ちだ。


 ウィンベル王国一国では手には余るしな。

 そろそろライの野郎から通信が来ても

 おかしくないんだが」


そうジャンさんが返したところ、

魔力通信機が発動し、


『あーあー、こちらライオネルだ。

 聞こえるか?』


「おう。

 こっちはシンもいるぞ」


ギルド長がそう答えると、


『同盟諸国との魔力通信会談が今終わった。


 内政干渉はしないという原則の元、

 しばらくは様子見するらしい』


予想通りというか、想定内の情報がライさんから

もたらされる。


「様子見という名の何もしないってヤツか?」


ジャンさんが皮肉を込めて返すと、


『いや、違う。

 今回は『ゲート』を使って、クアートル大陸の

 四大国も出席している。


 直接こっちに来て、会談に参加して

 もらったんだ。

 彼らの意向が強く関わっている』


思わぬ言葉にこちら側のメンバーは

思わず身構える。


「はぁ?

 どういう事ッスか?」


我に返ったレイド君がまず聞き返すと、


『今言った通りだ。


 ランドルフ帝国から皇帝マームード、

 大ライラック国から軍王ガスパード、

 モンステラ聖皇国からメルビナ大教皇、

 ドラセナ連邦の女帝イヴレットも参加した。


 彼ら主導で決まったと言ってもいい』


「やはり、クアートル大陸を戦乱に巻き込む

 可能性がありますから、慎重になったの

 ですか?」


私が見解を述べると、


『いや、まあ……


 会談後、マームード陛下とティエラ王女様を

 交えて聞いたんだが、


 『公式な援軍要請でも無いのに―――

 ムシが良すぎる』


 というのが本音だそうだ。

 モンステラ聖皇国はともかく、他の2ヶ国も

 似たようなモノだろうと』


そこはまあ国のトップとしては……

こちらが勝手に動いて解決してくれるなどと

思うなよ、という文句も含まれていると思う。


「って事は、参戦は考えていないッスか?」


「まあ今すぐには……

 という感じでもあるでしょうけど」


レイド夫婦が質問すると、


『いや、それは避けられないと見ている。


 その上で参戦するのであれば、

 メナスミフ自由商圏同盟からの公式な

 参戦要請か、もしくは内乱になってからの

 方が、敵味方の区別がついてやりやすい、

 という理由もあったようだ』


それを聞いて3人は若干引き気味に

なっていたが、


「それは仕方ないでしょうね。


 それに、こういう問題は介入する時期を

 誤ると―――

 最悪、双方を敵に回す可能性もあります。


 特に外部介入はヘイト、敵意を集めやすい。

 『何で第三者が来るんだ』と」


『俺も同じ考えだ。

 というより、マームード陛下とも同意見で

 一致している。


 ……しかしまあ、シン。

 お前さんの考えはエグいところで合うな』


どういう意味ですか、と突っ込む前に、

室内のギルドメンバーはウンウンとうなずく。


『まあぶっちゃけると、内乱でも起こして

 もらった方が、より介入しやすいって

 ところだろうな。


 そうなりゃ連中もさすがに救援要請を

 出すだろうし―――

 こっちも救出という大義名分を得られる』


「うはー……

 そこまで考えてやるッスか」


「でも最初に被害が出るのが前提なんですね」


前国王の兄の言葉に、呆れるようにレイド君と

ミリアさんが感想を口にすると、


「そりゃあよお、どこだってタダ働きは

 したくねえモンよ。


 ウィンベル王国や同盟諸国が、シンや

 『見えない部隊』に依頼、報酬を出して

 いるのも―――

 そうした方が『安上がり』、もしくは

 国益になると踏んでいるからだ」


『人だって何だって、タダで動くわけでは

 ないからな。


 それが軍ともなればなおさらだ。

 クアートル大陸の四大国の判断は、

 極めて正しい』


ギルド長の後に本部長が補足するように続ける。


実際、現段階でこちらが参戦、もしくは

介入するとして……

敵に恨まれるのは理解出来る。


だが、味方がそれを感謝するだろうか?


歴史を紐解(ひもと)けば……

回答はゴロゴロ転がっている。


アメリカは第一次世界大戦、ヨーロッパに

参戦した。

『自由と民主主義、そして平和』のために。


建前はともかくとして、イギリスやフランス、

民主主義を標榜(ひょうぼう)する国々を助けた。


しかし結果は―――

イギリスもフランスもアメリカからの戦時国債、

つまり借金を踏み倒した。


「アメリカの参戦は遅すぎた」という

捨て台詞付きで。


日本もかつて、イラクのクウェート侵攻時、

1兆円規模の援助を行ったが、


解放時の感謝広告から、協力国30ヶ国の中、

唯一名前を外された過去がある。


後になって……

「あれは多国籍軍の参加国リストだ」とか、

「日本を外す意図は無かった」と言われては

いるものの、


『感謝広告』の中から1国だけを外す、なんて

狙ってやったと言われても仕方が無いだろう。


事実、多国籍軍からも「小切手外交」と呼ばれ、

またドイツも日本と同様、非戦闘参加であった

にも関わらず、ちゃんと『感謝広告』には名前が

入っている事を考えると―――


まあ要するに、助けたところで国家としては

感謝されるかどうか、また国益となるかどうかは

微妙な問題なのだ。


ましてや軍という金も物資も大量に消費する

組織を動かしておいて、感謝もされず国益も

得られないでは、それを決断した指導者および

体制そのものの存在意義が問われてしまう。


『何で助けてくれとも言われていないのに、

そんなリスクを(おか)さねばならん?』


それは正論だし、また各国の本音だろう。


『まあ、モンステラ聖皇国だけは積極的に

 関わりたがっていたようだが』


「ン?」


ライさんの言葉にジャンさんが疑問の声を上げ、


「そういえばさっき、『モンステラ聖皇国は

 ともかく』って言ってたッスね?」


「でも何で聖皇国が?

 あそこ確か、宗教国家でしたよね?」


レイド夫妻もまた疑問を口にする。

確かにライさん、そんな事を言ってたな、と

思っていると、


『そりゃ宗教国家だからだろう。


 あそこは大精霊様を頂点として、全ての

 生き物は平等であるべし、という教義で

 動いているんだ。


 ただいろいろとやらかした過去があるから、

 他の3大国列強と歩調を合わせただけで』


なるほど。

メナスミフ自由商圏同盟が、人外や亜人に

差別的な勢力が中心となるなら……

そりゃ口出ししないわけにはいかない。


だがレオゾ枢機卿(すうききょう)のクーデターで、

他国に対する負い目があるから、今のところは

大人しくしているという事か。


「どちらにしろ、クアートル大陸の四大国も、

 同盟諸国も……

 今すぐ動くような事は無いんですね?」


『ああ。

 ただ、情報収集は続けている。


 これに関しては極秘で、各国の諜報機関と

 連絡を取って共有するつもりだ。


 事実、今回の会議でもいくつか新たな情報が

 もたらされた』


「ほう。

 で、何がわかった?」


本部長の言葉にギルド長が聞き返し、みんなが

耳に神経を集中させると、


『まずメナスミフ自由商圏同盟の融和派は、

 ザハン国を中心にまとまりつつあるらしい。


 まあ自由商圏同盟の中であそこが、こちらの

 実力を嫌と言うほど見た国だしな』


ふむふむ、とみんなでうなずく。


『そして反対派は―――

 モトリプカという国を中心、というより

 この国が最も先鋭化しているようだ。


 同盟の中では比較的新参であったのだが、

 実力主義という事で今回の反対勢力の中でも

 台頭しつつある』


そこで私は片手を挙げて、


「あのー、それなんですけど。


 通常、そういった事を話し合う機関って

 向こうには無いんですか?

 各国の代表が集まって話し合うとか……

 同盟なんでしょう?」


『ああ、それなんだがなあ。


 賢人会議というご大層な名前のものが

 あるようなんだが、古株の国にしか参加が

 認められていないんだとさ。


 つまり、さっき言った新参のモトリプカとかは

 この意思決定に関われないという事だ』


「はぁ?」


「何ですかそれ」


ライさんの話に、若い男女が反応するも、


『それに、これはこちらの同盟諸国会議の

 ように―――

 各国の代表が集まって何かを決める、

 という性質のものではなさそうだ。


 あくまでも商圏同盟で各国は独立国だから、

 方針は伝えられても、強制までは出来ないと

 思われる。


 その気になりゃ同盟から抜ければいいん

 だからな』


それに対しジャンさんが『う~ん』とうなる。


「それで、そのモトリプカは?

 亜人や人外に対して差別的な国なんですか?


 あ、でもさっき実力主義とか言ってたたし」


自問自答のような質問をしてみると、


『それがなあ……』


その後、私と彼らは30分ほど情報共有を

行い―――

その後、自宅である屋敷へと戻る事になった。




「んで? んで?」


「そのモトリプカという国とやらは、

 何が問題だったのじゃ?」


家族との食卓の中で……

アジアンチックな童顔の妻と、対照的な

欧米モデルのようなプロポーションの

ドラゴンの方の妻が聞いて来る。


「人間が支配層の国だけど―――

 いわゆる支配する側と奴隷で構成されている

 国らしい」


私が情報共有のために語ると、


「んー?

 でもまだウィンベル王国にも奴隷って

 いるよね?


 別段、他の国と変わらないような」


黒髪ショートに真っ赤な瞳を持つ娘が、

話に参加すると、


「問題はその奴隷に関する事でね。


 何か特殊な契約の魔導具があるようで、

 それで奴隷を傭兵・戦闘集団化させて……

 一国にまとめあげたのが、モトリプカの

 初代国王だという話。


 また支配層は人間だけど、奴隷は人間・亜人・

 人外問わずいるようだ。

 その点についてはまあ『平等』かな」


ふむふむ、と家族はうなずきながら食事を

続ける。


「じゃあその特殊な契約の魔導具とやらが、

 問題という事ー?」


メルがそう指摘すると、


「原因というか元凶といえばそうかも知れない。


 何せ、それで隷属化(れいぞくか)させた相手がどれだけ

 いるか、がその国の身分と権威に直結している

 らしいからね」


「しかし、それならば商売というより、

 武力で何かやらかしそうな国だが。


 どうしてそんな国がメナスミフ自由商圏同盟に

 おるのだ?」


次はアルテリーゼが聞き返してきて、


「それなんだけど、奴隷化させるのは

 肉体労働的なものはもちろん―――

 知的労働も入るらしくてね。


 それらを使って商業活動を行い利益を得る、

 というのがモトリプカの方針らしい」


「??

 でもそれって、普通の商売と何が違うのー?」


今度はラッチが質問してきたので、


「そりゃあ自分の代わりにみんなやって

 もらえたら……

 何もしなくても利益が入って来る体制の

 出来上がりだから。


 しかもほとんど人件費がかからない。

 従順(じゅうじゅん)な従業員が、勝手に利益を上げて

 献上(けんじょう)してくれる。

 しかも休みなく。


 商売人に取って、そんな美味しい話は

 無いじゃない―――」


私の答えに、家族は『うーん』と複雑そうな

表情となる。


まあ現代の感覚でいえば、AIをシステムに

組み込んで、何でもやってもらう感じだろうか。

自分でする事は何一つ無い、みたいな。


「ん~……

 でも一応生存権はあるっちゅーか、

 殺しまくっているわけじゃないんだよね?」


「そもそも死んでしまったら、働かせる事が

 出来ないわけだしのう」


奴隷がいるのが当たり前の世界で生きて来た

からか、妻たちが楽観的に語るも、


「詳しい状況はまだわかってないけど、

 例えば自由時間無しとか、当人たちは

 やりたい事や好きな事が出来ないという

 状況なわけで」


「でも奴隷ってそういうものじゃないのー?」


ラッチもまた、『何か問題でも?』みたいな

認識なのだろう。

そう言って首を傾げる。


こういう時、異世界とのカルチャーショックって

来るよな、と思ってしまう。


そもそも生きる事自体が厳しい世界なら、

奴隷となって日々の生活が保障されるだけでも

恩の字なのだろう。


「ただまあ、ザハン国ですら―――

 緊急回避用の魔物のエサとして、

 幼い子供たちの奴隷を用意していたんだよ?


 後であれは形骸化(けいがいか)した伝統みたいなもの、

 と言い訳していたけどさ。


 あれが認められるメナスミフ自由商圏同盟で、

 奴隷の扱いってどうなっていると思う?」

(■272話・はじめての ぶんせき参照)


同盟と言ってもそれぞれ独立した国の

集合体なので、モトリプカでも同様の事が

行われているとは限らないのだが、


「……まあ、ちょっと厳しいかな」


「あれを問題視しておらぬところだからのう」


メルとアルテリーゼは、それぞれ抱いている

シンイチとリュウイチを見ながら、


「そういえば前例があったねー」


ラッチも2人の弟に目をやり、そこでやっと

奴隷が酷い扱いを受けているのではないかという

危機感を共有する。


「でもまー、一応は様子見って事で

 落ち着いたんでしょ?」


「そうだね。あ、あと―――」


「?? 何かあったか?」


妻たちに答える前に、料理を一口食べて、


「ライさん……

 ライオネル様とティエラ様だけど、

 あの極秘会談の中で正式に婚約を

 発表したらしいよ。


 何でもマームード陛下が、最後の方で

 いきなり話したんだって」


「えー!?」


「おおおー!?」


「おとーさん、詳しくっ!!」


他人の恋バナに目を輝かせ―――

女性陣から根掘り葉掘り聞かれる事となった。




「お父さま!!


 あの異国の衣装、ありがとうございます!!

 とても可愛らしかったですわー!!」


「お、おお、そうか」


ザハン国商業都市・スタット―――


そこでかつて、辺境大陸に懲罰に向かおうとし、

大艦隊を止められた艦隊総司令、ゼレクトは……

娘からの感謝の嵐を受け止めきれないでいた。

(■292話

はじめての ひょうけつせんじゅつ参照)


「それと、紙で出来たオムツ!!


 あれ、どこの国から購入したんですか!?

 すっごく便利で、今ではもうあれ無しでは

 子育ては出来ませんわよ!


 あ、あとあれもう残りが少なくなって

 いるんですの。

 また手配して頂けませんか?」


初老の老人は、彼女からの申し入れに

困った顔となる。


そもそもあれは、フェンリルのルクレセントと

名乗る女性が、和解した際に何か欲しいものは

ないかと問われ―――

いつの間にか勝手に届けられたもの。

(■293話 はじめての かんちがい参照)


どうしたものかと彼は悩みつつ、


「追加で発注しておこう。


 あと、3人目とはいえ子供が産まれた

 ばかりなのだから、少しは落ち着きなさい」


「はぁい」


そしてしばらく父娘は歓談した後、上機嫌で

彼女は帰っていき、


「旦那様」


「何だ?

 娘が忘れ物でもしたか?」


主人であるゼレクトは、執事である

さらに自分より老齢の男性に聞き返すと、


「いえ、それが……


 辺境大陸の商人という者が来て、

 購入するものはないかと。


 お断りいたしますか?」


その言葉に一瞬顔がほころぶも、

すぐに彼は元に戻り、


「この冬に外国の商人とは珍しいな。

 いいだろう、お通ししなさい」


「はっ」


そしてゼレクトは、その商人を迎え入れた。




「どうも、お初にお目にかかります。

 しかしすごいねぇ、やっぱり金持ちの

 お屋敷は違いますね」


「カ、(カシラ)―――

 じゃなくご主人様!

 言葉遣い、言葉遣い!」


赤毛の、恰幅(かっぷく)のいい女性の

物言いに対し、細身の男が注意する。


「あの、すいません。

 お気になさらずに商談を」


そしてその男よりさらに()せた、頬骨(ほおぼね)

浮かぶほどの痩身(そうしん)の男がフォローに回り、


「いや、別に構わん。


 それで、以前紙で出来たオムツを辺境大陸から

 頂いたのだが……

 それはあるか?」


ブロウとジャーヴは『商品』を取り出し、


「もちろん!!」


「バッチリございやすぜ!!」


それを見てユールが頭を抱える。


この3人は『見えない部隊』のメンバーであり、

探りを入れる意味もあって―――

ゼレクトに商人として近付いたのだが、


「隠さないで良い。


 ……フェンリル様所縁(ゆかり)の者であろう?

 それとも魔族の方か?」


それを聞いた訪問者の男性陣2人は、

『ヤバい』という表情で顔を見合わせるが、


「あんたらねぇ。


 とっくにバレている決まっているじゃないか。

 艦隊総司令まで務める人物よ?


 小手先のウソで誤魔化そうったって、

 時間の無駄。


 そうでしょう?」


元マフィアの女ボスはそう言って、ゼレクトを

見つめ返す。


「そちらのレディは―――

 ずいぶんと修羅場をくぐって来たようだね」


「裏社会で頭はっていましたから。


 彼らも元裏社会の者なんですけど、

 あなたのところでこのヒヨッコどもを、

 鍛え直して欲しいくらいですわ」


ブロウの言葉に、ジャーヴとユールは

肩をすくめる。


「では単刀直入(たんとうちょくにゅう)に聞くとしよう。


 ここを訪ねた理由は?」


「話が早くて助かりますわ。


 今現在、メナスミフ自由商圏同盟が、

 辺境大陸の扱いについて、二分されて

 いるという事情は知っております。


 その中で、強硬派の筆頭……

 モトリプカという国についての情報を

 知りたいんですの」


お茶に手をつけて、涼し気な表情で

彼女は目的を切り出す。


「あの国か―――


 それなら、ワシよりも詳しそうな人間を

 知っておる。

 彼に聞いた方が早いだろう。


 すぐに渡りをつけよう」


「それはそれは……


 それで、何かお望みの物はございますか?

 一応、商人として来ておりますので」


そこで艦隊総司令はコホン、と咳払いし、


「そうだな。

 商談に来たというのに、何一つ買わないで

 返すのも気の毒だ。


 それで、先ほど言っていた紙で出来た

 オムツか。

 あれはどのくらいあるのだ?

 今持ってきている分だけか?」


「在庫はまだございますわ。

 何なら、それも全部持ってきても

 構いませんけど」


実際は、このザハン国にすでに設置してある

『ゲート』を通じて、いくらでも融通出来るの

だが、それを聞いたゼレクトは、


「おお!

 それは助かる。


 娘がすごく気に入っておってな」


そこで彼女は、部下役である男2人に

向かって、


「というわけだ。

 今日中にでもこちらへお届けしな」


「は、はいっ!」


「直ちに!」


そこで艦隊総司令との『商談』は終了し、

後日彼らはゼレクトの仲介で、とある商会へ

向かう事となった。




「お初にお目にかかりますわ。

 ベルマイヤ様。

 本日はどうぞよろしく」


ゼレクトと会った3人の『見えない部隊』

メンバーは、『商談』の2日後、


ザハン国でも指折りというロックウェル家の

屋敷で、そのトップと対峙していた。


真っ白い眉毛にヒゲの、好々爺(こうこうや)とも言える

老人は、その背後に屈強そうな護衛2名を

従えて口を開き、


「ほっほっほっ。


 そちらが、ゼレクト殿の話にあった

 3人か。


 確かに一筋縄ではいかぬご婦人のようだ。

 その2人はまだまだじゃがのう」


ブロウ、ジャーヴ、ユールの3人は品定めを

され、ゼレクトと同様の評価を受ける。


「ところで、ゼレクト殿にまた商品を補充したと

 あったが……


 あれはまだあるかのう?

 ワシも興味があってな」


「は、はい」


「こちらをご覧ください」


そして、紙で出来たオムツなど一通りの商品を

見終えると、


「ふむ、ふむ!

 どれもこれも興味深い!

 いや、これは売れるぞ!!


 すでに一線を退いた身だが、まだまだ

 このように心が(おど)るものがあったとは!」


子供のようにはしゃぐベルマイヤを見て、

男性陣は少し安心したような表情になるが、


「ご入用でしたら、いくらでも」


「ちょうど、商品を積んだ船がこちらに

 着きましたので―――」


ジャーヴとユールがそう言うと、老人は

ニコニコしたまま、


「うーむ。

 それはいかん、いかんのう。


 ザハン国に船が到着したのなら……

 1時間と空けずワシに報告が入る。


 軍船はともかく、民間の船がワシの監視を

 すり抜けて入る事など出来ん」


それを聞いて、部下役の男たちの顔は

蒼褪(あおざ)めるが、


「これは―――


 良い『取り引き』が出来そうですわね」


「ほっほっほっ。


 期待してくれて構わんぞ?」


そして、ブロウとベルマイヤの『商談』が

スタートした。




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― 新着の感想 ―
「またドイツも日本と同様、非戦闘参加であったにも関わらず、ちゃんと『感謝広告』には名前が入っている事を考えると」 要するに白人国家だけを掲載した、アジア人の排除って事です。
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