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300・はじめての とおいみらい(ばんがいへん その3)

|д゜)300回記念回です!!



「みなさま、こんばんわ」


「WNNの時間です」

(※WNN=ウィンベル・ニュース・

ネットワークの略)


TVモニターらしき魔導具に―――

ニュースキャスターと思われる男女が映される。


「さて今年は、我が国が共和制に移行して

 100年目となります」


「そこで今回は特番として、共和国となってから

 これまでの歴史を振り返るのと同時に……


 その前の王国体制、また民主主義の先駆(さきが)けと

 なった出来事、制度などに焦点をあてて

 いきたいと思います」


私がそのモニターに見入っていると、

黒髪セミロングの童顔の妻と、ドラゴンの方の

モデル体型の妻がやって来て―――


「おー、今年で100年目なんだね」


「月日が経つのは早いものよのう」


メルとアルテリーゼが、事も無げに普通の

会話を交わす。


「そうだなあ。


 まさかドラゴンと同じ時を生きるとは

 あの時は思わなかったけど……

 生きてみると意外とあっという間に

 感じるよ」


ドラゴンや他の種族と異種間で(ちぎ)った場合、

強い種族の方に寿命が引っ張られる―――

という事を知ったのは、2人と結婚してから

だいぶ後の事で、


聞くとドラゴンは余裕で千年、長ければ

2千年くらい生きるらしく……

それを知った時は愕然(がくぜん)としたものだが、


「しかしメルまで同じ寿命になったというのは、

 安心というか正直驚いたけど」


「そーなんだよねー。

 まあ、シンが相手だったし?」


私が異世界人だったからか、何らかの

イレギュラーがあったのだろう。

今となってはそれがありがたいけど。


「まあ基本3人でシていたからのう。


 それに、産む方が人間や他種族の場合は

 そちらに引っ張られる事もあるらしいの

 じゃが。


 シンイチもリュウイチと同じ成長速度で、

 ホッとしたわい」


リュウイチはともかく、シンイチは純粋に

人間だったので、私もそこが心配だった。


しかし2人ともたいして変わらない早さで

大きくなっていき―――

あの時のラッチと同じくらいになったのは、

30年以上経ってからだ。


「それより、今日はリュウイチが帰って

 くる日だからねー」


「うむ!

 気合いを入れて料理を作っておるぞ」


そういえば朝方から何やら騒がしかったな。

そうか、アルテリーゼの、そして私の息子が

帰ってくるのか。


「言ってくれれば私も手伝ったのに」


すると妻たちが同時に首を左右に振り、


「わかってないねー、シンは」


「久しぶりの息子の帰還じゃぞ?

 母親の手料理、で出迎えるのが筋であろうて」


まあ、そういうものなのかも知れないな。

別に父子家庭というわけでもなかったし、

親父の手料理で出迎えるのは無粋か……


「そっちは、ラッチちゃんが帰ってきた時に

 やるんだねー」


「そうそう。

 それに、夕食はシンに腕をふるってもらう

 つもりだからのう」


そんな事を話していると、玄関から物音、

そして声がして、


「今帰ったぞ、母上、父上」


それを聞いた私たちは3人で、リュウイチを

迎えに行った。




「相変わらず農業と牧畜に力を入れて

 いるようだな。


 ここは何も変わっていなくて安心したぞ」


母親譲りの黒髪をミドルショートにした、

20代半ばに見える青年がそこにいて、


「リュウちゃんも元気そうだね」


「ここに来るまで何もなかったか?

 まあリュウの実力なら問題はなかろうが」


そう、ここは世界で最も危険な魔窟(まくつ)

呼ばれる地域。


狂暴な魔物がうろうろしていて、ゲームであれば

ラスボスクラスが―――

群れをなして暮らしているような場所。


まず『普通』の人間なら入って来れず、

亜人・人外だったとしても、相当な実力者でも

なければ、ここにたどり着くのは至難の業と

言えた。


「しかし父上も物好きな。


 好き好んでこんな土地に住もうと

 言うのだから」


「元から、あまりこの世界のする事や判断に、

 口を出さないという方針だったからね。


 それに私がいなければ解決出来ない問題を

 残す、というのは避けたかったから」


そう……

ここは辺境大陸やクアートル大陸、

ましてやフラーゴル大陸でもない。


今この世界で最も危険な場所はどこか?

と、調べに調べた結果ここがピックアップされ、


ここに移り住んで以降、少なくとも一般人との

接触は無くなっていた。


とにかく久しぶりに帰ってきた我が子を

(ねぎら)い、乾杯のように飲み物を交わす。


「そういえば自分の国の調子はどう?

 『竜魔王』リュウイチ様?」


メルがおどけるようにして彼にたずねると、


「メル母上までやめてくれ。


 それに魔王というのであれば―――

 シンイチの方がよほどふさわしいであろう?」


「シンイチ、魔界王と結婚したものなあ。


 今思えばあやつ……

 赤ん坊か、まだ幼い頃から狙っておったの

 かも知れん」


家族の言う通り、もう1人の息子―――

シンイチは魔界王・フィリシュタ様と結婚した。


もう100年以上前になるのか……

そうしみじみと過去を思い出す。


もっとも、彼女とシンイチが付き合っていたのは

メルもアルテリーゼも承知だったようで―――

改めて女性の感覚は男とは違うと思い知った

ものだ。


「それにしても体は大事にしているの?」


「そうじゃ。

 ドラゴンハーフとはいえ、無敵では

 ないのだからのう」


「辛い事があれば、いつでも帰って来ても

 いいんだぞ?

 お前には帰る場所があるんだから……」


家族として息子を気遣うと、リュウイチは

押し殺すように笑い出し、


「おいリュウイチ、父さんも母さんたちも、

 お前を心配しているんだぞ?」


すると彼は姿勢を正し、


「すまぬな。


 いや、世界広しと言えど我にそのような

 言葉をかけるのは、メル母上、母上、

 そして父上しかおるまい」


「まあ、世間様にはいろいろ言われている

 ようだけど―――


 私たちに取っては可愛い我が子なんだ。

 お前の言う通り私たちは父親、母親なんだよ。


 どんなに強く、どんな立場になろうとも、

 心配してしまうものなんだ」


「フフ……ッ」


照れ隠しなのか、自嘲(じちょう)とも苦笑とも

取れない笑いを親に見せる。


「そういえばいつもお前1人での帰郷だが、

 部下とかは連れて来ないのか?」


「我について来られる者がそうそう配下にいると

 思うか? 我が父よ」


確かに、魔界を抜かせば難易度・危険度共に

ナンバーワンの土地だからな、ここは。


「まあいざとなれば『ゲート』もある。

 顔見せしたい時はそれを使うさ」


「リュウちゃんも使えばいいのに」


「いいのだ、メル母上。

 政務ばかりでなまった体にはいい運動になる」


「しかし、時々このように国を留守にする王と

 いうのも、なかなか型破りよのう」


実の母親からそう指摘されると―――


「なに、たった1週間やそこら王が不在だと

 しても、それでどうにかなるほどヤワな

 国ではない。


 我が築き上げた国だ。

 優秀な配下もそこそこいるしな」


「まさか息子が王になるなんて思わなかったよ。

 いや、シンイチは結婚したからともかく」


「……我は未だに覚えておるぞ?

 お前がいきなり『暗黒大陸へ行く』と言って

 飛び出した日を。


 あの時、どれだけ心配した事か」


アルテリーゼから言われた息子はバツが悪そうに

肩をすくめると、


「すまぬ、母上。


 だが父上の背中を見て育った我は、

 ガマン出来なかったのだ。


 未だに別種族という理由で争っている

 連中がいるという事が。


 それで女子供が、弱者が(しいたげ)げられて

 いるという事実が―――」


「まーリュウちゃんが物心つく頃には、

 みんな仲良くやっていたもんねえ。


 それが、あんなものを見せられたり

 聞かされた日にゃ」


メルがリュウイチを擁護するように語る。


実際、シンイチもリュウイチも……

ラッチが人間化した頃と同じくらいに成長する

頃には、おおよその差別や迫害は消えていた。


ただそれは、同盟や交易を結んでいる大陸だけの

話であって―――


新たな大陸を発見する度に、そこでの状況や

現実を知る度……

寒々とした気持ちになったものだ。


その中でも暗黒大陸と称された新大陸は

酷い物で、


奴隷制は元より、民族浄化ならぬ種族浄化という

ジェノサイドが普通に行われ―――

戦乱と腐敗で数百年は荒廃していたと言われ、


そんな大陸へリュウイチは1人、

向かったのである。


そして戦乱の元凶である国々の上層部を襲い、

時には併合・時には併呑(へいどん)を繰り返し、


大陸統一を成し遂げ、多種族国家を(おこ)したので

あった。


そんな彼を暗黒大陸の人々は尊敬と畏敬(いけい)を込めて

こう呼んだ……


『竜魔王』、と―――


大陸統一後、リュウイチは一度だけ帰って来た。

その時はまだ私たちは、ウィンベル王国内に

いたのだが、


『父上が力を使う事を良しとしないのは

 知っている。


 だが我はこの世界で生まれ育った者。

 そして父上、母上の息子として……

 あの状況は看過(かんか)出来なかったのだ。


 許してくれ』


私は父親として息子と話した。


『もし王となるのであれば―――

 お前がいなくなっても維持出来る組織を作れ。


 自分が死んだ、いなくなった後は知らん、

 というのは無責任だ。


 組織のトップというのは、そこまで考えて

 初めて資格があるんだ』


その後も基本的人権や、普通選挙制など……

私に会いに来ては国の作り方を相談し、

可能な限り私もこれに答えた。


国家の名称まで私に決めてくれと、

頼んで来た時はさすがにまいったが。


今、彼は―――

多種族国家『ヒノモト』を治める王と

なっている。


そんな彼はふと今、TV型魔導具でやっている

番組を見て、


「そういえばウィンベル王国は、ついこの前

 民主化したのだな。


 同盟諸国の中で、一番最後にそうなったのは

 意外だったが」


各国が共和制、または立憲君主制に体制を

変えていく中……

ウィンベル王国は王国であり続けた。


それには理由があり、


「ラーシュ陛下の治世(ちせい)で、だいたいの民主化の

 下地(したじ)を作っちゃったからねー」


「生まれや魔力・魔法による差別撤廃や、

 選挙制の前身となる国民投票を取り入れた

 からのう」


妻たちの言う通り―――

実はラーシュ陛下の時代、私が教えた制度を

ほとんど取り入れてしまい、


王国とはいえ、最低限の人権保障や、

政治に関わる事が出来たため……

民主化の必要性を感じなかったという

皮肉な現象が起きてしまったのだ。


ちょうどその事をTVで流しており、


『そこで―――

 ウィンベル王国最後の国王、チトー陛下が

 『我が国も同盟諸国と歩みを合わせる

 べきである』

 という表明を行い、王政を続けるか否かの

 国民投票を実施しました』


『その国民投票の最中にも、

 『我が国民はすでに、自分の足で立てる事を

 知っている。

 今回、それを証明するであろう』

 と、民主化をむしろ後押しし……


 共和国となったウィンベル王国は、

 およそ500年の歴史に幕を下ろす事に

 なったのです』


神妙な顔つきでキャスターたちが語る。


こうして王国から共和制に移行した、

ウィンベル国だが、


ウィンベル王家は国民に絶大な人気を

誇っており、王政廃止は決定したものの、


ウィンベル国の『永世象徴家』として、

王族は残る事となり―――

国外から来る使者は必ずウィンベル家に

表敬(ひょうけい)訪問し、


また王族たちも、各国の記念式典や行事に

顔を出す、外交の役割を(にな)っている。


他、貴族制も解体されたが……

こちらもよほどの事が無い限りは、領民から

非常に(した)われており―――


ほとんどの貴族家が財閥、もしくは名家として

形を変えて存続し、


主だった領民たちも、その家の使用人か

従業員となり、永らく仕える事を望んだ。


私が知っているだけでも、ドーン財閥や

ロック財閥はウィンベル共和国内はおろか

世界でも屈指の規模と資産を誇り、


シュバイツェル子爵家やグレイス子爵家は、

名門として今でもその名を伝えている。


「そういえばミリっちやルーチェ、

 エイミさんの子孫ってどうしているかなー」


「そっちはまあ、ラッチが夫たちと共に

 ちょくちょく様子を見に行っておる。


 しかし懐かしいのう。

 今はもう、20代くらいになるのか」


私が異世界(ここ)に来た時に知り合った方々は、

当然の事ながらすでに寿命で亡くなっている。

(ワイバーンやドワーフやエルフ、

グリフォンのような方々は別として)


その後、彼らの子孫を3代先くらいまで

影に日向(ひなた)に支援していたのだが、


ジャンさんが晩年、私と話し合い、


『このままお前がアイツらの面倒を見続けるのは

 問題がある』


と指摘されたのだ。


1つは、ほとんど不老不死のような存在が

バックにつく事は、新たな特権階級や権力を

生む可能性がある。


もう1つは、特定の異種族と結婚する、

イコール寿命が人間と比べものにならない

くらいに伸びる、という事が(おおやけ)になると

それ目当てでその種族を独占したり、

またこの事を巡って戦争が起きかねないと

いう事を言われ……


私は歴史上、人間として寿命をまっとうした、

つまり死んだという事にしてあるのだ。


一芝居(ひとしばい)打ったのはジャンさんの死後、

10年ほど経った後で―――

(もちろん、各国の上層部とは共有済み)


その後はウィンベル王国内を転々とし、

細々と暮らしていた。


だが結局、その後も事あるごとに各国から

相談や出動要請を受け、


『今後は、よほどの事でなければ依頼を

受けない』と言って……

今のこの超危険地帯に引きこもったのである。


「人間の身で、顔見知りや自分より年下の者、

 それに産まれたのを見届けた子が自分より先に

 老いて死んでいくのは、結構こたえたけど」


「今はもうすっかり慣れたけどねー。


 でもここに引っ越して来て良かったよ。

 精神衛生上、ありゃキツかったわー」


人間組である私とメルがうなずき合い、


「そういう意味では、シンイチがフィリシュタと

 くっついてくれたのは良かったかもな」


「しかしアイツは今どうしているのだ?

 我よりもヒマだろうに」


ドラゴンの母子が気を遣ってか、話をもう1人の

息子に変えると―――


「んー、まあシンイチはシンイチで

 よく顔を見せるよ」


「この前はつい最近?

 10年くらい前だったかなー?」


「なんだ、そんなものか」


「そう言うリュウイチは30年ぶりくらいで

 あろうが。

 もっとよくこちらに顔を見せい」


と、自分でもすっかり人外感覚になったなあ、

と思いつつ……


今ではスマホ型の魔導具も普及しているので、

その気になればいつでも連絡する事が可能という

事もあり、あまり疎遠(そえん)とは思わなかった。


「ところでリュウイチ。

 お前はそろそろ、誰かと結婚とかそういう

 話は出ていないのか?」


「そうじゃぞリュウイチ。

 もうシンイチはすでに2人の子供が出来て

 おるのだ。

 そろそろ我にも孫の顔を見せてくれい」


と、両親から揃って迫られる息子だったが、


「い、今はまだ建国したばかりでその、

 国家の体制を固める重要な時期ゆえ」


「暗黒大陸統一したのって、ウィンベル王国が

 共和国になる前でしょ?


 下手すれば200年くらい経っているんじゃ

 ないの?」


息子の言い訳に、すかさずもう1人の方の母親が

逃げ道をふさぐ。


「い、いやだからな。

 統一後もその、いろいろとあったのだ。


 むしろ統一後の方が忙しいと感じた

 くらいでな―――」


リュウイチの言い訳に、私もアルテリーゼも

疑問の目を向けると、


「そ、そういえば3人とも。

 以前来た時に話した事は考えてくれたのか?


 我が国で暮らしてみてはどうだ?

 と提案したではないか」


「あー……

 『ヒノモト』の首都『エド』で、生活の面倒を

 見てくれるって話だっけ」


「うむ。

 こう言っては何だが、ウチは建国当初から

 多種族国家だからな。


 人間を始め、魔狼(まろう)羽狐(ウィング・フォックス)、ラミア族は言うに

 およばず―――

 獣人族、鬼人族、人魚族、ハーピー、他にも

 エルフやドワーフなど、あらゆる種族が集った

 首都だ。


 決して退屈する事はあるまい」


すると妻2人も思い出したのか、


「あー、シンが料理屋を出してみるのも

 面白そう、って言ってたヤツか」


「我は旦那様が決めた事なら、どこへでも

 ついて行くがのう」


そうメルとアルテリーゼが和気あいあいと

語り始めると、


「料理、だと?」


急にリュウイチが真剣な表情となり、


「どうした?

 飲食店だとマズい事でもあるのか?」


すると息子はいったん窓の外に目を向けたかと

思うと、


「まさかと思うが、ここで採れている農作物や

 肉を出すのでは無いだろうな……」


「えっ?

 そりゃ当然それを考えていたけど」


それを聞いたリュウイチはブンブンと首を

左右に振って、


「父上の農作物や肉は、『ゲート』を介して

 各地へ出荷されていると聞くがな。

 美食家や富裕層の間では『幻の食材』として

 有名なのだぞ?


 『オチュウゲン』や『オセイボ』と称して、

 毎年『ヒノモト』の我が城にも大量に

 送りつけてくれるのはありがたいのだが、

 毎度毎度、部下どもの間で奪い合いに

 なるのだ」


時々、土精霊(アース・スピリット)様に来て頂いて品種改良とか

行っているからなあ。


家畜に関しても、パックさんや旧王家の

研究機関の方々に協力してもらっているし。


「おー、好評で良かったよー」


「好評過ぎるのだメル母上よ。


 だからこそ、我が国で飲食店を出す時は、

 その材料は使わないでくれ」


「わかったわかった。

 その時は、お前の国の食材を使う事に

 するわい」


アルテリーゼも息子に心配の無いよう

伝えると、


「今日は泊まるんだろう?

 今夜は私が料理を作るから、

 食べていきなさい」


「おお、そうか。

 我が父の手料理も久しぶりだ」


そうしてそのまま、リュウイチは我が家で

一泊していった―――




「長居した。

 では、またな」


「あー、やっぱりまだ忙しいの?」


翌朝、帰る準備をするリュウイチにメルが

話しかける。


「今は国の王だし、そうそうトップが国を空ける

 わけにもいかないからな」


「『ゲート』を使えばいいのにのう。

 まったく、変なところで頑固(がんこ)なのだから」


アルテリーゼが呆れ気味に返すと、


「ここで獲れる魔物も、超がつくほどの

 高級食材なのだぞ?


 部下たちへの土産に何頭か倒して持って

 帰るとしよう」


「お土産なら渡すと言っているのに……」


「それはまた『オチュウゲン』か『オセイボ』の

 時に頼む。


 では父上、メル母上と母上も達者でな」


そう言うとリュウイチはドラゴンの姿となり、

その大きな翼を広げ、空へと舞い上がった。




「行ったか」


「まあ元気なら元気で、それでいいんだけどね」


「シンイチはフィリシュタと結婚したので、

 あまり顔を合わせなくとも不安は無いの

 だがのう。


 あ!

 そういえばリュウイチ、また結婚話から

 うまく逃げおった!!」


そこで私たちは笑い合い、


「そういえば、あのじゃじゃ馬はどうして

 いるかのう」


「あー、ラッチちゃんね」


メルとアルテリーゼが顔を見合わせ、


「ラッチなら―――

 ヘンリー君とダナン君がついているし、

 そうそう危ない事はないだろう」


妻たちはウンウンとうなずき合い、


「それにしても……

 ラッチちゃん、男2人と結婚ですと!?

 と思ったけど」


「今となっては、もらってくれたあの2人に

 感謝せねばのう」


メルとアルテリーゼの言葉に私も同意する。

当時は父親として複雑な気持ちもあったが、


「まあ考えてみればあの子に……

 『どちらかを捨ててどちらかを取る』

 という選択が出来たかというと」


「『何言ってるのー?』

 『両方もらうよー』

 がラッチちゃんだしねえ」


「一時はシンイチにも目を付けていて大変だった

 からのう。

 確かに厳密に言えば血は繋がっておらぬのだが」


いろいろあったなぁ、と妻たちと一緒に

ノスタルジーにひたる。


今頃、どこで何をしているのかな―――

私たちは空を見上げたまま、娘に思いを()せた。




「呼ばれなくてもやってくる!!

 頼んでなくてもやってくる!!


 悪党ども!!

 ここで会ったが100年目だぁー!!」


黒髪ショート真っ赤な燃えるような瞳の女性が、

某国のとある屋敷の庭で、吠えるように叫ぶ。


「女子供を誘拐し、さらに売買するとは!

 その悪事、見逃せん!」


ゴールドに近い黄色い短髪の青年と、


「その地位にありながらこの蛮行(ばんこう)

 恥を知れ!!」


ブラウンの短髪をした青年が、女性を中心に

両隣りに並び立つ。


その3人は……

女性は魔法少女のコスプレのような姿を、

男2人はパーティーにでも出席するとでも

いうように正装に身を包んでいた。


そして屋敷内からはわらわらと、黒服の男たちが

飛び出して来て、


「クソッ、コイツらまさか!?」


「あの、『(くれない)楽団(オーケストラ)』と呼ばれる義賊(ぎぞく)か!」


「構わねぇ!!

 撃て、撃てー!!」


と、すぐに各種魔法を交えた乱戦になるが、


「なっ!?」


「あの両側の2人……

 魔法を剣で弾き返していやがる!?」


それを中心にいた彼女は満足そうに見つめ、


「ボクたちの武器はこう見えても、

 ミスリル製なのさぁー!

 あらゆる魔法を跳ね返しちゃうよぉ!?」


だがそれを聞いた相手側は、


「いや、だからと言って―――」


「剣に当てなきゃダメだろって事だろ!?

 そんな無茶な」


つまりは、剣1本であらゆる魔法攻撃を

防いでいるという事になり……

それは青年2人の剣の力量が、とてつもなく

高いという事を示す。


「だ、ダメだ!!」


「ボスに知らせろ!!

 すぐに逃げるようにと!」


「お、オイ待て!

 あれは!?」


彼らが見上げた先には、夜空に巨大な飛行船が

浮かんでいて、


『ハッハッハ!

 ご苦労だったな、『紅の楽団』の諸君!


 だがさすがに、空からの攻撃は想定して

 いまい!

 目障(めざわ)りな貴様らを倒せるのなら、この屋敷など

 惜しくはない。

 丸ごと消し去ってくれる!!』


船内からスピーカーを通すようにして、

ボスらしき男の声が伝えられ、


同時に、飛行船から何らかの魔力が集うような

攻撃準備のチャージ音が鳴り響く。


「まっ、まさかボス!?」


「お、俺たちごと!?」


「そ、そんな」


手下であろう地上の黒服たちは右往左往(うおうさおう)

し始めるが、


「ラッチ(ねえ)!!」


「ラッチの姉貴(あねき)!!」


青年2人が彼女に振り返ると、


「おお、いいねぇー!

 味方を見捨てるどころか、巻き添えも

 ()さない外道っぷり!!

 ボク好みだよぉー!!


 じゃあヘンリー、ダナン!

 離れて!!」


その声に、青年2人はその場を猛スピードで

走り去り―――


ラッチはそのまま、ドラゴンの姿へと変身する。


「は?」


「へ?」


「え……?」


その展開に、目を丸くして驚く黒服たちを

彼女は見下ろして、


「万が一があるから、みんな伏せててねー」


そう言って上空へと飛び出すと、飛行船を

両手でつかみ、


『ななっ!?

 き、貴様ドラゴンだったのかあ!?』


ラッチはそのまま、飛行船を無理やり

地上に着陸させると、


「ヘンリー、ダナン!!」


「はいっ!!」


「わかってるって!!」


青年2人が船内へと乗り込み、あっという間に

制圧を完了した。




「じゃあラッチ姉。

 またいつものように、縛って置いておけば

 いいね?」


「そ。

 後はこの国の司法が何とかしてくれるでしょ」


ラッチ・ヘンリー・ダナンは―――

部下であろう集まって来た者たちと一緒に、

悪党たちを縛り上げる。


「じゃあ俺たちはこれで……」


3人が帰ろうとすると、ボスらしきアラフィフの

ひげ面の男が目を覚まし―――


「く、クソッタレが……!


 どうして俺の組織を狙ったんだ!

 裏社会の組織なら、俺以外にも腐るほど

 あるだろ!!」


ラッチにそう悪態をつくが、


「別にさー、ギャンブルとかお金を貸す

 程度なら―――

 ボクもお目こぼしするけどー。


 でもおとーさんが言ってたんだ。


 薬や、女子供に手を出すのだけは絶対

 ダメだって」


「な、何だよそりゃあ……」


半ば呆れるようにボスはうなだれ、


「ラッチ姉!

 そろそろ司法機関の人間がやって来ます!」


「今のうちにずらかりましょう!

 行くぞ、野郎ども!」


ヘンリーとダナンに促され、


「じゃあね~♪」


彼女がそう言うと、3人揃って彼らは

部下と共に闇に消えて行った―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

本作品は毎週日曜日の16時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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お待ちしております。

それが何よりのモチベーションアップとなります。


(;・∀・)カクヨムでも書いています。

こちらもよろしくお願いします。



【異世界脳内アドバイザー】

https://kakuyomu.jp/works/822139838651832184


【女性冒険者パーティーの愛玩少年記】【完結】

https://kakuyomu.jp/works/16818093088339442288


ネオページ【バク無双】【完結】

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【ゲーセンダンジョン繁盛記】【完結】

https://kakuyomu.jp/works/16817330649291247894


【指】【完結】

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【ロートルの妖怪同伴世渡り記】【完結】

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― 新着の感想 ―
三百回更新おめでとうございます。 ・大多数の方は気づいていませんけど日本も王制?なんですよね。それも世界一の歴史を誇る国。資料で確認できるだけで千数百年、神話まで含めれば二千年という。 格付けの面で…
(*ゝω・*)つ★★★★★  っま、まさか最終回っ!?Σ(゜∀゜ノ)ノ
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