299・はじめての しゃしん
|д゜)そして次回はついに300回!!
「頂きます」
「「「頂きまーす」」」
児童預かり所の食堂で―――
私は家族と一緒に、この異世界では三度目になる
年越しソバを食していた。
例の雪鴨が大量に手に入ったので、
今年は鴨肉をふんだんに使ったソバと
なっている。
「去年は産院で、その前は冒険者ギルドの
食堂で、だっけ」
「あの時はまだ、リュウイチもシンイチも
お腹の中であったな。
何とも不思議な気分よ」
同じ黒髪の、童顔の妻と欧米モデルのような
顔立ちの妻がそれぞれ答え、
「はい、ふーふー」
黒髪ショートに燃えるような瞳を持つ娘が、
弟たちにソバを食べさせてあげていて、
「お肉はかなり柔らかくなるまで煮てくれたって
話だけど、気をつけてね」
「わかっているッスよ、ミリア。
ほらミレーヌ、あーん」
向こうでは、褐色肌の長身の夫が娘にソバを
あげるのを……
丸眼鏡の妻が不安気に見つめ、
「ああ、ホラホラ。
こぼしてる」
「あっ、熱いから手でつかもうとしないで!」
あちらでは、レイド君と同じくらいだが細目の
体格の青年と―――
亜麻色の髪を三つ編みにしたまだ幼さが残る
女性が、双子の子供たちを相手に苦戦していた。
そしてさらに向こうの方では、
「おっとっと。
眠いか?
無理しなくていいぞ」
「お昼寝もしたのにねぇ。
やっぱり眠くなっちゃうわよねぇ」
孫の面倒を見る老夫婦のように、
アラフィフの筋肉質のギルド長と、
薄い赤色の髪をした、同じく五十代くらいの
上品そうな婦人が子供たちの面倒を見ていて、
小さい子たちは頑張っていたようだが、
限界を迎える子もチラホラいた。
そして寝落ちした子供たちを……
12・3才に見えるシルバーの長髪をした
女の子が抱き抱えて、
「お父さま、お母さま。
この子たちをベッドに運んで来ますので」
「うん、ありがとう」
「気を付けてね」
それを同じ白い長髪を持つ、研究者であり
医者である夫婦が子供を抱えながら見送る。
「パックさんたちは―――
病院の方は大丈夫なんですか?」
私が2人に質問を投げかけると、
「この児童預かり所は、魔力通信機が各所に
繋がっていますから」
「ドラゴンのわたくしがいれば、一瞬で
病院に戻れますし」
医療関係者だから、決まったお休みは取れない。
緊急事態ともなればすぐに病院に戻る態勢を
整えている。
頭の下がる思いだ。
そして一通りみんなが年越しソバを
食べ終わると、
「よく頑張ったなー。
みんな、もう寝ろよー」
ジャンさんの声のもと、子供たちは
寝ぼけまなこをこすりながら席を立ち、
「女性陣は残るんだっけ?」
「うん。
今のところ、ここと『ガッコウ』しか
着付けが出来ないからね」
メルの言葉に私が答える。
そう、『晴れ着』の着付けの出来る
鬼人族・天人族は今のところ……
この2ヶ所でしかスタンバイしていない。
人数的なものや、子供たちもいる事を
考えると、どうしても準備出来る施設は
限られてしまう。
また、今は各国からの留学組がいるのだが、
前回の『晴れ着』の事を聞いた女子組は全員、
公都に気合い満々で留まっていた。
「シンはどうするのだ?」
「今日はここに泊まって、明日『ガッコウ』で
料理の手伝いをしようと思っているよ。
児童預かり所はまだ住み込みで料理を
してくれる人がいるけど、『ガッコウ』は
そうじゃないからなあ」
これは施設上の問題というか特徴で―――
児童預かり所は基本、身寄りの無い子供たちは
ここで寝泊まりして生活するため、常時食事を
作ってくれる人が必要になるのだが、
『ガッコウ』は通常の宿泊を想定して
いないので……
当然、調理する人は当日集まってもらう
事となる。
お正月用に雑煮や餅つきをやる予定なのだが、
さすがに泊まり込みでスタンバイしてくれとは
言えず―――
「じゃあおとーさん。
ボクたちは『晴れ着』を着た後、
『ガッコウ』に向かうねー」
「まあどのみち、リュウイチもシンイチも
児童預かり所で預かってもらわねば
ならぬしな」
ラッチとアルテリーゼがそう言うと、
レイド君が、
「でも基本、女性は『晴れ着』になるんスよね?
その間の子供たちは誰が面倒を見るッスか?」
「レイド~。
だからちゃんと聞いてなさいよ。
公都の孫がいる高齢者や、弟妹のいる冒険者が
着付けの間は引き受けてくれるって言ってたで
しょうが」
ミリアさんが夫の頬をつねりながら、
注意する。
「相変わらずミリ姉強いなー」
「レイド兄はいつも通りミリ姉には
弱いというか」
弟妹分である夫婦が微妙な表情でその光景を
ながめ、リベラさんは笑いながら、
「女は強くなるのよー。
子供が出来ると特にね」
「コイツらは昔から変わらな……
いや何でもない」
何か言おうとして、ジャンさんが途中で
取りやめる。
「じゃあ、私はいったん病院へ戻ります。
シャンタルとレム、リクハルドをよろしく
お願いします」
「あれ、パックさんは戻られるんですか」
私が彼に問うと、
「妻と娘は『晴れ着』がありますけど、
男の私がこのままいても何ていうか。
明日は『ガッコウ』へ顔を出しますので」
するとシャンタルさんとレムちゃんが、
「じゃあわたくしも明日、そちらへ行きます」
「お父さま、そちらでお会いしましょう。
楽しみにしてくださいね」
そして私たちとレイド君・ミリアさん、ギル君・
ルーチェさんの3組の夫婦は児童預かり所に
残る事になり、
「じゃあ俺もいったんギルド支部に戻るわ」
「お疲れ様です」
リベラ所長がジャンさんを見送って―――
明日に備える事となった。
「よっ!!」
「ほいっ!!」
元旦にあたる新年初日の『ガッコウ』……
そこで鬼人族の餅つきの掛け声と共に、周囲から
歓声が上がっていた。
「相変わらずすごい迫力だなあ」
「『神前戦闘』に出るような選手が、
あの図体でモチを叩くんだからなあ」
餅つきはもう今年で3回目になるが、やはり
2メートル超えの大男である鬼人族がそれを
行う姿は、迫力満点で―――
そして出来上がると、お汁粉・お雑煮・
あんころ餅などが配られ……
みんながそれで体を温めていると、
「シンー!
明けましておめでとー!!」
「来たぞー!!」
「おとーさん!!」
そこへメルとアルテリーゼが子供を抱きながら、
そしてラッチも私の方へと早足でやって来て、
「お~!」
「すごいな―――」
「あれが例の、鬼人族と天人族の衣装か」
全員が正月用の『晴れ着』を着ていて、
それは周囲の人たちの注目を浴び、
「シンさん、アケオメッス!」
「明けましておめでとうございます」
次いでレイド夫妻が娘と一緒に、
「シンさん、明けましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
続いてギル夫妻も双子の兄妹をそれぞれ
抱きながら登場し、
「シンさん、明けましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
「お、おめでとうございます」
少し遅れてやって来たパックさんのご家族に
私も返礼で頭を下げると、
すでに校庭には、獣人族や魔狼、ラミア族、
ハーピーや羽狐、またアラクネのラウラさんや
土蜘蛛のつっちーさんなど、各種族の女性陣も
姿を見せていて、
皆がその艶姿に目を奪われた。
「はい!
今日という日の記念に一枚、『写真』は
いかがでしょうか?
『晴れ着』はここ『ガッコウ』か、
児童預かり所に行けば貸してもらえまーす!
ご希望の方はぜひそちらへ」
『晴れ着』のお披露目が一段落すると……
今度はそれを撮影するサービスが、
あちこちで行われていた。
いわゆる『写真』だが―――
そもそも映像を記録・再生出来る魔導具が
あるのに、どうしてそちらが無いのかと
不思議に思っていた。
そこで私が王家直属の研究機関に依頼して、
写真の概念を伝え、再現してもらうよう
頼んでいたのだ。
一番の理由は、我が子であるシンイチ・
リュウイチの成長記録を撮りたかった、
というのもあるが……
正確な記録を残すという意味では、
研究機関も切実かつ渇望しており、
映像記録用の魔導具はあるが、それでいちいち
全ての記録を撮っていたのでは非効率、という
事情も後押しして、
写真用の魔導具の開発が進められたのである。
そして完成したばかりの写真機の魔導具を
5台ほど―――
公都『ヤマト』に送ってもらったのだ。
「すごいねー、これ」
「肖像画とはちと異なるが、なかなか
趣きのあるものよのう」
メルとアルテリーゼが、撮ってもらった
写真を見比べ、
「鏡でもないんだよねー」
「実物に比べて、表現する色数に限りがある
ようですが……
卓越した技術であると思われます」
ラッチとレムちゃん、娘たちがそれぞれの
写真と対象を交互に見合う。
「1枚、銀貨5枚ってのがなあ。
記念としては高いってわけでもないが」
「まあ家族写真で、全員写るって人も
いるッスから」
「でも公都の住人、金回りがいいのか、
結構撮っていきますね」
出来上がった写真を片手に、ジャンさんと
レイド君、ギル君が感想を口にする。
写真についてはかなり割高になってしまった
感もあるが―――
最新技術としてはカツカツのコストだ。
こればかりは、今後の普及に期待するしか
ないだろう。
「家族で、個人で、あと子供と……
となるとそれだけで3枚ですからね」
「でもこんな豪華な着物を着るなんて、
それこそ一生の思い出ですから」
一方ではミリアさんとルーチェさんが、
満足気な表情で語る。
「ねーシン、これいつまで着ているのー?」
「さすがに昼食前には脱ぎたいぞ?」
対照的に妻たち2人が不満をもらすと、
「一応、全員で記念撮影をするから、
それまで待っててくれ」
そう私が告げると、他の女性陣も、
「うん、確かにこれ綺麗なんですけど―――」
「胸とかお腹とかがちょっとガチガチに」
そう言うのはミリアさんとルーチェさん。
「動き辛いよねー」
「可動範囲が減ります」
ラッチにレムちゃんも、こっちは子供らしい
意見で、
「着付けて頂いた時は、拘束具かと
思うほどでした……」
最後にシャンタルさんがそう漏らすと、
「だからもっとゆったりさせた方がいいって
言ったでしょう。
まあ胸はどうしようもなかったで
しょうけど」
呆れるようにリベラさんがこぼし―――
記念撮影の時間を待つ事となった。
「はい!
これで記念撮影を終わりまーす!
これは無料ですが、焼き増ししたい方は
後で……」
そしてお昼近くになって、全員が集まっての
撮影を終え、
「お疲れ様でーす」
「脱ぐ人は順番で―――」
着付け役の鬼人族・天人族の誘導で、
女性陣がぞろぞろと『ガッコウ』や
児童預かり所に向かうが、
「ふぅ、緊張しました……」
「面白い事を考えるものだねえ」
そこにいたのは、パープルの長髪を眉毛の上で
揃えた痩身の女性と、
アラサーと思われる、真っ赤な長髪を持った
同性が共に『晴れ着』姿でいて、
「これ欲しいー!!
絶対買って帰りますわー!!」
金髪縦ロールのお嬢様もまた、『晴れ着』に
身を包んで叫ぶ。
「ティエラ様、イヴレット様、それに
アンニーナ様―――
お、お疲れ様です」
そこにいたのは、ランドルフ帝国王女・
ティエラ様と、
ドラセナ連邦イヴレット様、
そして大ライラック国の軍王ガスパードの
孫娘、アンニーナ様であった。
「悪いな、突然おしかけて」
「しかし見違えるほど綺麗じゃ、
ティエラよ」
「アンニーナも負けてはおらぬぞ。
よしよし、いくつか買って帰ろうのう」
そしてこちらには男性陣……
グレーの短髪に白髪の混じった、見た目は
40代くらいに見える、ウィンベル王国の
前国王の兄、そしてティエラ様の婚約者である
ライオネル様と、
一見ただの好々爺だが、ランドルフ帝国皇帝、
マームード陛下、
そして60代ほどの老人にして―――
大ライラック国の軍王ガスパード様が
揃っていた。
「いやしかし、聞きしに勝るとはこの事よ。
これほどまでの場所とは思わなんだ」
軍王は周囲を見渡しながら、うなるように語る。
「そうであろう、そうであろう。
余も、また夢でも見ているのではないかと
思うほどだからな」
皇帝がうなずきながら同意する。
「しっかしねぇ。
あんな多種多様な種族でも……
女は着飾りたいってんだから。
こればかりは世界共通って事かね」
女帝がそう言うと、男性陣は苦笑で返す。
「まあこういうところから―――
異種間交流っていうか、異文化交流があっても
いいんじゃないですかね」
義理の父となる予定のマームード陛下に
ライさんが話すと、
「そうだのう。
去年の花見の時もそうであったが、
特に子供たちが分け隔てなく、一緒に
遊んでおるのを見て……
新しい風、時代を感じたものよ」
「確かにな。
今、我が国で異種族にどのような寛容策を
取るか、揉めに揉めまくっておるが、
それがバカバカしく見えるような光景だ」
次いで軍王ガスパード様も感想を口にする。
「ふぃー、やっと解放されたよー」
「綺麗なのはいいのじゃが―――
着るのも脱ぐのも一苦労じゃ」
「走れないのがキツーい!」
そこへ私の家族が普段着で登場し、
「お待たせしました」
「わたくしもレムも、ヘトヘトです」
「お腹が空きました……」
と、今度はパックさん一家が現れ、
「いやあ、写真って疲れるッスねえ」
「あれ?
そちらの方々は、まだ『晴れ着』の
ままなんですか?」
続いてレイド君とミリアさんが娘を抱いて
やって来くると、
「わたくしたちが公都に到着したのは、
遅かったので」
「もうちょっと着ていたいかなーって」
「今日1日は脱がないー!」
と、大人の女性2人と1人の少女は
反対の声を上げるが、
「でもこれからお昼だよ?」
「鬼人族の料理が振る舞われますのに―――
『晴れ着』のままでは厳しいと思われ
ますけど」
そこへ、それぞれ双子の片方を抱いた、
ギル夫妻が忠告を発すると、
ティエラ様、イヴレット様、アンニーナ様は
互いに顔を見合わせて、
「え、えぇ~と……」
「ううむ」
「う~ん……」
と、3人は両目を閉じてうなり始め、
「あのー、明日、明後日とあの『晴れ着』は
誰でも着る事が出来ますので。
今日のところは記念写真を撮れたという事で
いいのでは―――」
そう私が助け船を出すと、
「そっ、そうですね」
「今だけは脱ごうそうしよう」
「わらわもー!!」
と言って次々と目の前の『ガッコウ』へと
入って行き……
父や夫、祖父にあたる男性陣は微妙な
表情になった。
「これが、あの鬼人族が木の棒と器で
作っていた『モチ』ってヤツか」
「美味しいですのー!!」
宿屋『クラン』で、女帝イヴレットと
アンニーナ様がお汁粉やお雑煮に舌鼓を打つ。
「面白い食感じゃな。
だが、うまい」
「そういえばこちらの方々は、初めて
でしたね」
ガスパード様がお肉を巻いた餅を食べているのを
見て、ティエラ王女様が指摘する。
「団子は花見で食したが、これもまた
異なる弾力じゃ」
「お米で作っているんですが、餅を作る用の
お米があるんですよ」
マームード陛下は力うどんを食べていて、
私がそう説明すると、
「お客さんは新顔だね。
のどにつまらせないよう、注意してねー」
赤髪を後ろで束ねた宿屋の女将さんが、
忙しそうに席を回る。
「あー、甘酒おいしい」
「暖まりますね」
ラッチとレムちゃんは甘酒を飲んでいた。
もっともレムちゃんはゴーレムなので、
その魔力をもらっているのだろうが。
そういえば『マナ』の研究過程で知ったけど、
調理済みの料理には魔力がほとんど無い、
みたいに書かれていたけど―――
そんな事を考えていると、察したのか
パック夫妻が席を少し近付けて、
「ああ、レムは食事が出来るよう、
私たちが改造を施しました」
「やっぱりみんなと一緒に食べる方が、
こちらとしても美味しいですし」
多分、何の事を言っているのかわからないの
だろう、クアートル大陸組が首を傾げていると、
「ああ、もう言われないとわからない
だろうな」
そこでジャンさんがレイド夫妻の席から
声をかけ、
「その子はゴーレムだよー」
「もうほとんど人間と変わらぬ」
「ボクも一緒に人間の姿になれて嬉しいよー」
と、メル・アルテリーゼ・ラッチが続くと、
「は?」by女帝イヴレット
「え?」byアンニーナ様
「んん?」byマームード陛下
「む?」by軍王ガスパード
そこで唯一、大陸組で驚かなかった
ティエラ王女が、
「でもその姿になったのは最近なんですよね?」
「そうですね。
ティエラ様と児童預かり所で会った時は、
まだ別の体でしたから……」
そして外国の女性と少女、老人2人が驚きの
声を上げ―――
そしてレムちゃんに注目が集まった。
「そういえば、この辺境大陸で起きた
ハイ・ローキュストの大群迎撃で……
活躍したゴーレムがいたとは聞いて
おったが」
「こんな可愛らしいお嬢さんとはなぁ」
皇帝と軍王が、孫を見るような目で
レムちゃんを評する。
多分マームード陛下のランドルフ帝国は、
新生『アノーミア』連邦と国交はあったから、
そこでハイ・ローキュストの撃退を表彰する
ため、式典が開かれた事を耳にしたのだろう。
(■119話
はじめての しきてん(まるずこく)参照)
「ねーねー、レムちゃんって女の子の
ゴーレムだったんですの?
ゴーレムに性別があったなんて、
知らなかったですわ」
「ええと、この街に来てから女の子として
扱われましたから、いつの間にか?」
「もう全然、人間の少女と区別がつきません
ものね」
「ボクもびっくりしたよー。
こんなに可愛くなるなんて」
アンニーナ様とティエラ王女様、ラッチが、
レムちゃんの近くに席を移し……
彼女中心に話が移るのを見ていると、
ふと女帝イヴレット様が私に近付いて来て、
「よお、シン殿」
「楽しんでおられますか、イヴレット様」
そう返すと彼女がラッチのいた席に座って、
「おりょ?」
「酔っておるのか?」
と、妻たちが不審がるが、
「いやさぁ。
ホラ、あの合同軍事演習―――
アタシの雷魔法を確か止められているの
よねぇ?
それでちょっと今一度再戦?
つーかこの人の実力を見てみたくて」
(■213話
はじめての ごうどうぐんじえんしゅう参照)
そういえばそうだったが……
どうしたものかとライさんに視線を送ると、
「んん?
おい、ジャン。
模擬戦のネタが来たぞ」
さっそく見世物にする前提で―――
彼はギルド長を呼び、
「あ~……
やるってぇのか?
そりゃ新年の娯楽にはもってこいだが、
う~ん」
「何かマズい事でもあるのか?」
女帝がたずねると、
「そうじゃあねえけどなあ。
ま、ここから先はギルド支部で話すか」
ジャンさんがそう言うと、私と妻2人と
イヴレット様は宿屋『クラン』を出た。
『さて、新年になったところで―――
今年初の模擬戦が開催される運びと
なりました!
一方は当ギルド所属シルバークラス!
もはや説明の必要無し!!
奇人にして変人!
ギルド長も認める実力者!!
なぜ未だにシルバークラスなのか
わからない!!
『万能冒険者』、シン選手だぁー!!』
急遽組まれたにも関わらず、観客は満員。
まあ久しぶりの模擬戦という事もあるん
だろけど。
『そして相手は、海の向こうからの刺客!!
ドラセナ連邦からやって来た女海賊……
エリザベート選手だー!!』
もちろんエリザベートというのは偽名で、
相手はあの女帝イヴレット様。
しかしこの解説は何なのだろうか。
イヴレット様もノリノリだし。
「あー、最近ずっと『神前戦闘』ばかり
やってて―――
模擬戦はご無沙汰だったからなあ」
セコンドについているジャンさんが苦笑い
しながら話し、
そして彼に拡声器の魔導具……
マイクが渡されると、
『あー、公都『ヤマト』冒険者ギルド支部、
ギルド長のジャンドゥだ。
今年もよろしく。
で、今回の模擬戦だが―――
少々変則的なルールを採用した。
彼女、エリザベート選手は雷魔法の
使い手でな。
その戦闘となると、客席他、施設の
安全性が確保出来ないと判断した』
そこでギャラリー席がざわざわとし始め、
『そしてシン選手はみんなが知っての通り、
強力な『抵抗魔法』の使い手だ。
それで今回の決着は……
まずエリザベート選手が雷魔法を最大出力まで
上げる。
それをシン選手が『抵抗魔法』で打ち消すか、
それとも通用しないか―――
どちらかで勝負を決したいと思う』
戦闘ではなく、『抵抗魔法』が効くか
効かないかで勝敗を決めるというジャンさんの
提案に、少なからず客席からは不安と不満の
混じった空気が伝わって来るが、
『まあ、百聞は一見に如かず、だ。
エリザベート選手、頼む』
そしてマイクが彼女に渡されると、
『はぁ~い♪
みなさん、初めましてぇ♪
いろいろ言いたい気持ちなのはわかるけどぉ、
それはアタシのシビレル雷魔法を見てからの
お願いねぇ。
それじゃあ、見ててね♪』
そしてイヴレット様が片手を天井に向かって
伸ばすと、頭上に小さな雲のカタマリのような
物が形成され始め、
「な、なんだありゃあ」
「雨雲?」
「何かパチパチ言っているけど……」
と、客席も静かになると同時に、小声で
感想が交わされる。
そしてその雲はどんどん巨大になって、
明らかに雷光をまとった、直径5メートルは
あろうかという光と煙の混合体となる。
さすがに『雷嵐を呼び起こす者』の『二つ名』を
持つだけの事はある。
もう誰も不満気な表情のギャラリーはいない。
これなら観客も納得するかな?
と思った私は小声で、
「雷雲を呼ぶような……
そして任意に発生・発動させるような
魔法など、
・・・・・
あり得ない」
そう小声でつぶやくと、
「!?」
「何だ!?」
「あの雷雲が、あっという間に消えたぞ!」
ギャラリーが口々に言う通り、イヴレット様の
雷雲は跡形もなく消え、彼女はそれを確認して
肩をすくめる。
『どうやら、シン選手の『抵抗魔法』が、
エリザベート選手の雷魔法を上回った
ようです!
よってこの模擬戦―――
シン選手の勝利です!!』
解説役の勝利宣言が伝えられると、
一瞬会場は静まり返ったが、
すぐに大歓声へと変わった。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
本作品は毎週日曜日の16時更新です。
休日のお供にどうぞ。
みなさまのブックマーク・評価・感想を
お待ちしております。
それが何よりのモチベーションアップとなります。
(;・∀・)カクヨムでも書いています。
こちらもよろしくお願いします。
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