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298・はじめての れっしゃのごえい


「おー、結構落っこちて来たね」


「でもメルおかーさん、数が多くない?」


アジアンチックな童顔の妻と、黒髪ショートの

娘が、落ちて来るスカイ・サーペントを見つつ

迎撃態勢を維持する。


「話では300体くらいと聞いていたんだが、

 確かに多いな。


 群れのボスを倒しに行った、アルテリーゼや

 ジャンさんは大丈夫だろうか」


私が上空を確認すると、また数匹がボトボトと

落下してきて、


「シンさん!」


「あ、ミッチーさん。

 どうですか、被害状況などは」


ミリアさんによく似た、丸い耳と灰色の髪を持つ

魔族女性がやって来て―――


「今のところ人的損害はありません。

 落下してきたスカイ・サーペントが

 建物を損壊(そんかい)させたという情報は入って来て

 おりますが。


 それより数ですね。

 斥候(せっこう)の話では300体ほどだった

 はずですけど……

 恐らく千を超えるのではないかと」


やっぱり多いよなあ。

私が能力で無効化させたエリアに入れば、

無条件で落とせるけど。


「あ!

 メルおかーさん、あっち!」


「おうよっ!」


ラッチの指示で、メルが水魔法を消防車の

放水のように放つ。


自分のエリアに入ればほぼ無力化出来るが、

こうしてそのエリア外にいるヤツにちょっかいを

出す事で―――

わざとこちらに接近させて、叩き落とすのだ。


「建物は大丈夫なんでしょうか?

 あんなものが落ちて来たら……」


「住民には城か大きな建物に入るよう、

 指示してあります。

 あれくらいなら大丈夫でしょう」


秘書風の魔族女性の説明に胸をなでおろす。


それに魔族なのだ。

普通の人間よりも耐久力は高いはず。

であれば、このまま迎撃し続けても問題は

ないだろう。


「ねー、ミッチーさん。

 それよりあのスカイ・サーペントってヤツ、

 美味しいの?」


「えっ!?

 は、はあ、普通に食べる事は可能です。

 まあお肉ですし―――


 から揚げにしたりハンバーグにすれば、

 多分美味しくなるんじゃないかと」


「味付けはショーユかな?

 それともお味噌?」


困惑する彼女をよそに、すでに2人とも

食材としてしかあの魔物を見ておらず、


「まあどう調理するかは後で考えよう。


 とにかく今は防衛戦に集中して……」


私は何とか話を元に戻そうとし、

ミッチーさんはホッとした表情になる。


「しかし後から後から来ますね―――


 シンさんの能力があれば、城や城下町まで

 襲われる事はないのでしょうが」


「でも落ちて来ますからねえ……」


確かに私の力であれば、襲われる心配は

無いのだが、物理的に落下してくる事による

ダメージが避けられないのは痛い。


そんなやり取りを続けていると、

不意にスカイ・サーペントが落ちて来なくなり、


「??」


「おとーさん、メルおかーさん。

 何か静かになった?」


と、誰からともなく異常を察し、そして

空を見上げると、


そこには大きなカタマリのような物体が、

ゆっくりと地上に近付いてくるのが見え、


「あ! おかーさん!」


「アルちゃん!

 という事は―――」


「決着がついたのですね」


ラッチ、メル、そしてミッチーさんが上を

見上げながら戦闘終結を確信し、


「うぉーい!!

 (おさ)を討ち取ったが、めちゃくちゃ重い

 らしいんだ!

 これ、どこに置けばいい!?」


と、ある程度近付いて来たところでジャンさんの

大声が聞こえ、


見るとドラゴンの方の妻も……

プルプルと震えながらかろうじてその巨大な

スカイ・サーペントを持っているようで、


『あっ、えーと、城の中庭まで運んでください!

 城下町の人たちは全員、建物の中に避難して

 おりますので、最悪どこかの広場に落としても

 構いませーん!!』


拡声器のような魔導具で上空に伝えると、

ヨロヨロとアルテリーゼは言われた通りの

場所へと向かって行った―――




「つつ、疲れたぞぉお~……」


ロングの黒髪の、顔立ちも体も西洋モデルの

ような妻が、ぐったりとして尻もちをつく。


「お疲れー、アルちゃん」


「でもジャンおじさんにしては結構時間が

 かかったような。

 そんなに手こずったの?」


アラフィフの筋肉質のギルド長にラッチが

問いかけると、


「いや何せ得物(えもの)がミスリル銀だからなあ。

 案内役もアルテリーゼに乗せて、

 それで戦っていたんだよ」


「それで、常に我から見て左右どちらかに攻撃、

 という方法で戦っておったのじゃ。


 その度に我が旋回(せんかい)してな。


 何せ首やしっぽを斬られるわけには

 いかなかったからのう」


ジャンさんの後に、ドラゴンの方の妻が続けて

説明する。


ああ、なるほど―――

ミスリル銀の武器の切れ味は、角河竜(ホーン・ベヒモス)

この目で見ているからなあ。

(■145話 はじめての つり参照)


「さしもの我でも、あれを数発連続でやられると

 キツいぞ」


「うぇ!?

 あんなの耐えられるの、アルちゃん!?」


メルが驚いて声を上げると、


「そりゃドラゴンだからな。

 斬る場所によっちゃ、あのスカイ・サーペント

 だって苦戦したしよ」


そう実際に戦ったギルド長が返すと、

彼は続けて、


「まあどちらかというと今回は、ヒュドラの

 ように再生能力を持っていたから、時間が

 かかっちまったが」


「うわー、よく倒せたね……

 おかーさんもジャンおじさんも」


「とは言え、再生能力もヒュドラほど

 早くはなかったからのう。


 どちらかというと、倒した後に運ぶ方が

 よっぽど骨だったわ」


そこで魔族の防衛隊らしき青年が

駆けつけて来て、


「報告します!

 城下町上空の安全確認が取れました!


 数はまだいたようですが、長が倒された

 事で、群れは撤退したようです!」


「ご苦労様です。

 それで、被害状況は?」


ミッチーさんが指揮官として彼とやり取りし、

それにこっちも聞き耳を立てる。


「やはり建物がいくつか、落ちて来た

 スカイ・サーペントに破壊されましたが、

 どれも修復可能との事です。


 また死傷者など人的被害も今のところ、

 確認されておりません!」


それを聞いて人間側(ドラゴン含む)の

メンバーたちは、安堵(あんど)の色を浮かべる。


「そういや思ったより数が多かったって

 聞いているが」


ギルド長がそれに口を挟むと、


「は、はい!

 どうも長が率いる群れと、さらにその後方に

 本隊が控えていたようで―――


 それにより四方から攻撃を受けて

 しまいました……!」


「情報を読み間違い、完全に初動を誤って

 しまいましたね。


 申し訳ありません―――」


ミッチーさんが頭を下げると、

ジャンさんは両腕を組んで空を見上げ、


「いや、魔物も魔物なりに考えていたって

 事だろう。


 後方に本隊がいたって話だが、普通は

 長がいる方が本隊だ。


 つまり連中、本隊を(オトリ)にして初手の迎撃を

 引きつけて……

 残りの戦力に目的となる場所を叩かせたん

 だろうよ」


そしてギルド長は自分が倒した、巨大な長の

死骸(しがい)に目を向けると、


「思ったより知恵が回りやがる。

 だからこそ、コイツが倒されたら

 全面撤退したんだろうな」


「そうなると、こちらの最強戦力である

 ジャンさんとアルテリーゼがあたったのは

 幸運でしたね」


ふむふむ、と全員でうなずいていると、


「確かに最強戦力でした―――


 一緒にドラゴン様に乗っていたこっちは、

 生きた心地がしませんでしたよ……」


案内役であろう魔族の青年が、青ざめた

表情でこぼす。


「あー、ちと失敗だったな。

 案内してもらった時点で帰ってもらえば

 よかったんだが」


「そのまま戦闘に突入したのじゃ。

 それは仕方がない」


2人が(なぐさ)めるように青年の肩に両側から

腕を置くと、


「いや本当に死の恐怖を感じたんですからね!?


 『風刃(ウインドカッター)』を使っているわけでも

 ないのに、あの巨大なスカイ・サーペントの

 体が切り(きざ)まれていくのを見て―――


 この人、本当に人間なんですか!?」


涙目で訴える彼に対し家族は互いに顔を

見合わせて、


「んー、一応?」


「まあ規格外ではある」


「人外の血が入っていても驚かない」


と、フォローだかとどめだかわからない

感想が述べられ、


「あ、あのっ!

 それで、撃墜されたスカイ・サーペントって、

 結局どれくらいになりました?」


そこで空気を読んだミッチーさんが私に、


「え、えっとですね……

 今のところ、1,500匹ほどは確実だと

 いう事で―――」


「おっ、そんなにいたのか。

 じゃあ少しばかりこっちにもらっても

 いいか?」


「あ、はい。

 それに長の所有権は、討伐(とうばつ)したお2人に

 ありますので」


そこでスカイ・サーペントの処理に話が移行し、


「じゃあ、調理に取り掛かりますか。

 メルとアルテリーゼは休んでいてくれ。


 ラッチはどうする?」


「んー、ボクはあんまり活躍出来なかったから、

 おとーさんを手伝うー」


そのまま、炊き出しを行う運びとなった。




「ハンバーグ、から揚げ、カツ追加!!

 肉団子を入れた汁もたくさんあるよー!!」


蒲焼(かばやき)と天ぷらもー!!

 串はお子さんに気を付けてあげてねー!」


小一時間後……

落としたスカイ・サーペントをみんなに

振る舞うため、担当者の人たちが走り回る。


その調理を担当しているのは主に鬼人族、

そして天人族の女性たちだ。


彼女たちは今回公都『ヤマト』に、晴れ着の

着付けのために来て頂いた方々なのだが、


特に天人族の方々は、私たちが彼らの里で

冬の食料確保に協力した事で―――

(■296話

はじめての ひょうじょうつり参照)


公都にいる間は全面的に私に協力するよう、

動いてくれる事になったらしい。


私はそんな天人族の1人に近付いて、


「あのう、そもそも着付けのために来て

 頂いたんですから……

 そこまでして頂く必要は」


やんわりと、お役目以外の事はしなくていいと

伝えてみると、


「いえ、天人族に取って冬の食糧問題は、

 長年の課題でした。

 それに解決策の1つを見出してくれた

 方ですから―――

 これくらいはさせて頂かないと」


そこでメルとアルテリーゼ、ラッチが

やって来て、


「そういえば、『マナ』ってなかったっけ?」


「そうそう。

 確か白翼族と取り引きしているので

 あろう?」


「あれって、食料を3倍にしてくれるん

 でしょ?

 それがあればたいてい解決すると思うん

 だけどー」


確かに……

食糧難と聞いて一も二も無く出発したけど、


天人族は白翼族と取り引きしていて、

『マナ』を入手しているはず。


その『マナ』というのは、魔力を固定化した

粉のようなもので……

白翼族の主食であり、またラッチの言う通り

それを肉や魚、穀物などに混ぜると3倍に

なるという特性を持っている。

(■207話

はじめての てんじんぞくのさと参照)


私が天人族の彼女に視線を向けると、

少し困ったような顔になって、


「あの『マナ』は―――

 緊急用なんです。


 どうしようもなくなったら使う、

 という感じのものですね。


 それに、使い勝手もあまり良くないと

 言いますか」


あ……そりゃそうか。

普段からふんだんに使えていれば、

わざわざ食糧難とか言い出すワケはない。


ウィンベル王国でもマナの交易はしているが、

それもやはり緊急時にしか使わないと聞いて

いるしな。


「そっかー」


「まあ子供以外は食わなくても生きて

 いけるからのう」


「あとお酒とか飲み物、調理済みの物には

 使えないんだっけ?


 確かパックさんが研究しているって

 話だけどー」


そうか。そのあたりも任せっぱなしだったけど、

どうなっているのか今度聞いてみないとな。


「そういえばジャンさんは?」


私の疑問に家族が、


「ミッチーさんと、スカイ・サーペントの

 取り引き交渉してた」


「長は譲るとか言っていたのう」


「味も結構イケるから、公都の子たちにも

 食べさせてあげたいのー」


シンイチとリュウイチも、すでに離乳食を食べて

いるし―――

これも食べられるかな?


そんな事を考えつつ、『宴』は過ぎていった。




「で、だ。

 デカブツも引き渡したんで、かなりの数を

 こっちに寄越(よこ)してくれたぜ」


『おう、ご苦労。

 まさか本当に何かあるとは思わなかったが。


 しかしそれだけありゃ、各国に相当数(そうとうすう)

 配れそうだな』


翌日、私はギルド長と共に……

冒険者ギルドの支部長室で、魔力通信機経由で

王都にいるライさんに報告していた。


「チビたちも喜んでいたッスからねえ」


「これで魔界からも、食料の輸入が出来そう

 ですね」


褐色肌に長身の青年と―――

丸眼鏡にライトグリーンの女性がうなずき合う。


『さっそく多国間会談にかけよう。


 シンたちはゆっくり休んでくれ。

 報酬の話はまた後ほど』


「あ?

 俺に(ねぎら)いの言葉はねーのかよ。

 長を倒したの俺だぞ?」


本部長の言葉にジャンさんは反発するも、


『お前に何か依頼した覚えはねーよ。

 むしろ楽しんできたクセに何言ってやがる』


「うっ」


珍しく彼が(ひる)む。

こういうやり取りが出来るのも、長年の

付き合いがあってこそだよな。


『まあ長は譲ったという話だし、そのへんは

 考慮してやろう。


 じゃあな』


そこで魔力通信が閉じられ、ジャンさんが

こちらに顔を戻し、


「何で正論って腹立つんだろーなー」


「腹を立てないでください……」


正論をかぶせるように私が思わず突っ込む。


「あ、そうだ。


 そういえば『マナ』―――

 あれって今どれくらい研究が進んだのか、

 パック夫妻に聞きにいかないと」


と、私が独り言のようにつぶやくと、


「ん? 白翼族の『マナ』ッスか?

 この前パックさんが王都に報告していた

 ような」


「確かこのへんに書類が……」


そう言ってレイド夫妻がゴソゴソと支部長室内を

調べ始め、


「え?

 あの、いいんですか?

 私が見ても―――

 その、機密とか」


「もともとお前さんが機密のカタマリみてーな

 もんだろ。


 それに研究に関する情報は、シンなら相当

 上の機密まで見られる権限を持っている

 はずだぜ」


王家直属の研究機関ともいくつか協力して、

技術開発しているし……

まあそんな扱いになっていても不思議は

ないけれど。


複雑な気分のまま、私がその書類に目を通すと、


「ふむ―――

 『マナ』についての性質はある程度

 わかったみたいですね。


 ・それが持っている魔力と結合し、

 倍化する。


 ・倍化したものに対し、二重に効果を

 重ねる事は出来ない。


 ・一度に単一の魔力にしか反応しないため、

 調理済みや魔力の少なくなったものには

 ほとんど効果が無い。


 ・結合時に空気中の水分を使用するためか、

 魔力水や酒、水分のあるものには効果が薄い。


 なるほど……」


そこでレイド君とミリアさんが顔を見合わせ、


「おう、その水分のあるものには効果が薄いって

 話だが―――

 どういう事かわかるか?」


ジャンさんがギルドメンバー代表のように

聞いて来て、


「んー、つまり……

 そのものを2倍3倍にする際、『マナ』は

 空気中の水分を取り込んで、媒介(ばいかい)

 しているらしいんです。


 だから水や液体そのものになると、

 逆に空気中から水分を取り込めなくなるから、

 出来ないって事になるんじゃないかと」


ギルド長に答えると次期ギルド長の青年が、


「でも水や酒だって水分そのものッスよね?」


「それから取り込む事は出来ないんでしょうか」


ミリアさんも夫に続けて首を傾げると、


「多分、条件として―――

 『倍化させるもの以外の水分』とかが、

 必要になる感じじゃないでしょうか。


 ここから先は、後の研究が進むのに期待、

 という事で……」


自分ではこれ以上わからない、という体で

答えると、


「なるほどなあ。


 まあ何でもかんでも使えたら―――

 無限に増殖出来ちまうし。

 そんなにうまい話はねぇか」


その後はしばらく雑談に興じ……

一段落した後、私はギルド支部を後にした。




「もう年が暮れるっていうのにぃ~」


「まあまあ、メル。

 ポルガ国境までの事だから―――」


年末も押し迫ってきた年の瀬……

私とメルは、アルテリーゼの『乗客箱』に乗って

飛行していた。

(ラッチは公都でお留守番)


実はあの後、ライオネル様が各国に多国間会談と

同様に魔力通信機を介して―――

大量に得たスカイ・サーペントの提供を

申し出たのだ。


どこの国も、冬季の動物性たんぱく質の確保には

頭を痛めていたようで、


すぐに人口別に配分された、獲物の運搬が

スタートした。


今は各国とも『鉄道』が通っているので、

大量の物資輸送に問題は無いのだが、


その中でも新生『アノーミア』連邦に

割り当てられた数は一線を(かく)しており、


輸送中に何かあったらと警備を要請。


そこで私たちに白羽の矢が立ち……

連邦の中でも一番北方でウィンベル王国に近い

ポルガ国まで、という条件で、


上空からの監視・警護を引き受けたのであった。


『まあ乗りかかった舟であろう。

 それに、冬の貴重な食料をせっかく

 用意したのに、それが届かなくなっては

 後味も悪いし』


伝声管を通じて、アルテリーゼもメルを

なだめる。


「アルテリーゼの方は大丈夫か?

 『鉄道』に飛ぶ速度を合わせるのは

 疲れない?」


『それは大丈夫ぞ。

 馬車などよりずいぶんと速いしのう』


窓から下をのぞくと、間隔を開けて複数の

列車が、高架橋(こうかきょう)の上を走っていく。


少なくとも地上から何者かに襲われる心配は

ないだろう。

そして上空はアルテリーゼが固めている。


「まあ空って言っても、まさか魔界のように

 スカイ・サーペントのような魔物が襲って

 くる事はないだろうからねー」


『もうカンベンじゃぞ、あんなのは』


そういう妻たちのやり取りを聞いていると、


「ん?」


珍しく私の方が、その接近に気付く。


「どうかしたの、シン?」


「いや、アレ何だろうと思って―――」


私が指差した方向をメルも一緒に見ると、

そこには黒い点のようなものが集まって、

巨大な生き物のように動いていて、


『鳥の群れ、かのう……』


「まさかまた、『弾丸ツバメ(バレット・スワロー)』!?」


弾丸ツバメは、かつて浮遊島設置の護衛の際に、

襲われた事のある魔物で、

(■271話

はじめての ぼうえいきょてん(ふゆうとう)

参照)


「いや、でも―――

 あの時はかなりの高度を飛んでいたぞ?


 そりゃ飛ぶだけなら低く飛ぶ事も

 考えられるけど」


「あ、ホントだ。

 よく見たら形も飛び方も違う。


 何だっけなあ、アレ……」


『しかし近付いてくるぞ?

 いくらただの鳥だとしても、不用意に

 接近するようなら対処しなければ

 なるまい?』


襲って来る事はないかも知れないが、

あの群れが列車にぶつかったり、高架橋の上に

落ちて来たりしたら、事故のもとになる。


するとうねうねしていた群れの動きが、急に

一直線になって、列車目掛けて飛んで来て、


「あー、襲うつもりかな?」


『体当たりでもそう簡単に列車は破壊されないで

 あろうが―――

 窓にでもぶつかるとマズくないか?』


メルとアルテリーゼが危惧(きぐ)を口にし、


「仕方ない。

 緊急の時は止まってもらう手筈(てはず)だし……


 それからアレを対処するぞ」


そしてアルテリーゼに頼んで、列車のやや

斜め上前方で、8の字に飛んで緊急停止の

合図を送る。


すると一番先頭にいた列車から、信号弾のような

魔導具が打ち上げられ―――

後方の列車も次々と速度を落とした。


『では次はあちらじゃな?』


指示を聞いて来るドラゴンの方の妻に、


「いや、このまま待機でいい。


 回収するなら近い方がいいだろう」


「おー、なるほど」


そしてそれらの群れが最接近したところを

見計らって、


「魔力で飛ぶ鳥など……

 ・・・・・

 あり得ない」


そうつぶやくと同時に、その群れはボトボトと

地上へ吸い込まれるように落ちていった。




雪鴨(スノウダック)、ですね。


 まさかここまでの群れに襲われるとは」


列車から降りてきた新生『アノーミア』連邦の

輸送担当者の1人が、その1メートル弱は

あろうかという無効化済みの鳥を見てこぼす。


群れは全て落としたわけではなく、

ある程度無効化したところでそれを見た残りの

雪鴨たちは、本能で危険を察知したのか逃げて

いった。


「危険なのですか?」


「1体1体は何でもありませんが、集団化し、

 群れを成す事で狂暴化するんです。


 しかしこれほどの数を相手に一切の損害を

 出さないとは―――

 さすがは『万能冒険者』殿」


その説明を聞いて私はふと、


「……食べる事は可能でしょうか」


「そうですね。

 結構倒すのが大変というか、我が連邦では

 高級食材になります」


そこで私は考え、


「ここからポルガ国までどのくらいでしょうか」


「このまま行けばもう間もなくでしたよ。

 目と鼻の先です。

 馬車でも2・3時間くらいでしょう」


という事はもう終わったも同然だったのか。

そこで襲われるとは運がいいのか悪いのか。


そして私はアルテリーゼを呼んで、


「ん? どうしたのだ旦那様」


「悪いんだけどこの人を連れて―――

 先にポルガ国まで飛んでくれないか。


 事情を話してもらおう」


そこでメルが首を傾げ、


「事情って?」


私は雪鴨を指差して、


「だってもったいないでしょう。


 馬車でも何でも総動員してもらって、

 コレ持ち帰ってもらいましょう」


それで彼も私の意図を察したのか、


「わ、わかりました!

 直ちに!!」


「あ、出来ればこちらも少しお土産に持ち帰り

 たいので、袋とか網とかもらえれば」


「了解であります!!」


そして彼は乗客箱に乗り込むと、30分ほどで

戻って来て、


私たちは用意してもらった網に30羽ほども

詰め込むと、そのまま公都『ヤマト』へ向けて

飛び立った。



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― 新着の感想 ―
「研究に関する情報は、シンなら相当上の機密まで見られる権限を持っているはずだぜ」 もういっそのこと正式な肩書を貰ってしまえば話は簡単ではないかと。 「王立総合研究所 非常勤特級研究員」とかなんとか。 …
(*ゝω・*)つ★★★★★  可食部が40%以下しかなくても1mサイズの鳥なら食べて有りそうですよね!
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