297・はじめての ぼうくうせん
|д゜)久しぶりの魔界。
「頭を落として、内臓抜いて……
血抜きだけは湖でやってきたからいいけど」
巨大イワナ討伐後、他の釣果と共に天人族の
里まで戻った私たちは、
その巨大な獲物を前にして悩んでいた。
「内臓は捨てるの?
魔狼さんたちに持っていってあげた方が
よくない?」
「確かにそれは喜ぶであろうが」
同じ黒髪の、アジアンチックな童顔の妻と、
欧米人ふうの顔立ちのドラゴンの方の妻が
語り合い、
「凍らせているから匂いはそれほど無いと
思うけどー、まあグロいよねー」
同じく黒髪ショートの、燃えるような瞳を持つ
娘が両腕を組む。
巨大イワナの周囲ではすでにギャラリーが
大勢いて、
「あの湖の主か」
「大きいなー」
「さすがはドラゴン、あのような巨大な
獲物まで―――」
と、口々に感想を述べるが、
「ミナトさん、魚の内臓ってこちらでは
食べますか?」
私の質問に、短い黒髪の天狗の衣装を着た
天人族の女性は、
「いえ、基本的に食べないと思いますけど……」
まあそうだろう。
実際、内臓の一部を食べる地方は日本にも
あるが、
内臓を取り除く理由は、味もあるが毒性物質を
溜め込んでいる恐れがあるからで―――
公都で魔狼や人間が食べているのも、
完全な加熱処理前提であり、
まあ好き好んで食べるものでもない、
という事情もあった。
「ん~……
じゃあ持ち帰ってもいいですかね、
内臓は」
「あ、はい。
それじゃあ、それは洗ってお渡し
いたしますので―――」
そこで私たちは巨大イワナの内臓だけを
受け取り、
それ以外は全て天人族の里に残して、
公都『ヤマト』へと帰還する事になった。
「まあ、何だ。
お疲れさん。
しかし冬の間も釣りが出来るのか。
そりゃあ考えた事もなかったな」
公都にある冒険者ギルド、その支部長室で、
アラフィフの筋肉質の部屋の主が興味深そうに
つぶやく。
「こっちの世界では、食料確保は死活問題
でしたからね。
もちろん、冬になる前に貯める事が出来れば
それでいいんですけど」
「あー、シンさんの世界はそうッスね」
私の説明にジャンさんとレイド君は、
父子のように同時にうなずいて、
「もらって来たモツは―――
魔狼に、って事でいいのか?」
「そうですね」
「人間は食べられないッスか、アレ?
今は普通に食べているような気が
するんスけど」
ギルド長の後の次期ギルド長の質問に、
「あれだけ大きくなりますと……
毒性を溜め込んでいる可能性があるんですよ。
公都の養殖ものはエサを人間が管理して
いますので、そんな事は無いんですけど」
事実、天然魚の内臓は専門の処理でもされて
いない限り、推奨はされない。
サンマなどがOKなのは、胃が無い構造で
あっという間に排泄されてしまうので、
毒性を溜めようにも溜め込む事が出来ない
からだ。
「ま、確かに今年の冬は特に食料が足りて
いないって事もねぇしな―――
その氷に穴を開けて釣るっていうのは、
いつかやってみてぇけどよ」
「じゃあ魔狼ライダーから、魔狼たちに
話を伝えてもらうッスか。
今、下にも何組かいるはずッスから……」
と、ジャンさんとレイド君が話を一段落
させようとしたところ、
「んー、ただまあせっかく手に入った
食材ですので―――
少し試してみたい事が」
その言葉に2人は振り返り、そしてある
イベントに向け、話が進んでいった。
「みなさん、食べていますか?」
「おお、シンさん!
見てください、リリィと子供も喜んで
食べています!」
ボサボサの赤髪の、今は30を超えた
魔狼ライダーの冒険者……
ケイドさん。
魔狼のリリィさんと結婚し、彼女との間に
すでに5人の子供をもうけている。
その奥さんと子供たちは彼の視線の先で、
魔狼の姿で例のモツ煮込みを夢中で
貪るように食べていて、
その中の一体が私に気付くと、
ダークブラウンの長髪と色白の肌の、
長身の女性に姿が変わり、
「シン様、この度はありがとうございます!
このような食べ応えのあるモツ、初めてで
ございますわ!」
リリィさんが人の姿でペコリとこちらに
あいさつすると、
「あっちがお子さん?
大きくなったねー」
「やや人間に合わせての成長と聞いて
おったが、それでももう、ほとんど
お主と変わらぬくらいじゃのう」
メルとアルテリーゼがママ友?
として会話に入って来て、
「えー?
でもまだまだ可愛いと思うけどなぁ」
と、ラッチも参戦し、手にはそれぞれ
味噌仕立てのお椀を持っていた。
ここは『ガッコウ』の校庭にあたる場所であり、
そこで大きなキャンプファイヤーのように火を
焚いて、
人間はモツ煮の代わりに、味噌で様々な
食材をお鍋に入れて―――
一緒に食事を楽しんでいたのである。
「しかし……
こうなると壮観ですね」
私は、一緒に食事をするもう一つの種族に
目をやる。
そこにはワイバーンが、モツ煮を入れた
バケツのような大きな容器に首を突っ込んで、
豪快に食べていた。
彼らの食事も、基本的に最初は魔狼と
一緒だったからな。
(■71話
はじめての はなしあい(わいばーん)参照)
そして人間や亜人、人外の子供たちが
ワイバーンに近付き、いろいろな食材を
串で差し出す。
それを彼らは口先で器用に、具だけを
抜き取るようにして食べ、
その度に子供たちや―――
周囲の他種族の大人たちからも歓声が
上がった。
「ちと寒いが、ちょっとした娯楽だな、
こりゃ」
そこにジャンさんが現れ、
「いやあ、ミレーヌもハヤテやノワキに
串を上げる事が出来て、すっげー
喜んでいるッス!」
「大きなワイバーンが何体かいるだけで、
ちょっとしたお祭り騒ぎになります
からね」
そこへレイド君とその妻、丸眼鏡に
タヌキ顔のミリアさんが、娘である
ミレーヌちゃんを連れて来て、
「すごいですねー、さすがレイド兄と
ミリ姉の子……」
「ウチのルードとルフィナはもう、
見るだけで怖がって泣いちゃって」
続いてもう1組の夫婦―――
レイド君並みに長身だが細身の青年、
ギル君と、
童顔の、亜麻色の髪を三つ編みにした、
ルーチェさんが、双子の子供を抱いて
合流して来て、
「おーよしよし。
まあ、普通はそうだよー」
その子たちをラッチがあやす。
これはかつて、王都フォルロワでやった
イベントで、
ワイバーンやドラゴンをもっと身近に
知ってもらい、親しんでもらう目的で……
『食事会』を開催した事があった。
今回はそれを模倣したもので、各種族と
その子供たちに参加してもらい、
実際に自分の手でワイバーンに串などを
食べさせて―――
より親密になってもらうための催しとしたのだ。
(■211話
はじめての じゅうたくじじょう参照)
「そういえば、シンイチとリュウイチは?」
妻2人がそれぞれ抱いている我が子に
私が目をやると、
「あー、それがね……」
「今もこの通り、ずっと寝てた。
何をしても起きなんだ」
家族に聞くところによると、眠っている
息子たちにワイバーンも顔を近付けたり、
頬ずりのように触れてみたらしいのだが、
どうしても起きず、ファーストコンタクトは
失敗したようで、
「ハッハッハ!
さすがお前さんの息子たちだな!
こいつぁ大物になるぜ!」
ギルド長がバンバンと私の背中を叩き、
「そういえばアルテリーゼさんは?」
「ワイバーンと一緒に、元の姿での食事に
参加しなかったんですか?」
レイド夫妻が首を傾げてたずねるが、
「我はまあ、ここの子供たちならだいたい
児童預かり所を通じて顔見知りじゃしのう。
こういうのは機会があまりない者たちが、
やった方がよかろう」
「ああ、なるほど」
「そうですね」
その答えにギル夫妻がうなずく。
確かになあ。
メルもアルテリーゼも児童預かり所には
ちょくちょく顔を出すし―――
公都『ヤマト』婦人会とも顔なじみだ。
シンイチもリュウイチも、婦人会には
ずいぶんとお世話になっているし、
そこの子供たちともその関係で会う事も多い。
今さらと言えば今さらなのだろう。
「それはそうとシン様。
今回のモツ煮、ですか?
ここに来た当初食べていたものですが、
ずいぶんと味が向上したような」
そこへリリィさんが、満腹になった
子供の魔狼たち(人間Ver)を連れて来て、
「おいしかった!」
「いっぱい食べたー!!」
と、彼らも口々に味を賞賛する。
「調味料がふんだんに使えるようになって
きましたからね。
そりゃあの時とは違いますよ」
「トウガラシもピリっと効いて、この寒空の
下では抜群にうまいですよ!
久々の元の姿に戻っての食事でしたが、
なかなかいいものです!」
そして人間の姿になったワイバーンも
やって来て、食事の感想を語る。
歴戦の戦士のようないかつい顔の、白緑の
短髪をした青年、ハヤテさんだ。
「いやしかし、ワイバーンの姿でもうまいものを
食べる事が出来るとは。
もう元の生活には戻れませんよ、シン殿」
続けて、ほっそりとした顔立ちの、黄色い長髪の
青年……
ノワキさんも姿を現す。
するとその姿を見たレイド君とミリアさんの娘、
ミレーヌちゃんが泣きだし、
「ど、どうしたッスかミレーヌ?」
「あの2人と会った時はご機嫌だったじゃない。
どうしたの?」
慌てて夫妻は娘をなだめ―――
「ん?
どうしたルフィナ」
「こっちはすごくご機嫌になったんだけど……
ルードも」
ギル夫妻が双子の息子と娘を見て不思議がる。
「もしかして―――
ワイバーン、イコールこの2人だと認識されて
ないんじゃねぇか?」
そこにジャンさんが入って来て、
「確かにそうかも知れないッスけど……」
「ワイバーンの姿の方が好きなの?
ミレーヌ」
ぐずる娘を困惑した表情で夫婦は見つめ、
そしてそれを私たちは、どんな顔をしたら
いいのかわからず見守っていた。
「う~ん」
屋敷に戻って来た私がうなると、
「??」
「どうかしたのか、シン?」
「おとーさん?」
と、家族に心配され、
「いや、あの時の言葉がちょっと気になって。
アルテリーゼとリュウイチの事なんだけど」
「ん?
アルちゃんとリューちゃんがどうかしたの?」
メルが子供を抱くアルテリーゼに視線を送ると、
「そういうわけじゃないけど―――
アルテリーゼ、リュウイチの前でドラゴンの
姿になった事ってある?」
「む? あるぞ。
お風呂の時とか」
あの大きな浴場か。
確かにそれなら、彼女もこの家でドラゴンの
姿になっても問題はないけど。
「で、その時のリュウイチの反応は?」
「反応……と言われものう。
さすがにあの深い湯舟には入れる事は
出来ぬし、メルっちに預けるか、備え付けの
小さな固定された器に入れておる。
ただその時は湯の中の我に向かって―――
手を伸ばしたり、ママと呼んだりして来るが」
「あ、じゃあちゃんとお母さんとは認識して
いるのか」
そこで私は安心してホッと一息つく。
「あー、ミレーヌちゃんやルード君、
ルフィナちゃんの反応を見て……
ちゃんとリュウイチがおかーさんを
おかーさんとわかっているのか、
心配になっちゃったんだ」
そこでラッチが私の心配事を代弁し、
「あー、そっか。
アルちゃん、人間の時とドラゴンの時、
2つの姿があるもんね。
それでシンが気になっちゃったんだねー」
「なるほど、そういう事か。
安心せい、我が夫。
リュウイチはどちらの姿でも、ちゃんと
我の事を母親と識別しておるでな」
そこで私がうなずくと、やっと家族にも
安堵の空気が広がった。
「『魔力溜まり』浄化装置が?」
『ああ。
ようやく魔界から輸入している石材に対して、
本格的に導入される事になった』
冒険者ギルド支部で魔力通信機を通じ、
ライさんからそう連絡があった。
建設ラッシュに沸くウィンベル王国や各国では、
資源が豊富な魔界から石材を購入していたものの、
魔界は魔力濃度が高過ぎて、そのままでは
素材を使えないという事情があった。
初期は私の能力で『無効化』し、それを使って
いたのだが、
『魔力溜まり』浄化装置により、高濃度の
魔力はそれによる除去が成功。
今後はその使用前提として、どんどん石材を
買い入れるとの事らしい。
「でも、ずいぶんと時間がかかりましたね?
もともと、そういう目的であの装置は
作られていたような」
(■239話
はじめての まりょくだまりたいさく参照)
『まあそう言うな―――
優先順位ってヤツだ。
長年の懸念だった『魔力溜まり』を、
解決する装置が出来たんだ。
そりゃそっちに使う方が先になる。
その存在を知ったクアートル大陸も、
我先にと買い込んだからなあ』
そう言われてみればそうか。
インフラも重要だけど、危険度で言ったら
『魔力溜まり』対策の方が重要だろうし。
「で?
わざわざシンを呼び出したって事は、
何か頼みたい事があるんだろ?」
ジャンさんが先を促すと、
『ああ。
高濃度の魔力を帯びた石材を、安全に
浄化出来る、となれば……
当然、他にも適用出来るのでは?
という話になる。
確かあちらの穀物や食料は―――
魔力が高過ぎてこちらの人間には無理、
という事だったが』
「あ!
つまり『魔力溜まり』浄化装置があれば、
それも食べられるようになる、って
事ッスね!」
レイド君がライオネル様の意図を理解して
声を上げる。
『そういう事だ、な。
それで、だ。
今年の冬は今までにないくらい、食料事情が
安定しているが……
今後の事を考え、一度魔界に出向いて
どんな食料が輸入出来るか見て来て欲しい』
ふむふむ、と私はうなずく。
確かに、魔界からの食料供給ルートがあれば、
天人族のようなケースも間接的に助けてあげる
事が出来る。
なるべくこちらで解決出来た方がいいのだが、
緊急時の選択肢は多いに越した事はない。
「おっ、じゃあ俺も行っていいか?」
『オイオイ、別に魔物を倒しに行けって
言っているわけじゃないぞ?』
ギルド支部長の申し出に、ギルド本部長からの
答えが返って来るが、
「うっせ、別に調査ならシン以外でも
いいだろうが。
要はアレだろ?
あわよくば魔物の群れでも倒して、
食料を調達してくれねぇかなって
思ってんだろ?」
『まあ、そういう側面が無くもない―――
この前も天人族の里でデカい魚釣ったんだろ?
シンならあるいは』
「あれは襲われただけですし、
想定外です!!
そんなしょっちゅうあんな目に
あいませんよ!!」
あってたまるか、と自分でも思ったが、
「まあでも、シンさんッスからねえ……」
「そうなんだよなあ。シンだから―――」
反論しようと思いつつも、今までの出来事を
考えると、完全に否定出来ない自分がいて、
『まあ、冬の間だけでも魔界から何か
購入出来る食料があれば、くらいのモン
だからよ。
一応、期待はしているぜ』
「期待しないでください……」
私は肩を落とし、まず家族に依頼の件を
伝えるため、ギルド支部を後にした。
「あっ、シンさん!
お久しぶりです」
「あ、どうもミッチーさん」
翌日、家族を連れて『ゲート』で魔界へ
来た私たちは、ネズミのような丸い耳と
灰色の髪の魔族女性にあいさつする。
(シンイチとリュウイチは児童預かり所)
「ジャンドゥさんもお久しぶりですー」
「おう、ちょっと世話になるぜ。
―――って、フィリシュタの姿が
見えないが。
やっぱり忙しいのか?」
事前連絡はしていたのだが、魔界王の姿が
見えない事にジャンさんは言及し、
「あれ?
確か『神前戦闘』に参戦すると
言ってましたけど」
ミッチーさんの発言に、私とギルド長は
顔を見合わせて、
「あー……
確か女子枠で参戦してましたっけ」
「鬼人族と一緒に盛り上がっているからなあ。
それはそれとして、スゲー人気なんだよな
フィリシュタ」
私たちが一緒に苦笑していると、
「何でも最近、雪女さんっていう新人が
入ったらしく―――
ライバルが出来たって喜んでましたよ?」
すると今度は妻たちが、
「へっ?
あの人、『神前戦闘』やってたの!?」
「確かにまあ、職業や仕事は自由選択
だったから不思議ではないが……」
「格好も鬼人族っぽいし、確かに入って
いても問題なさそう」
何しているんだ雪女さん。
ていうかあの2人。
「ま、まあそのへんは帰ってから確認すると
いう事で―――
それでこちらの件なんですけれど」
「『魔力溜まり』浄化装置が出来た事で、
こちらからそちらに輸出出来る品目が
増えるかもしれない、という事ですね?
魔界としても、取り引き出来る品が増えるのは
いい事です。
どんどん調査してください」
ミッチーさんがテキパキと書類を見ながら
話を進めていき、
「じゃあこの時期、獲れる獲物とかいるかい?」
「ん~……
そもそも魔界は、地上のように四季がハッキリ
しているわけではありませんからね。
その代わり竜巻やら雷やら―――
自然現象がそちらとは比較にならないくらい、
激しくなる時がありますけど」
ジャンさんの質問に、やや困りながら
彼女は答える。
「って事は、1年を通して獲れる獲物に
変化は無いって事か」
「時折、群れを成して来る魔物はいますけどね。
土トカゲとか」
(■131話
はじめての まもの(まかい)参照)
その答えに妻たちは、
「あれかー」
「懐かしいのう」
「まだボクが人間の姿になっていなかった
頃だねー」
と、ギルド長も含めてしみじみとうなずき合い、
「そういや、ああいった群れはもう
来てねぇのか?」
「いえ、ちょくちょく来ますけど……
さすがに土トカゲのように、万を超える
大群は。
せいぜい100頭いくかいかないかですね。
あれ以来、フィリシュタ様が迎撃部隊を
編成して―――
対応にあたるようになりました」
さすがは施政者。
成功体験はきちんとフィードバック
するんだな。
「おー、公都でも早期警戒っつって、
魔力感知機とか使っているけどな」
「はい、それをウチでも導入しておりまして。
魔物の群れが近付いて来たりすると」
と、その時……
警報音のような音が鳴り響き、
「このように警報が―――
って、何かあったの!?」
ミッチーさんは王城へと走り出し、そして
私たちもその後を追った。
「ミッチー様!!」
「状況は!?
何が起きているの!?」
お城の一角にあるその部屋に入ると、
中には複数の魔導具、そして担当者と思われる
魔族がいて、
「それが……
大群が近付いている、という事くらいしか」
「方角はわかっています!
それにこの速度は地上を走っている
ものではなく、飛んでいるものと。
ですがそれ以上は」
魔導具の画面を見ると、それはすごく
ぼやけた感じに見えて―――
「何でこんなに見えにくいんだ」
ジャンさんが目を凝らしてたずねると、
「も、申し訳ありません。
魔界は地上より魔力が高いので、その」
「あ、悪い。そうだったな」
ミッチーさんの答えに、ギルド長は
バツが悪そうに返す。
そういえばこれは魔力感知機だ。
魔物や人の魔力を発見するために作られた
ものだが、
どこもかしこも魔力が高い土地なら、
そもそもレーダーとして機能させるのは
微妙なのだろう。
「ですが現場確認には向かわせました!
飛行していると思われますので、
目撃情報があれば……!」
するとそこに、その斥候であろう魔族が
飛び込んで来て、
「報告します!」
「何?
何が来たのですか?」
「スカイ・サーペントの群れがおよそ300!
た、ただ―――」
「ただ?」
「その中に1体、バカでかいヤツがいました!
恐らく群れの長かと」
そのやり取りを聞いていた家族は、
「それって大丈夫なの?」
「バカでかい、とな?」
「どのくらいの大きさ?」
と質問すると、
「そ、それが……
恐らくワイバーンやドラゴンの倍は
ありそうな個体でした。
あれくらいですと、フィリシュタ様や
アーゴード様、メレニア様、ジアネル様に
匹敵するほどの者でないと」
そこで私が片手を挙げて、
「防衛は難しそうですか?」
「そうですね―――
防御に徹するのであれば、あるいは」
私がジャンさんの顔を見ると、
「よーし、そのデカブツは俺がもらう。
お前はそこまで案内してくれ。
アルテリーゼ、俺の運搬を頼む。
シン、メル、ラッチは魔族と一緒に、
撃ち漏らしたヤツの処理を」
報告しに来た魔族、そしてアルテリーゼや
各員に指示を出す。
「だ、大丈夫なのですか?
いくらドラゴン殿が一緒とはいえ」
ミッチーさんが不安そうに聞き返すと、
「持ってて良かった♪
ミスリル銀のショートソード♪」
そう笑顔でジャンさんは自分の得物を取り出す。
「わ、わかりました。
誰か!
ジャンドゥさんの護衛を」
そう彼女が支援を口にすると、
「絶対ダメー!!」
「死にたくなければ、彼の前に立つでない!!」
「ガチのジャンおじさんは最強だからね……!」
家族がそれを全力で否定し―――
ドラゴンすら認める実力者に、魔族たちは
畏敬の視線をギルド長に送り……
そしてアルテリーゼを抜かした私たちは、
城下町防衛にあたる事となった。
「じゃあ行ってくるぜー」
「楽しまないでくださいよ。
なるべく一息でやってください」
「努力はする!」
そんな事を言いながら、ジャンさんと案内役の
斥候は、ドラゴンの姿になったアルテリーゼに
乗って飛び立つ。
さて、防衛戦だ―――
と思っていると、
「うわ」
「はりきっちゃって、もう」
「おかーさん、大丈夫かな……」
ボタボタと、およそ体調3・4メートルは
あろうかという、コウモリのような翼を持った
巨大なヘビがあちこちを斬られた状態で
落ちて来て、
「すでに城の上空まで来ていたのですか。
防衛隊に告ぐ!
今飛び立ったドラゴンの後方でのみ、
戦闘を許可する!
深追いする必要は無い!!」
ミッチーさんの指示の下、魔族たちが動き出し、
「じゃあ私も―――
この城を中心に半径100メートルほど。
上空も含み……
・・・・・
ヘビが翼を生やし飛ぶなど、あり得ない」
私がそうつぶやくと、またボタボタと
スカイ・サーペントとやらが落ちて来た。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
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