202・はじめての てんぐ
|д゜)年越しも通常更新だが?
(予定が無い)
「……んっ?」
「む?」
「お?」
「んー?」
森の精霊様が住んでいた森の、『魔力溜まり』を
無効化させた後―――
私たちは近くで待機していたケンタウロス族の
二人のところまで戻って来たが、
そこでは族長のロナトさん、それに道案内を
務めた若者が跪いていた。
「あのー……?」
私が声をかけると、彼らは顔を上げずに口を開き、
「氷精霊様。
『魔力溜まり』、浄化させる、奇跡―――
この目でしかと」
「今までそんな精霊様、いなかった。
氷精霊様に会えた、幸い。
我が部族の歓迎、ぜひとも」
どうやら、『魔力溜まり』を解決したのは、
氷精霊様のおかげだと思っているらしい。
間違われたミドルショートのホワイトヘアーを
した少女は、戸惑いながら私たちの顔を見るも、
私、それに妻二人も……
この能力についてはトップシークレットなので、
『そのままで』という表情しか返せず、
「わかった、なの。
あなたたちの歓迎を受けますの」
こうして私たちは、帰りも彼らの宴に付き合う
運びとなった。
「他にも精霊様が?
土精霊様の他、水精霊様、風精霊様も?」
「その土地、まるで、精霊の国」
「ぜひとも、その精霊様も、この地へ。
歓迎させて頂きたく」
ケンタウロス族の宴会で―――
私たちの公都『ヤマト』の話題となり、
精霊たちの数に驚かれ、
「まー、他にも人間以外の種族がたくさん
いるからねー」
「我のようなドラゴン、ワイバーン、魔狼、
獣人族、ラミア族……
羽狐に人魚族、ロック・タートル、果ては
ゴーレムまでいるところだからのう」
アジアンチックな妻と、欧州モデルのような
プロポーションの妻の説明にどよめきが広がり、
「各地・各国から留学生も受け入れていますし、
ロナトさんたちからもどなたか―――
いかがでしょうか?」
私から族長にそう提案してみるも、
「興味ある。
しかし、我が部族、遊牧の暮らし、する。
おそらく一ヶ所にとどまる、ない」
常に土地を移動し続けているという事か。
確かに集落を見ると、いつでも移動出来る事を
前提とした、簡易な作りの住居が目立つ。
しかしそうなると、精霊様を彼らに会わせるには
いちいちここまで連れて来なければならないと
いう事に……
そこまで考えた後、ふと疑問が頭をよぎり、
「出会った当初、大地の精霊様とか言って
ましたけど―――
ここには精霊様はいないんですか?」
私の問いに、こげ茶の髪を馬のたてがみの
ようにした族長は、
「精霊様、どこにでも、いる。
だが、強さ、違う。
『魔力溜まり』を浄化するほどの、精霊様、
大精霊様以外、いない」
大精霊様?
何か新たなワードが出てきたけど。
私が氷精霊様の方へと向き直ると、
「う~ん……
確かに、大精霊の存在は知っているけど。
でもそこまで生きているのは珍しいの。
確か千年くらいの時が経たないと―――」
彼女の答えに、
「え? じゃあ公都にいる他の精霊様たちも?」
続けて出た私の言葉に、氷精霊様は首を左右に
振って答える。
「んー、そこまで生きた精霊はあの中に
いないと思うの。
わらわもまだ500年以上は生きていない
だろうし、他の精霊たちも同じくらいなの。
多分一番年上は、風精霊なの」
「えっ、あの子が?」
「見た目は、10才かそこらの人間にしか
見えぬのじゃが」
メルとアルテリーゼが驚きの声を上げる。
「それでも、せいぜい7・800年くらいだと
思うの。
わらわも、存在は感じた事があるけど、
直接出会った事はないの」
「千年の時……
我ら、想像、つかない。
『魔力溜まり』、吹き飛ばすほどの力。
それでも、大精霊様、ない」
「やはり、精霊様、偉大」
「今後も、この地、来る。
我ら、歓迎する」
そうして彼らは次々と料理や飲み物を振る舞い、
私たちはそれにひたすら対応した。
「ははあ、なるほど。
大精霊様ねえ。
しかしその子が『魔力溜まり』を―――
いや大変な事だよ、こりゃあ」
翌日、ランドルフ帝国帝都・グランドールに
戻った私たちは、まず冒険者ギルドを訪れ、
そのトップに事の顛末を報告した。
「あれって、どうにかなるモンなのか……」
『月下の剣』リーダーである、ブラウンの短髪に
ハチマキのように布を巻いた青年が感想を述べ、
「自分の故郷でも話を聞いた事がありますが、
対処方法は『逃げる』、ただそれだけです」
「そうじゃなくても、『魔力溜まり』に
あてられた動物や魔物が狂暴化しますから、
まず近付く事が出来ません」
同じく『月下の剣』のメンバーである、
獣人族の兄妹が続く。
「しかし大精霊様、か。
千年を生きた精霊様だって?
いや、シン殿は本当に興味深い話を
持ってくるねえ」
「こちらで聞いた事はないんですか?」
私がギルドマスターであるベッセルさんに
聞き返すと、
「いろいろと書物を読むからね。
存在くらいなら、そりゃまあ。
エルフ族の崇拝対象だし、ちょっと物知りの
人くらいなら知っている程度かな」
シルバーの短髪の彼はそう言って、自分の耳を
引っ張りながら語る。
恐らく、エルフの長い耳を模しているの
だろうが……
「エルフ―――
もしかして、帝国にいるんですか?」
かつてジャンさんからその存在を聞かされ、
知ってはいたが……
(■142話 はじめての どわーふ参照)
帝国内の人間からその名前を聞いて、思わず
質問する。
「何ていうか数が少なくてね。
それに、まず普通の人間なら人生で一度も
会わないだろうよ。
もともと数が少ない種族だったらしいし、
まあ寿命が長いから、物好きなら人間に
溶け込んで暮らしているかもね」
軽い感じで返してくるが、なぜか氷精霊様は
そんな彼をじーっと見つめていて、
「ん? 氷精霊様。
どうかしたかな?」
「ううん、何でもないの」
彼女はふるふると首を左右に振り、
「疲れたのかも知れませんね。
では、あの森の精霊様は無事故郷に戻る事が
出来ましたので―――」
そもそも、こちらも関わったのでその件は
解決した事を報告しに来たのだ。
「では、私たちはこれで」
「大使館にいるのかい?」
席を立つと同時にギルドマスターから聞かれ、
「ええ、そうです。
もし何かあればそちらまで……」
「はは、シン殿に頼むほどの事がそうそう
起きてはたまらないけどね」
ベッセルさんが苦笑すると、
「まあそれは確かに」
「違いない」
「では、わたくしたちもこれで」
と、『月下の剣』パーティーと一緒に、
ギルドマスターの部屋を後にした。
そしてその後、一人残った部屋の主が天井を
見上げ、ため息をつく。
「あ~……
バレちゃった、かなあ?」
その姿は普段の中肉中背の男の姿ではなく、
耳の長い、華奢な女性のような『エルフ』の
外見になっていた。
「正体を隠している事、悪く思わないで
欲しいなあ。
今のところ、敵対するつもりは無いんだし」
ベッセルギルドマスターはそうつぶやくと、
ソファの上に腰を下ろした。
「そういえばエードラム君。
実家での『神前戦闘』の準備とかは
どうなっていますか?」
「あー、大方は出来上がっているっぽい。
ただ伸び縮みする『ロープ』?
それが何なのかわからないみたいで」
「あれはちょっと特殊な素材でして。
今度、帝国に来る際に手配しましょう」
そこでビルドさんも話に入って来て、
「しかしあれは、獣人族だけでやっているの
ですか?」
彼もあの映像記録用の魔導具で、PVを見た
一人だ。
しかも同じ種族だから、なおさら興味が
あるのだろう。
「今のところはそうですね。
ただ、神に捧げる性質のものなら、
他の種族もそれなりにあるとは思います。
現に鬼人族にも似たような文化があると
聞いています」
「そういえばあのカキという貝ですか?
どうもギルドマスターが大量に買い付けて
いるようでして」
そう男性陣はとりとめのない会話をするが、
「だから口と一緒に舌も使うんだよ」
「それにクエリーは胸がそれなりにあるの
だから、いろいろと使えるはずぞ?」
「そ、それはなかなか……」
いつの間にか女性陣は少し離れてついて
来ており、女性職員らしき人たちも加わって、
私たちはそれを聞こえていないフリをしながら、
本部入口へとひたすら歩いた。
「……とまあ、こんな感じでした」
「お、おう。まあ、ご苦労だった」
公都『ヤマト』の冒険者ギルド支部の長が、
複雑な表情で答える。
帝都グランドールの冒険者ギルドを出た後、
私たちは大使館でラッチと合流―――
ティエラ王女様に事情を話し、
そして『ゲート』を使ってウィンベル王国へと
戻り……
報告のためそこの冒険者ギルド支部へと
来ていた。
報告は一人でよかったので、妻たちは
そのまま自宅へ、氷精霊様も公都の中へ
ふらりと入って行き、私だけがここへ
来たという感じだ。
「でも大精霊様ッスか。
いや、驚くところなんでしょうッスけど」
「でも人外は今、これでもかというほど
身近にいますからね……」
褐色肌の青年と、その妻であるライトグリーンの
ショートヘアの女性は、ため息にも似た息を吐く。
「まあ今のところ忙しい件と言えば―――
『はろうぃん』の開催と、それが終わったら
留学生組が各国に里帰りするくらいだな」
ジャンさんがペラペラと書類をめくり、
「里帰りはワイバーンたちも増えたし、
問題無いんじゃないッスかねえ」
「ダメよ。あなたの『ハヤテ』、『ノワキ』は
ギルド所属のようなものだからともかく、
本来は防衛戦力としているんだから」
レイド君の意見をミリアさんがピシャリ、と
注意する。
「あ、そういえば子育てが一段落した
ドラゴンたちが来ていませんでしたっけ。
彼らに頼めば……
ある程度数は確保出来るのでは」
(■175話
はじめての がいこうせんりゃく参照)
その言葉に、ギルド長は笑顔で私の肩を叩き、
「そうか、頼まれてくれるか」
「えっ」
困惑する私にジャンさんは続けて、
「いやぁまあ、俺もそれは考えていたん
だけどよ。
やっぱこういうのはお前の口から言った方が
いいような気がしてな」
「基本的に、人間というよりシンさんに恩義が
あるッスからねえ」
「ドラゴンの奥さんもいますし―――
話としてはシンさんの方がスムーズに
進むのでは、と」
父親と息子夫婦のように、彼の次に次期ギルド長
夫妻が続いて、プレッシャーをかけてくる。
「はぁ……わかりました。
他には何かあります?」
元はと言えば自分が関わった案件だしなあ。
そこでギルドメンバーが顔を見合わせ、
「そうだなあ。
公都に来た鬼人族だが、ここらで食材探しを
したいとか言ってたぜ」
「確かにここら辺でも、彼らの知っている食材が
調達出来たら便利ですね。
わかりました。
取り敢えず、ドラゴンの方々に声をかけて
みますね」
こうして新たな依頼を受け―――
私は冒険者ギルド支部を後にした。
「で? どうなったの?」
「公都に来たのは夫婦2組だったんだけど、
快く承知してくれたよ。
ただ『乗客箱』は予備が1つしか無いから、
これを機に増やしておこうと思う」
夕刻、自宅に戻ると食事をしながら情報を
共有する。
まずはメルの質問に答え、
「そんなに簡単に出来るものなのか?
あの『乗客箱』は」
「ピュウ」
続いて出たアルテリーゼとラッチの疑問に、
「それほど特別なものじゃないよ。
元々は馬車の荷台からの流用だし。
流通も盛んになっているから、『はろうぃん』
明けには間に合うんじゃないかな」
実際、公都はひっきりなしに馬車が行き交う
状態となっている。
人や物資の交流が、ひと昔前とは比べ物に
ならないくらい増加しているのだ。
そして当然、馬車を作ったり直したりする
仕事も、安定して増えており……
「そういえば、パック夫妻にあの事は?」
「それなら我から説明した。
森の精霊様は無事、故郷に戻ったとな」
「どちらかと言うと大精霊様というワードに
異常に目を輝かせていたよーな」
目的は達成されたと彼女たちに伝言を頼んで
おいたのだが―――
確かに研究・学者バカの二人が食いつきそうな
ニューワードだ。
まあいくら何でも精霊様たちに手出しは
しないだろう。
しないと思う。
しないんじゃないかな?
「そういえばシン、鬼人族の食材探しに
付き合うって話は?」
「鬼人族だしなあ。
この近辺なら、多分彼らだけでも大丈夫だと
思うんだけど……
以前、パチャママさんが羽狐たちがいた山に
行った事があるだろ?
そこに興味を持ったらしくて」
「あそこか―――
桃、梅、栗もあの山のものであったな。
これは期待出来そうだのう」
「ピュッ!」
そして話題が鬼人族の食材探しに移ると、
妻たちも新たな味覚の発見を予想し、
目を輝かせる。
「ああ、テン君の里帰りも兼ねているから。
明日は私も一緒にあの山へ行く事になると
思うよ。
パチャママさんを見た彼の両親も、特に
敵意は感じなかったけど……
一応、同行する形でね」
今回行くのは大人の鬼人族。
なので、念のため私も同行する。
日本の縁があるっぽいとはいえ、友好な
関係ばかりでも無いからなあ。
他、『はろういぃん』や各国の留学組の事などを
話しつつ、夜は更けていった。
「父様! 母様!」
「おお、テン。元気にしていたか?」
「すっかり寒くなってきましたし、風邪を
引かないようにね」
翌日、昼過ぎには羽狐たちの故郷である山に
到着し、
山の主夫婦とその子テン君が再会を喜んでいた。
「そちらの方々が鬼人族ですか」
「確かに、ずいぶんと大きな方々ですね」
白い短髪の、平安時代のような衣装を
まとったアラサーくらいの男性、
そしてやや灰色に近い白色の長髪を持つ
女性が、二メートルはあろうかという
亜人たちに近付く。
「以前、パチャママ様がお世話になった
ようで……
長に代わり御礼を申し上げます」
「この度は、ここに我らの故郷に似た、
山の幸があると聞いて来ました。
どうか探索と採集を許可して頂きたく」
鬼人族たちも礼儀正しく対応する。
「これはご丁寧に」
「こちらこそ、テンが大変お世話に
なりましたわ。
今後もどうかお付き合いのほどを」
そういえば、パチャママさんもテン君も、
ある意味トップ同士の子供なのか。
そこで私も会話に加わり、
「どうでしょうか、最近は」
「いたって静かなものですよ。
冬眠する動物たちもちらほらと出てきて
おりますしね」
「そういえば、人間の方の奥様は
いらっしゃらないのですか?」
山の主の妻の方の指摘に、
「ええ、ちょっと今日はお留守番です」
これには事情があり―――
いつものメンバーであれば当然メルも
ついてくる予定だったのだが、
今回は鬼人族が数名参加しているのだ。
当然、重量もそれなりに増加し、
さらに食材を持ち帰るとなると、必然
『乗客箱』の搭載量を減らすしかなかったの
である。
「では取り掛かりましょう。
あ、あとこれが鬼人族の方々が作った
料理で……」
「ソバやウドンとかがすっごく美味しく
なったんだよ!」
小さな獣耳がちょこんと頭の上に乗っている
以外、人間と変わらない外見の少年が、
彼らが来た事による変化を語る。
そして鬼人族たちは荷物持ちの冒険者たちと
共に、山の各所へ散っていった。
「そういえば、ここも雪は降るんでしょうか」
「たまに降らない年もありますが―――
まあ大方、降りますね」
「もう少しすれば、一面の雪化粧がここで
見られるようになるでしょう」
私が山の長夫婦と語り合い、
「ラッチちゃんいないのー?」
「今日はメルっちと一緒にお留守番じゃなあ」
アルテリーゼが、長夫婦の子供をあやしながら
膝上に抱く。
私たちは『乗客箱』の中で待機しつつ、
歓談していた。
さすがに外で……というのはキツイ。
「失礼ですが、何か建物とかそういうものを
作ろうとは思わないのですか?」
私がそう話を切り出すと、
「もともとは獣の姿でしたから」
「基本的には土中の穴が住処です。
私どももどちらかというと、そちらの方が
落ち着きますので」
長夫婦がそう答えると、
「えー! 絶対家があった方がいいよ!
お風呂とかトイレとか」
テン君が会話に割って入り主張する。
「まあ、普段人の姿をしておらぬのなら、
必要でもあるまいが」
ドラゴンであるアルテリーゼが、擁護気味に
話すも、
「いえ、あくまでもこちらの都合で―――
あつかましいかも知れませんが、
そういう施設があった方がいろいろと
人間としては便利なのです。
誰かがケガをしたり急病になった時、
緊急の避難先にもなりますしね」
それを聞いたテン君のご両親は顔を見合わせ、
「ふむう。まあここは山深い場所でもある。
空からでも無ければ来られぬだろうし」
「人の手が入る事に抵抗はありません。
テンもお世話になっておりますし……
それにテンの今後を考えると、そういうものが
あった方がいいかも知れませんね」
長夫婦は同意に傾き始め、
「我らドラゴン族も、次の世代は積極的に
人間に関わらせようという者が増えておる。
どうせ冬はそんなに動けぬだろうし、
ゆっくりと考えてくれい」
そんな事を話していると、『乗客箱』の窓に
強風が吹きつけ、
「ずいぶんと風が強くなってきたなあ」
「外の者たちは大丈夫であろうか」
私の言葉に、長が同調するように窓の外を見る。
しかし、そんな心配を加速させるかのように
強風は吹き続け……
「あなた、ずいぶんと長い風ですね」
「うむ。この時期珍しくは無いのだが―――」
しかし強風は止む事なく、むしろその強さを
増しているかのように窓をガタガタと揺らし、
「ちょっとこれは……」
「うむ。いくら何でもおかしいぞ?」
さすがにこれ以上風が強くなると、『乗客箱』を
ひっくり返される恐れが出て来る。
私とアルテリーゼがいったん外へ出ると、
そこへ食材探索に出ていた鬼人族たちが
目に入った。
「どうしました!?」
「シン殿!
あ、あれを!」
そう言って彼らが指差す方向―――
それは斜め上、つまり空を示しており、
そこには山伏のような格好をした何者かが
宙に浮いていた。
「なぜ鬼がここにいるのだ!!
数百の年月、姿を見せなかったというのに!
今さら我らの地を侵しに来たか!」
葉団扇のようなものを持っており……
それを振る度に風が吹き荒れる。
特徴はどう見ても日本の『天狗』だ。
もっとも鼻は普通のようだけど。
「言葉はわかるっぽいが、話が通じない!」
「この地に来るのは初めてだと説明しても、
聞く耳をもっていません!」
強風に飛ばされないよう、鬼人族がそれぞれ
何人かの冒険者を抱くようにかばっている。
「ハーピー? でもなさそうだが」
「とにかく止めよう!
アルテリーゼは鬼人族たちを頼む!」
まず彼女がドラゴンの姿に変身し、彼らの
前をふさぐように天狗に立ちはだかる。
「ぬぬっ!?
まさか南蛮の龍か!?」
突然のドラゴンの出現にはさすがに驚いたのか、
一瞬風が緩み、
その間に私は空へ向かってつぶやく。
「片手で振って、人を吹き飛ばす―――
・・・・・
そんな道具や団扇などあり得ない」
その途端に風は止み、ようやく静寂が
戻ってくる。
「こ、今度は何だ!?
風が出ぬ!!」
私はアルテリーゼの方へ振り向くと、
「アレを落とす。
受け止めてくれるか?」
「任せるがよい」
混乱しているところに追い打ちをかけるように、
さらに私はつぶやく。
「魔力だろうが何だろうが……
科学的・人工的な推進力をもたずに
空を飛ぶ事など、
・・・・・
あり得ない」
「……えっ!?」
という叫びと共に、天狗は宙でのコントロールを
失い、真っ逆さまに落ちていく。
同時にアルテリーゼが飛び立ち、それを空中で
キャッチすると―――
私のもとへと戻ってきた。
「え? 女性?」
落下時に気を失ったのであろう『天狗』は、
地面に力なく横たわり、
そしてその胸は明らかに男性とは異なる事を
意味していて、
「と、とにかく中へ運びましょう」
彼女を介抱するため、みんなで『乗客箱』の
中へと運び入れた。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
本作品は毎週日曜日の16時更新です。
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