金策とレベル上げ
イアンの周りではめぼしいモンスターもいないので少し離れて戦う4人。
経験値はラストアタック者に10%ボーナスが入り、残りは等分されるので、レッドドラゴンを倒したケンはレベルが3人より高く戦っていない。
ケンとナホは馬車の中で寛いでる。
「なぁ、ナホの願いで50年前の地球に戻るって出来るか?」
「ケンのことだから魔法で試したんでしょう?それじゃ私には無理ね。ケンの時魔法で出来なかったなら私の願いでも不可能だわ。対象を50年戻すなら簡単よ、でも世界の時間逆行は悪魔や天使レベルじゃ無理よ。
最初から3つ分使えば可能だったかも。"悪魔"でもだけど」
途端にケンの表情が変わる。
「つまんねー。アンジェと交代な。暫く馬車に近寄んなよ」
「何よ!出来ないことは出来ないの!何が悪かったのさ!言ってよ!いつものお願いみたいに!」
「じゃあ勇者召喚の特性付きの人間になれ」
「はっ?何よそれ?意味わかんない」
「俺と同じ体質の身体にナホがなれって言ってんの!出来ねーならアンジェと交代な」
「じゃあそれ説明してよ」
ケンは1つ1つ説明した。年を取らない、言語理解等など。
「えっと、悪魔の身体でそのまま勇者にって、一回では無理ね。
ちょっとずつ変えなきゃ悪魔として願いを叶えることが出来なくなるわ。そうなると結構願いが減るけどいいの?」
「ホントか?出来るなら早くしてくれ!願いなんて100使ってもいいから!」
「そんなには使わないわよ。どうしたの?」
「……」
ケンの必死な顔に負けて無言で少しずつ身体を変えていくナホ。
人間の身体になり不便そうな感じだけど、さっきと打って変わって嬉しそうなケンにどうでも良くなるナホ。
(人間ってこうなの?ケンが特別なの?えっと、他の人間は、あれ?ケンが初めてのターゲットだわ。その前の記憶が朧げだし……)
情緒不安定なケンと自分の記憶に疑問を抱くも、お前はできる子だと思ってたと頭を撫でられて我に帰る。
「私は犬か!」
「よし。気分良いな!
おーい!2人共お前らの主がどれだけ凄いか見せてやる。行くぞナホ」
奴隷アリサは不機嫌だ。今の主人に不満はない。むしろ最高で愛してる。
優しくして貰って嬉しいけど、結局良いところはあの女が持っていく。あの女が嫌いだ。
「大丈夫よ、アリサもしっかり愛されてるわ」
アンジェにも嫉妬があるけど、何故か嫌いになれない。私のお世話してくれてるし優しいからかな?
でも私はアンジェとあの女みたいに主人と寝れない。何故?
言ってくれれば何でもするよ?
「ナホ。手加減のスキルを付けてくれ。ラストアタックはナホの仕事だ。さっきの反動でレベル1だしステータス軒並み下がってるぞ」
「うわ。本当じゃない。しっかりと守ってね」
大丈夫。常にナホにはスライムのボディーガードがいるから。
サイクロプスやオーガを見つけては瀕死にしてはナホに強化魔法をかける。
よし、レベルも上がってるし、伸び率も悪くない。
最後は皆で狩りまくってギルド中を驚かして宿屋に戻るか。
「明日からそろそろセドンの町へと向かうか」
「はい。御者は私アンジェにお任せください」
「はい!アリサもします!」
「そうか。2人共頼んだ」
ケンの言葉に顔を曇らせるアリサとそれを見逃さず睨むナホ。ケンの手前喧嘩はしない。
「あの、御主人様。アレスター様には挨拶はなさらないのですか?」
アンジェがケンの知らない人の名前を言ってきた。
そこへナホが助け舟を出す。
「ああ、武器屋の店主ね。全員の装備作って貰ったし挨拶は必要かも」
「別に俺の時空魔法で今までに訪れた場所は好きに行けるんだ。アンジェの弓だって矢の補充したりしなきゃいけないんだし。あえて挨拶はする必要ないだろ」
「かしこまりました。余計なことを申し訳御座いません」
「いや、アンジェも奴隷としての罰則はなるべく無くしてる。何か意見があれば2人共どんどん言ってくれ」
「「ありがとうございます」」
ケンに掴みながら私は意見言っちゃダメなの?とまくし立ててるが、ナホは好きに言うだろと切り捨てた。
イアンの町を出て2日。アリサが御者をしてアンジェが見張りをしてくれてる。
「本当に御主人様の馬車は凄いですねアリサ。馬もゴーレムで出来ていて、内装はホテル以上の作り」
そんな話をしてる時にケンとナホも会話をしていた。
「ねぇ?今までに行った場所に行けるなら故郷に戻らないの?」
「とっくに戻ったさ。レッドドラゴンを倒してから上がった能力を使ってな。けど俺の生きてた時間じゃなかった。
丁度母親の葬式だったよ。葬式ってわかるか?」
頷いて話を促すナホ。
「弟は禿げててさ、親父も死んでたよ。家はボロくなってるし。もし、ナホと会った時に命と引き換えにしてれば家族と会えてから死ねたんだ。俺って馬鹿だろ?」
「そんなこと」
「なんで俺が今までナホに故郷へ戻りたいって願いをしなかったかわかったか?もう試したからだよ。居場所のない日本に戻りたくない。この旅は俺の居場所、居ても許される場所を探したいんだ」
ナホが慰めようとするがケンはそれを拒否をした。
「別に同情してほしくて話したんじゃない。ただ何が目的か聞きたがってたから話しただけだ」
「そうなの?本当にそうならお願いしたら?」
少し挑発するように返すナホにイラッとしてお願いをする。
「お願いだ。同情なんてしないでくれ」
わかったわよ。その返事を聞いて安心したような残念な気持ちになる。
そんな気持ちを裏切るようにナホは慰め始め、ケンが言って欲しかったであろう言葉をかける。
「ほら、同情なんかじゃなかった。初めてケンに口で勝てたわね」
「悪かったな。八つ当たりで俺と同じ身体にして。日本に戻るには俺は死んだ人になってるし、こっちで俺は1人だと思ったらついな。今お願い使ってもど」
「別にいいわよ」
「それって悪魔としてどうなんだ?」
「お願いをしてそれを消してって私は好きじゃないの。それに今の私は悪魔じゃなく勇者でーす。ケンと一緒のね。」
自分で言ってて何故そんな言葉が出たかわからないナホ。願いを消費するチャンスを自分で振ったのだ。それでもいいと思うのは今が楽しいからだろう。
「浦島太郎は幸せになれたんだっけかな……」
「何それ?いや、なんか私知ってるわ。あれよね?
おしっこに漬けたー、キビダンゴみたいな」
「色々とちげーよ!でもありがとな。ゆっくりと居場所探しでもするから付き合ってくれよ」
「メーテルリンク」
「ん?何それ?」
「は?何が?」
「メーテルがなんとかって」
「言ってないわよ。気のせいよ」
実はこの拙い文で2作品目です。
話が気になった方はブックマークやレビュー、感想等を貰えると励みになります。
誤字脱字多いので指摘して貰えると助かります。
処女作、常識チートは非常識も良ければ閲覧お願いします。