勃発
油断。そこにいる全ての人がしたであろう瞬間だ。
しかし、刹那にも満たない時間。最初に気がついたのはケンだ。
ケンが気付いたのとほぼ同時にオルフェスとセキシンも気が付いた。
「タリックス!すぐに離れろ!!」
間に合え!ケンはその思いを魔法に込めてタリックスに移動魔法をかけ、オルフェスは自分が的になるように2人に向かい走り出す。セキシンはマジックバックから煙幕を取り出し投げつけ視界を封じようとした。
アルの背中から腕が生え爪を尖らせ脳天目掛けて突き刺そうとした。
まずは1人。アルはそう確信した一撃は空振り、煙幕が無くなり見えたのは、オルフェスとその後ろから迫りくるケンであった。
「前にいたんだよ!身体を自由に操作出来る魔族がな!身体に刺さる前に穴を空けたんだろ?」
「うん。君は魔族の特殊能力を自由に使えるんだね」
「もしかしてその仕上げがその1人を取り込むことかい?済まないねぃ。もう焼却しちまったよ」
「魔族は消毒だー!ってね。まさか私がこれ言うなんて思ってもみなかったわ」
「済まない!助かった!」
「心配したの!」
1対9の戦いで自分の予想より下の結果になった今回の襲撃。それでもアルは笑みを浮かべている。
セキシンの指示によりナホと元奴隷達は後ろへ下がり援護に回った。
そう簡単に死なないだろうと考えてケンやマオは前衛で戦ってもらう。トドメはオルフェスか3人がかりの銃を使えばいい。そう判断した。
「くぅっ!猪口才な!」
「うん。君の一撃に耐えれる2人を掻い潜って他の人を攻撃なんて出来ないだろ?」
オルフェスの宣言通りお互いに有効打は与えれないが、明らかに分が悪いのはアルの方だ。
「調子に乗るなよ!」
ケンとマオの攻撃を躱すことを諦め、回復魔法を使いながら2人の攻撃をわざと受け、その瞬間にオルフェスへと走り出す。
マシフのように腕を背中から2本生やし、4ヶ所同時攻撃を仕掛けると、アル自身予想していなかった全部当たるという結果になる。
しかしオルフェスは吹っ飛びもせずにアルへと話かけてきた。
「うん。騙されたね。一晩耐久力あるの僕なんだ。そしてこれはケンの国ではパイルバンカーって言うらしいよ?」
2本のパイルバンカーを取り出しアルの足に打ち込む。これは身体操作する時間もなく食らった。
「別にこんなのすぐに抜けれる」
「お前さん魔族の特殊能力使おうとすると動きが止まるの自覚してるかい?俺にとっちゃバレバレだねぃ」
オルフェスが後ろ受身をすると銃を構えたセキシンがいた。すぐに避けなければ!そう思うも左右同時に頭部へと衝撃が来た。
ナホの移動魔法によりフラセとシアンを配置して親子による同時射撃だ。
「今度は外さん」
再びタリックスによる槍の突きを腹部に食らうアル。本来ステータスで全て上回っているはずなのに手も足も出ない状況に苛立ってくる。
時間稼ぎをしなくては!そう思い自分しか知らないであろうことを喋り始めた。
「勇者召喚は私が教えたものだ」
「うん。目的がバレバレだね」
「時間稼ぎかい?でも手を休めたりはしないねぃ」
ヒュゥというエオルス音がしたと思ったらアルの両手両足がスルリと切れた。
「ケンの必殺剣。秘剣その参、円月剣」
胴体が地面に落ちる前にマオの蹴りで上へと飛ばされる。
「マオの綺麗で可愛くて小さな足で蹴られて幸せなの!」
「本当に羨ましい限りだ」
コイツはただ本音を呟いただけだった。
落下しながらアルは考える。
自分の何がいけないのか。望みもしない誕生に祝福されない生い立ち。創造主に見放され、憎しみ、嘆き。何かに縋らないと正気など保てなかった。
なんでコイツらは無理矢理異世界に呼ばれて幸せそうなのだ?何故魔族という人間の上位種に立ち向かい勝てるのだ?
コイツらと自分は何が違う?どんな手を使ってでも創造主に文句を言ってやる。その願いすら、生きる目的すら否定されなければいけない?
何故頑張ってるのに邪魔をする。何故?
どのような手でもか……
「分かった。契約しよう。私にできる限りの強さを。そしてあの空間のゲートを開いてくれ。後は私が死んだら好きにすればいい」
ドサリ。アルが地面に落ち、アリサがトドメを刺そうとしたときにソイツは現れた。
この中で知っているのはアルの他ただ1人。ナホだ。
「オッケー。2つの願いは叶えた。死んだときにはよろしくな!俺と同僚の魂がかかってるからさ」
悪魔だ。ナホが呼び出し悪魔の道へと誘った者がアルと手を組んだ。
「あっ!あの時の!」
「ふはははは。素晴らしい。この力があれば誰にも負けない。どうだお前たち、得意の鑑定とやらをしてみるがいい」
名前:アル
種族:原始の魔族
職業:魔王
年齢:350
LV:???
HP:5000000
MP:5000000
STR:5000000
VIT:5000000
INT:5000000
RES:5000000
DEX:5000000
AGI:5000000
ユニークスキル:勇者取込み
自分の手で殺した勇者のスキルを持つものを取込み自分の力にすることが出来る。その数に限りはないが自分が殺された場合勇者は取り込めない。
実はこの拙い文で2作品目です。
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