戦争中
「ラーさん!アイツらの勢いがなくなってきたぞ!」
セドンの冒険者ギルドマスターであり、この戦争の総大将オーディから戦況の報告があった。
これから考えられることは、ケンとナホ。そして私の娘が入ってる勇者の盾の作戦が上手くいったのだろう。少なくとも王都からの援軍は暫くは来ないと見て良さそうだ。そして。
「なぜ後ろでふんぞり返るように言ってたのに、最前線の状況を伝令より早く私に伝えられるのですか?」
「いやな、ケンのとこの奴隷娘達が手柄が欲しいって言うから色々頼んだら強いわ役に立つわでな」
はあ。と自分でも思いがけない程の溜息をついて理解する。オーディは若くしてギルドマスターになったので血気盛んなのはわかる。半分は私がお膳立てしたような物だし。いや、私も十分若いつもりはあるのですが。
ケンは王と魔王の暗殺をする代わりに国を取ったら生涯奴隷の扱いを法律から変えてくれと私に頼んだ。
彼女達が何もしなくてもケンと対等になれるし自由の身になれる。
つまり彼女達がやってることはケンの思惑ではないと思っていい。
ちなみに生涯奴隷とは借金又は犯罪等によって落とされる等級の中で1番重く、二度と奴隷以外の職種に就くことは、現時点では許されない身分である。
処分以外に使い道がある重犯罪者、普通では返せない程の借金や口減らし、そして違法奴隷だ。
奴隷の首輪を着ける際は目的に応じて決められたルールに従わなければいけないが、それを破る者がいるのは世の常だ。その中に犯罪者等を違法奴隷に紛れさせ奴隷を解除させようと企む者も後を絶たず、違法奴隷も等しく生涯奴隷として扱わなければいけない。
魔法がある世界で調べようと思えばいくらでもやりようはあるのだが、こちらの方が国の利益になると判断され取締は緩いのだ。
「オーディ。もし王都がケンや勇者の盾の手によって陥落したとしたらこれ以上攻めますか?」
オーディはその質問に鼻で笑い即答した。
「決まってる。これ以上ない好機だ。守りに徹するしかないだろ!」
正解だ。私達がやってるのはあくまでもより良い国を目指すためだ。現王の膿は取り除くが国や市民を疲弊させるつもりはない。
勇者の盾には奴隷の首輪をかなり持たせている。現王に着けさせそれを周知の事実にするだけで基盤を崩壊させる。
オーディは決して馬鹿ではない。真っ直ぐで考える前より身体が動いて思慮が少し足りないだけなのだ。
いや、それってやはり馬鹿なのでは?と思い始めた所で切り替える。
「あとは向こうの白旗待ちですね。最後まで気を抜かずやりましょう」
「そうね、父から言われてるのは、まず捕虜としての王族達を民衆に見せ演説させることよ」
「では犯罪者用に着けたのではなく、捕虜としての確認は俺がやろう」
「ごめんね、ロウフン」
あくまで犯罪者は犯罪者、借金奴隷は借金奴隷。そして捕虜は捕虜。同じ奴隷の首輪を着けてても、扱いを変えないと周りは納得しない。そのためにはどのような経緯と扱いを受けたかを第三者に審議してもらい正当性を民衆に見せる必要がある。
クリーンで前王とは違う国を作るのが目的なら尚更だ。
そのため敢えて嘘を付き、罰則で首が絞まる機能を作動させなければいけないのだが……
「あれはかなりキツい。女性がやるべきものではない。リントンはケロッとしてそうだ。そうなると俺しかいないだろう」
流石のリントンでも首が絞まって無事ではない。だけどもしかしたら……
そんな考えがパーティーに流れる。もちろんリントン以外だ。
「このようなことしてタダで済むと思ってるのか!?我は王ぞ!」
「急に元気になったわねコイツ」
「今までYo!そっちがやってきたことをThinkすればタダで済まなかったこの状況当然じゃlike a?」
そもそも魔王と同盟を結び魔族との繁殖のため王都で虐げられてる市民を差し出し、あまつさえ国の繁栄を確信して世界征服を企み、後の国王。つまり自分の息子の為に詳細を記録して残してあるのを見つけられてるのだ。
それを表に出したらタダで済まないのはどう考えても国王本人である。
「しかし思い返してみればおかしな話だ。テンテンやレンブから船で1時間かからずに他の国に行けるというのに、他の国は魔王や魔族に何も対抗していない。そもそも、もしかしたら魔族がこうやってあの大陸から来たのは今回が初めてではないのか?」
「ロウフン!もっと短く話してくれ!」
「魔王が現れたとかどうやってわかって、この国以外は魔王と戦ってないよねって話よ」
「ウィンナ。テンテンとレンブは閉鎖的なこの国で数少ない他国との交流がある街でしょ?何か知らない?」
「他国はYo!魔族とのbeefはハーコーなうちに支援してYeah!」
「ウィンナお願いだから普通に」
「あっ。うん。そだね。他国、特に1番近い国シューは自らを勇者支援国と言いながら物資や資金をうちに援助しつつ、魔族の脅威はうちの国アイが引き受ける約束をしてるわ」
「向こうの国は陸続きで、シューは立地や国力のせいで他国や魔族に攻められたら一気に滅びるから、支援することで世界救世の為と他国からの侵略を防いでる」
「なるほど、シューが魔族に乗っ取られたら今度は自分達が他国と魔族に挟まれるからシューは中立国として攻めも攻められもしないってわけね」
元テンテンの当主の家系であったテンプル家の教育係から聞いた話をする兄妹に、理解をするエアルゥとルーシー。
何故魔王の出現が分かるのか、勇者召喚の秘密等未だわからないまま演説の準備を進めていく。
その手の資料は見つかっていない。今ここにいる国王に聞けたら早いのだが、尋問されたもしくは拷問されたなどというリスクを減らすためにランウィが動きやすくなる下準備だけしている。
「お前普通に話せたのかよ!」
リントンが今の会話で理解出来た唯一のことだ。
「ふふ。ウィンナはケンを前にすると喋れなくなりそうだからってこの話し方に変えたのよ。私と会ったときはおどおどしてたものよ」
実はこの拙い文で2作品目です。
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