2-16:王宮へ帰る。
私が誘拐されて、どうにかこうにか事態が収まって数日。
カト領と商業街周りの視察は一次中断となり、私は一足先に王宮に戻ることになった。今回の件で私の身が危険に晒されたことを考慮して、しばらくの間は安全のために王宮に留まるよう通達があったのだ。
あんなことがあってから視察を再開するわけにもいかないし、まあ仕方ない。
事件の後、私はティミッド様にめちゃくちゃ謝られた。むしろ助けてもらったんだからお礼を言うの私の方な気もするけど。間一髪だったとはいえ、怪我無く助かったわけだし。
あの後はすぐに事情聴取が始まって、今回の事件を起こした人たちの素性や理由なども調査された。
聞く所によると、魔法文化の栄えた隣国から来た商人グループで、この国から輸入している魔石の供給量が減ると経済問題に発展してしまうとか何とか、という事らしい。
この件についてはレフレッシ様とティーレ様の方へ打診して、その国との貿易を含めた処置についてと、魔石によるエネルギー装置が実用可能になった場合の魔石の他国へ輸出についての取り決めをするという事になった。
とりあえず、色々あったけど何とか話がまとまりそうで良かった。
そんなわけで、私は護衛の方と一緒に王宮行きの馬車に乗って移動をしている。ティミッド様は事件の後始末やらなんやらで忙しいらしく、一緒に王宮に帰ることは出来なかった。
ぼーっとしながら、窓の外を見る。護衛の方も何も話さないので、完全に会話もなく大分暇だし、なんなら結構気まずい。
……それにしても、何度見てもすごい景色だよなぁ。窓から見えるのはどこまでも広がる森と山。商業街は建物がたくさんあったけど、そこから離れると自然豊かな土地が現れる。色々な産業がこのカト領で行われているというのも納得がいく。
ふと、前の席に座っている護衛の方を見る。ティミッド様が管理している警察組織に所属している騎士の一人らしく、護衛だけあって武装もしっかりしているのだけど、そのせいで顔が見えない。かなり細身なのは見て取れるけど、そのぐらいしか分からない程度には見た目が分からない。謎の人だ。全然喋らないし。
こんな状況でのらりくらりと時は進み、行きの時とは打って変わって静まり返った雰囲気のまま、王宮へと帰還したのだった。
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「お帰りなさい、ラリア」
王宮に着いて馬車から降りると、ティーレ様が王宮の門まで出迎えに来てくれていた。女王様がわざわざ出迎えに来てくれるなんてなんだかむず痒さがあるけども。
「……無事に戻って来られたようで安心しました。申し訳ありません。私も迂闊でした」
い、いや。そんなに謝らなくても……。あんなの予想できないだろうし、そもそも私がそんな重要人物に思われてるなんて考えないだろうし。
「いえ、私は自分の力を過信しすぎていたようです。人の心は移り変わりやすいものですから……」
……そういえば、この国へ入国するためにはかなり厳しい検閲が入るんだったっけ。ティーレ様の能力で心を読むにしても限度があるから、直接入国者全員を見るわけにはいかないだろうけども。
「……そうですね、その辺りについてもお話しましょう。護衛についてくださっていた貴方も。ここまでありがとうございました」
ティーレ様がそういうと、護衛の騎士は小さく頷いて馬車へと戻っていき、馬車は帰って行った。
……いや、本当に全然話さなかったな。途中で宿に泊まるときの必要最低限の会話でしか声を聞けなかったぞ。声が中性的過ぎて結局性別すら分からなかった。
まあ、今度ティミッド様に聞いてみるか……。
「さて、長旅で疲れているでしょうし、今日はゆっくりしてください。その間に私も今後の事について纏めておきます」
そうして、私は促されるまま王宮の中へと戻り、食事や入浴を済ませて久しぶりの自室へと戻る。自室と言ってもまだなじみのない、使用人室。
ふとロクァース家の自分の部屋を思い出して懐かしくなる。寂しい……とまではいかないけど、ラフィネや兄上はどうしているだろう。次に会えるのは何時になるだろうか。
そんなことを考えつつ、着替えを済ませてベッドへ横になる。
……王宮に来てからというもの、本当に色々あったな。デンシャの開発に始まり、魔石についてだったり、貿易や外交の話にも絡んでくると……。
正直、新しいものを開発すること自体が大変な事だと考えていたけど、整備とか、調整とか、外交とか、その辺の事も考えないといけないんだな。……難しいな。
明日からはまた王宮でティーレ様と仕事をしていく事になるだろう。事件の諸々とかもあって話すことも沢山あるし。
また忙しくなるだろうし、今日は早めに寝よう。
そうして、私はゆっくりと眠りに落ちていくのだった。
第2章はここで終わりとなります。
第3章の1話は12/12に更新させて頂きます。
予定より遅くなり申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。




