第1話「私、転生しちゃいました」
よろしくお願いします。
私は某少年誌のイベントに行くため、
深夜4時、家を出た。
徒歩、電車、乗り換えと移動手段を切り替えるうちに
何かよくわからない駅にたどり着いた。
「次は子猫ちゃん~子猫ちゃん~」
その駅名に疑問を覚えた私は、
先に進むことが怖くなり、
子猫ちゃんという駅に降り立った。
どうみても王子様にしか見えない衣装の駅員が
「よく来たね、僕の子猫ちゃん」
とウインクしてきた。
「ないわぁ」
正直に感情を口にした瞬間、
私の意識は消えた。
「次は異世界転生~異世界転生でございます~」
目が覚めると私は意思だけの存在になっていた。
貴族と思わしき家に生まれ、
何不住なく育ち、
いずれは王妃と言われるように王都にほど近い屋敷に
私は暮らしているようだった。
(まあ、何も考えなくていいから楽でいいや)
ドラマの配信でもみているような気持ちで
私は貴族ファルメリア家の長カルリの一部として
人生を終えるはずだった。
「誰か、助けて…」
カルリの乗る馬車は王都へ向かう途中、
盗賊に襲われた。
幸いにしてカルリだけは逃げ出すことが出来たが
慣れぬ山道のせいで遭難していた。
(やばいなぁカルリちゃん、このままだと)
それなりに見てきた手前、
このまま死なせるわけにもいかず、
私は少しだけ手助けができないか
考えていた。
力を込め、木の実を落としてみたり
近くの湖まで引っ張ろうとしたけど
うまくは行かなかった。
そのうち、カルリは倒れ
このままだと衰弱死してしまうと
私は思った。
「んん~子猫ちゃん~子猫ちゃん~」
妙な警笛を鳴らす蒸気機関車が現れるまで
私の心は酷く現実的で必死だった。
怒りに震えた私は力いっぱい叫ぶ。
「助けて、駅員さん!」
蒸気が一瞬止まったかと思うと
猛烈な勢いでカルリのほうに近づいてきた。
「誰だい~僕を呼ぶ素敵な子猫ちゃんは~」
カルリが見つかりやすいように
思いっきり手をふる。
「ん~誰?幽霊?」
「失礼な!」
「ああ君か。お久しぶり。
駅員王子改め駅長王子キラメキ・ザ・スコティッシュだよ!」
「そんなことよりカルリを!助けてあげて」
「ああ、この子…あれ?おかしいね、もう他の誰かに転生してるよ」
「言っている意味が分からないんですけど…」
「ああ、この子の魂はもう、生まれ変わっているってことさ!」
私はカルリちゃんを守り切れなかったことに絶望していたと思う。
「ん~生まれ変わった先の名前は如月友梨佳!君の肉体だね!」
「ふざけんなぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁl!」
私は生まれて初めて、本気で叫んだ。
ありがとうございました。