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エピローグ

 結局、最強のペンという戦闘力(この時点でなにかおかしい)を手に入れた俺は冒険者ギルドへと向かった。

 近辺の人や宿のおかみさん達に相談したのだが、すぐになれるのは冒険者ぐらいしかないらしい。

 常日頃から戦うよりはまだ衛兵の方がとも思ったのだが、なんの後ろ盾もない、ましてや素性もはっきりしない輩がなれるものではないらしい。


 そうしてたどり着いた冒険者ギルド。

 無頼の輩に絡まれるなんてこともなく無事に受付も終了。しかし、実力を測る試験でやらかした。

 ペンを武器にすることで侮辱されたと思った試験官が逆上したり、剣を砕かれて唖然としていたり(気持ちはわかる)、武器を壊したことでちょっとした注意を受けたりしたのだ。


 それでも無事に冒険者へとなる事ができた。

 できたのだが……


 やはりというか、それからも色々あった。

 野党の集団と戦闘になった時、ペンで剣は砕けても斧や槍などは砕けないことが判明した。

 重く分厚い斧を砕けずに受け止めるだけとなった時は本当に焦った。

 幸いなことに、以前暴漢を退けた身体能力は健在で、上手い具合に斧を捌き受け流しつつ懐に潜り込み相手を倒したが、なんとも心臓に悪かった。


 槍も素早いというか常軌を逸した踏み込みで間合いをつぶせば問題なかった。取り回しの問題などから長さの限界もある。

 俺の踏み込みに対して問題となる物はなかった。むしろ短剣などの方が恐いかもしれない。

 まあキチンと反応して砕けるので問題なかったが。



 そんな訳で弓矢を含め各種武器への対応も問題なかった。慣れれば焦ることもなくスムーズに対処できる。

 しかし知識あるもの相手というのは怖いもので、罠や策略など武力や身体能力では如何ともしがたいものもあった。

 身体能力に優れる魔物より知恵ある人間の方が恐ろしいとつくづく実感したものだ。


 たとえ最強と呼ばれる存在になったとしても生物としての限界、個としての限界というものがある。

 慣れたとはいえ殺すことに全く抵抗がないわけでもない。

 だからこそ知恵や権力、カリスマを手にし、自身が直接戦う事を避けるために最強のペンを望んだ筈なのだが、現実の俺は一級冒険者として今日も一人、魔物を倒している。


 俺だってゆっくり休んだり眠ったりしたい。常に気を張っているなど出来るものではないし、やりたくもない。

 やりたくもないのだが、俺が受ける難易度の高い依頼についてこれる仲間はいなかった。

 別のチームとの合同依頼もあったが、そういう物は数少ない。


 結局のところ俺はいつも一人。ゆっくり眠ることも出来ず常に気を張っている。


 お金のことだけを考えるなら、それほど頻繁に依頼を受ける必要はない。

 しかし体面という物がある。

 街の人々から、ギルドの職員から期待の目を向けられ、それを無視できるほど俺は図太くなかった。

 そして期待に応えれば応えるほど更に期待は大きくなっていく。


 いつの日か俺は人跡未踏の地へと踏み込み、前人未到の記録を打ち立て、人々の希望となり、英雄となっていた。

 それなりにちやほやもされたし、良い思いをすることもあった。

 でもさぁ……




「俺が望んだのはこう言う事じゃないんだよ女神様ーーーー!!!」

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