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異世界に降り立った
やって来ました、異世界へ。
とりあえず日常会話に問題は無く、簡単な読み書きも出来るもよう。
当面の生活費も与えられていたので宿を取り、さっそくペンの確認をしているのだが……
「どうにも変わったところが見当たらないんだよなぁ」
そう、普通のペンなのである。
いや、装飾は素晴らしいし、それなのに書きやすくもあり、素晴らしい品だとは思う。素晴らしい品ではあるのだが、凄い文章がスラスラ書けるだとか、多数の人を動かす扇動文が書けるといった能力はなさそうだ。
なんとか捻り出した文章を人に見せてみたが、特に何も起きなかった。
原典の『権力者の署名はどんな武器よりも強い』なんて意味もないと思う。
だって、権力者になっていないし……
まあインクの必要もなく書けるというだけでもすごい代物ではあるのだろうが、それだけでは転生特典としては弱いだろう。きっと何か秘められた力があるに違いない。
そんな風に思いをはせ、予想される厳しい未来を考えないよう気分を変えるべく、探索を兼ねて街へと出掛けるのであった。