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Keep Yourself Alive 第六感の場合  作者: 東山ルイ
グレート・ゲーム
98/289

横浜

「……………。」

横浜の朝は長い呆然と沈黙から始まった。僅か6時間での第2校陥落というニュースは、彼らの空気を破壊するには十分なものだ。

「…第2校は墜ちた。貴方が知っての通りな。横浜はあそこに結構な戦力を展開している。ハッキリ言って…。」

リーコンが絶望を知らせる連絡を会長に行う。アーサーの手のひらで踊っていたことを知った彼は悔しさと怒りと虚しさを覚えたかのような面持ちだった。

「空間移動系超能力者の喪失は最悪の結果だ。ライミーのはったりを看破出来なかったのさ。生徒会が指揮できる生徒の殆どがあいつらの手の中だ。」

学園横浜防衛委員長、熊原研二は意外なほどに冷静な口調で情報を伝えた。本校との対立に反対だった少数派の1人は、今となれば大多数派になってしまった。

「……開発指数段階4の生徒に出頭を求めるわ。今となれば亡国になりつつあるこの学園横浜の防衛のために力を貸して欲しい…。」

力なく最終処置に手を付け始めた美咲は、まるで倒れ込むかのように会長室のソファーに飛び込む。

「ここ何日か全く寝ていないわ。会長案件は全部三浦に回しといて。」

綺麗に透き通った髪が激務によってボロボロになり、アジア人らしい綺麗な顔つきが疲労で固まった頃に、彼女は三日ぶりの仮眠を取る。

「寝るか…寝るか!そうか、そう来るか…。」

うわ言を口走りながらリーコンは何処かに消えていった。その異質な様子を間近で見てきた熊原は、大智に対して連絡を行う。

「もしもし、俺だ。熊原だ。会長殿はご就寝、リーコンはどこかに消えた。休戦協定を結ぶなら今のうちだぞ。」

「……もう遅い。生徒会に厭戦空気が漂っても……」

意味深長な大智の言葉に首を傾ける。そしてその言葉の意味が分かるのはそう遠くはなかった。

学園横浜は動乱を極めていた。伝言ゲームで広がった東京派(スパイ)の情報によって。皮肉なことに横浜の士気は今までないほどに上がっていたのだ。

「生徒会は生徒の支持なしでは何も出来ない。俺たちは一応は彼らからの支持で職に着いているからだ。今、生徒の民意は反本校。主義主張国籍地元、何もかもが違う者たちが一丸になっている…。」

「…皮肉の極みだな。まだ学園横浜は正式に布告もしていないってのに。」

学園横浜生徒、動員可能人数1042名。外様も生え抜きも関係なく、持てる限りの戦力を全て本校にぶつける準備が整いつつあった。

「段階4がいなくても戦になるぐらいだ。」

リーコンにより、つい3時間前からイリイチに対する人工脳髄埋め込み手術を開始させている。翔や義経は無傷で帰ってくる可能性が極めて高い。横浜はかつてないほどの機会を掴みつつある。

「段階3に指定されたヤツらはヤル気満々のようだ。そいつらの応対に追われてるから少し切るぞ。」

電話を切った先には、会長代理が生徒の熱烈に押しつぶされる奇妙な現象が起きていた。

「本校のヤツらが俺の友だちを捕虜にしやがった!許せねぇ!」

「私の友だちも!」

「俺の彼女を返して貰いたいなぁ!」

怒号は本校に向いている。人間関係によって横浜は一枚岩になりつつあった。

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