第2校陥落
「こちら横浜こちら横浜。第2校へ横浜は最高戦力2人を送ります。どうかこの苦難の時でも諦めないでください。我々の友好は永久不滅です。」
横浜は掛け値なしの化け物を2人送り込もうとしていた。この2人は横浜の切り札だ。この2人がもし東京で倒れることがあれば、学園横浜は破産する。それをわかり切った上で、同盟相手への誠意として送り込むことにしたのだ。
「わかってると思うけど、横浜にはもう貴方たち以外にろくな戦力はいない。私や未来だけでは横浜は守りきれない。だから生きて生還して。」
正真の懇願は、美咲にとっての生命線である翔を死地と化している東京に送り込むことに対する不義理を詫びるものでもあった。
「苦渋の決断ってか。大丈夫だ。勝利の女神はこちらに着いているさ。」
翔はそれを汲み取ったのか、冗談のような口調で笑っている。全く心配する必要がないことをアピールしていた。
「兎にも角にもだ。第2校が占領されるのは時間の問題。だが!俺にお前にさらに武蔵がいる。戦局をひっくり返してやるさ。」
それについて行く形となる先輩、義経は負けることを想定していなかった。既に括り抜けた修羅場は数知れず。千人力というのも嘘ではない。
「…頼んだわ。こちらもできる限り戦力を掻き集めておく。」
義経から日本刀を受け取り、翔は息巻いている。各人が成すべきことが決まった今は時間が惜しい。義経と翔は走って、学園横浜所有の軍用ヘリに乗って東京に向かう。
「武蔵はなんでも出来るんだ。ヘリの操縦もな。」
準備万全だった。義経と武蔵の特別な関係は、非常事態にも揺るがない。
「義経くん、東京第2校は火の海です。どうしましょうか?」
テレビ局が映し出した「超能力者学園」は、既に動乱を極めていた。創成による報道規制がかかるのは時間の問題ではあるが、それでも十分な情報が得られた。
「文字通りだな。俺たち学園の生徒は、堅気に手を出すなっていう不文律があるってのに…。これじゃあ一般人にも被害が出てるだろうな。あのライミーめ。やってくれたな。」
超能力者には超能力者たる定めがある。そのひとつに超能力者は一般人に対して極力迷惑を掛けてはいけない、という不文律があった。そのために学園はある程度隔離されており、超能力者が一般人に理由無く手を出した場合、創成のルールにより最悪死刑になる。その不文律を半ば破った形になるアーサーに対して、義経も怒りを感じていた。
「俺たちが超能力者としてでかい顔して歩いてんのも、堅気の方達ありきだろうがよ!ったくよ、舐めやがって…!」
「あのライミーはやはりクソ野郎だな。イリイチの件で罷免したのは正解だった。」
会長に次ぐ地位に着いていた武蔵は、アーサーの危険性に気がついていた。だが、その研ぎ澄まされた警戒心は、他の生徒会役員に危険性を感じさせることも無かったのだ。
「とにかく第2校に着き次第に考えましょう。」
翔の言った通りにヘリは最高速度で学園東京第2校に進んでいく。
「…なんてことだ。」
それ以上の言葉を失った。第2校は壊滅状態。大半の教室は本校生徒に占拠され、ヘリの着陸する場所もない。内線を傍受すると、生徒会本部が何とか持ち堪えているだけでそれ以上の行動が出来ない状態だ。
「…!着陸が不可能ならパラシュートで下に降りれば!」
翔の言葉が空虚な虚しいものに変わるのはそれからすぐのことだった。
「第2校生徒会は降伏勧告を受けた…。当然ながら第2校は…。」
12月8日未明に始まった学園東京第2校及び学園横浜による本校攻略戦は、本校による第2校解放によって、一時的に戦闘が停止した。
「………っっっクソがァ!」
時刻は6時42分。第2校の空域を飛んでいたひとつのヘリから、虚しい怒りが放たれた。




