3人の第1位
「義経先輩、今までどこに行ってたんすか?」
遡ること12月8日未明。闘いが始まった頃に、しばらく学園横浜に居なかった元生徒会会長、義経は帰還していた。
「ん、ま、いろいろとな。それよりも深夜ってのもあるがよ。随分と静かじゃあないの?」
正門から入ってきた彼はいつもは何らかの騒ぎが起きている学園横浜の不気味なまでの静けさに疑念を感じていた。
「どうも横浜は本校と闘うらしいっすよ。なんかイリイチがどうたらで。」
出迎えがないことにも疑念を持った義経は、風の噂で聞いた現序列第1位を呼び出していた。あっさりと知っている情報を義経に話した翔は、問題解決のために義経のカリスマが効くと思っていた。
「へぇ。高橋のことは推薦したけどよ、そんな馬鹿なことをやらかすようには見えなかったがなぁ。」
何か思うことがありそうな義経と、それを脇目に煙草に火をつける翔。オイルライターの子気味いい金属音と火をつける瞬間の音が翔の気分を少しあげる。
「まぁ、俺はあんまり知らんですけどね…今、学園横浜の順位番付が変わったのは知っていますよね。」
「そうだな。超能力者開発指数だっけ?段階を1,2,3,4に分けてさらに順位をつけるんだろ?それの全体1位がお前だと。」
「えぇ、そうっすね。この抗争に際して俺を含んだ段階4には出陣要請が出ているんすけど、誰も反応せず!…ってな感じで、ぶっちゃけ横浜負けますよ。美咲のことは好きだから生かしてやりたいですけどね。」
学園横浜が生徒の流れを透明にするために行った「超能力者開発指数」は生徒会からすれば功罪半ばだった。今までの公式順位では非公表だった生徒が開示され、結果的に横浜が所有する戦力はわかりやすくなったのだ。
しかし、開発指数段階4に指定された生徒は全員と言っていいほど上の命令には従わない。前政権会長であった義経の求心力が強かったのも一因ではあるが、それ以上にイリイチと翔と美咲という2学年で名の売れていた生徒が勝手に組んだ生徒会という印象が広がりすぎていたのだ。
「…なんでかイリイチは続報なし。美咲ははっきり言って開発指数段階4に比べれば見劣りする。俺は美咲に着いているだけ…。他の開発指数段階4の猛者からすれば気に食わんでしょうな。」
ある程度吸い切った煙草を灰皿に入れて、もう一度咥え始める。物憂げな表情は、なぜだか煙草を吸う翔に良く似合う。
「結局のところはよ。求心力の低い生徒会は反本校感情を持つ生徒を動員して闘うわけだ。だが、半本校のスパイ共もこの学園横浜には多いわけだ…。ったくよ、俺と武蔵は高橋に忠告したのさ。求心力をつけろってな。知ってのどおりお前の政権を支持しているヤツらはそう多くはないってな。大方外交戦争に勝った気でいたんだろ…。」
外交戦争。美咲は横浜を中心とした対本校大同盟を作り上げた。横浜、第2校。支援を確証した兵庫。好意的中立を約束した埼玉。これらの流れは誰から見ても横浜の勝利のはずだった。
「外交戦争ってのはよ。戦争にならないためにするもんだ。政治家にとって外交的解決の道が閉ざされるってのは途方もない損失だ。それを理解していない。本校が倒れようが、横浜が倒れようが、最終的解決手段を当たり前に採決するあたりはまだまだヒヨっ子だ。」
義経の外交能力は概ね有能だった。飴と鞭を使い分けて本校を含む他の学園との戦争にならないように腐心していたのだ。
「だが…あのお嬢さんを助けて差し上げましょうか。元を辿れば俺や武蔵がろくに教導しなかったことにも一因があるしな。翔、お前もあの子にいい所見せるチャンスだ。」
学園横浜。かつて、今、第1位と呼ばれる者たちは、やはり第1位の窮地を救うために立ち上がった。




