暗礁
「戦争はやる前から結果が決まっている。有名な言葉だが、君たちはそんなことも知らなかったのかな?」
まるで意趣を返すかのように本校から第2校へ、空間移動系超能力者を利用した侵攻作戦が執行された。ネットワークが遮断された第2校は抵抗出来ずに各個撃破されていく。第2校は悲鳴と嗚咽に巻き込まれて行った。
「ははっ。舐めすぎなんだな、お前らよ。舐めすぎ。舐めすぎなんだよ!」
アーサーの勝ち誇ったような面持ちに勝ち誇ったような声に、本校を巻き込んだ横浜に対する復讐劇はいよいよ転換する時が来ている。
「戦線を引き直そうにもありとあらゆる連絡手段が遮断されています!!第2校を放棄することも念頭にいれて置かないと我々も包囲殲滅されてしまいます!!」
第2校会長にして、今作戦の最高指揮官である青木宗久に伝えられた報告は彼らを諦めさせるには十分すぎるものだった。頭を抱え込んで絞り出すかのように言葉を発する。
「…横浜の会長に繋いでくれ。第2校の主戦力はほぼ本校で殲滅された。横浜が援軍を出さないと第2校は陥落すると。」
学園横浜に残っていた生徒会機能は、いきなりのネットワーク遮断事態に困惑していた。リーコンを軸としたハッカーたちが復旧を急いではいるが、1つ彼らが把握していることは第2校に危機が迫っていることだ。
「…あの腐れライミー。わざわざ横浜と第2校が繋がるためのネットワークは遮断していねぇ。手のひらで踊らされているわけだ。」
学園横浜生徒会会長に繋いだ連絡は、悲痛な叫びにも似た救援要請だった。
「第2校会長だ。本校による大反撃によって第2校は壊滅的被害を受けた。朝が来る前に学園東京第2校は占領される可能性が極めて高い。盟友である横浜からの救援を求む。オーバー。」
電話機からの声を聞き取ると、美咲はいつもの態度がどこかに消え去り、狼狽えた様子で頭を抱えた。
「どうしてこうなるのよぉ!」
彼女は成功していた。6歳から学園横浜の生徒として、掴める栄光は全て掴んできた。その栄華が彼女の存在意義を証明してくれるものだったからだ。高等部の主戦力として。かつての学年第1位として。そして生徒会会長として。
だが、その栄光も崩れさろうとしていた。もはや泣きたくなるような絶望的な惨状に、彼女を包んで守っていた、「栄光」は全く通用しない。
「なんだ…。こんな、こんな、目に会うために、こんな、こんな…。」
現実は常に超能力者という異常的存在を苦しめる。僅か17歳の少女に降り掛かってきた苦難は、自業自得と言って切り捨てるにはあまりにも無残なものだ。そのまま泥の中に溺れた少女は、何ひとつとして何も出来ずに、欲望の象徴である生徒会会長室にて座して死を待つはずだった。
「こんな所で終わりか?俺が知ってるお前はもっと強かったぞ?」
学園横浜高等部3学年。元学園序列第1位。元学園横浜生徒会会長。
「友だちを泣かせる野蛮な男は許せねぇな?」
学園横浜高等部2学年。現学園序列第1位。開発指数段階4第1位。
悲劇のヒロインには格好のいい主人公が着いてくる。学園横浜が投入できる限りの戦力は整いつつあった。




