惨め
「いま、外の世界はどうなっているんだ。どうも慌ただしい。何か問題が起きたのか?」
病室の一角に隔離された学園横浜最高戦力は、その現状に似合うだけの惨めな扱いを受けていた。今までの悪事を鑑みれば、彼はこうやって隔離されて、「妹」と記憶を取り戻すために喋っているほうがいいのかもしれない。
「…なにも起きていないよ。なにも…。」
イリーナは薄々学園横浜の惨状に気がついていたが、また兄が無茶な闘いに向かっていくのを見てなくては行けない、と考えれば彼女はなにも知らないと言った方がいいのだ。
「記憶が安定しないんだ。急に全てを思い出して、直ぐに大量の意思に踏み潰される。俺の意思は一体どこに消えたんだろうな…。」
イリイチの意思を補強して、彼が消滅しないために一役買っている少女は、同時に意思を若干変更して渡すことも忘れていない。
「もう俺、いや俺たちは見捨てられているのかもな…。母国の地も踏めずに死んでいくのか。いまさらロシアに戻ろうなんて馬鹿馬鹿しいってことぐらいは分かるけどな…。」
記憶が途切れ途切れに残っているイリイチは、言ってしまえば哀れなものだった。殺し屋として世界を恐怖に陥れて、日本に来て超能力者としてもこの世界での覇権を握る寸前まで来ていた。それが今となれば座して死を待つ哀れなタンパク質の固まりだ。彼が哀れだ惨めだと言っていた存在に成り果てたのだ。
「因果応報と言えばそれまでだがな。」
それを遠くから見ていた大智も、大量殺人鬼としての「鬼」である彼よりも「友人」としての彼の姿を今生きている者の中では1番見てきた自覚があるからこそ、何処かやり切れない気持ちで埋め尽くされていた。
「…ま、どうすることも出来ねぇ。」
それは諦めへと繋がっていく。学園横浜と本校との天王山が迫っている今となれば、イリイチとイリーナの脆くて美しい繋がりを破壊し尽くす悪夢もない。
「ある意味あいつらにとっては幸せな時間なのだろう。横浜が破綻すればそれも終わりだがな…。」
大智は迷うしかなかった。学園は狂っている。だからこそ、東京とのグレート・ゲームに負けることによってある程度清算出来ると考えていた。自分を含む生徒会全員が生きて帰れる見込みのない懲罰大隊に入れられたとしても、未来のことを考えればそれが正解なのだろう。
だが、友情を考えればそんなことも言ってられなくなる。イリイチやイリーナが横浜による守りが無くなれば、間違いなく培養液に浮かぶ脳髄の1つとして処理される。それもまた未来のためなのだろうか。
何もかもが投げやりのまま、グレート・ゲームは新たなる局面を迎えつつあった。
「…私はこの文を持って本校との闘いを布告する。学園横浜の生徒諸君は是非とも全力を懸けて本校と闘って欲しい。守るものは誇りだけではなく、教養、そして人間性までも…。」
学園横浜及び学園東京第2校対学園東京本校。学園横浜動員可能人数1500名。東京推定動員可能人数3000名。第2校動員可能人数1450名。
学園横浜内レジスタンス推定250名。
「さぁ、惨劇の夜は幕を開ける。」
超能力者たちはその苦難と栄光の末に掴み取った新たなる苦節に向かおうとしている。
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