最後通牒
「東京の帝国主義者どもが私たちを屈服させるために通牒を送ってきた。会長として緊急幹部会を開くことを命令するわ。」
2017年11月30日。寒さが襲ってくる日本列島の横浜に東京からお知らせが届いた。内容が内容であるため、会長のみの解決は不可能。緊急幹部会、生徒会の委員長を集結させた。
「全員揃ったわね。じゃ、三浦会長代理。最後通牒の説明を頼むわ。」
大智は怪訝そうな顔になる。面倒なことを押し付けられた彼は渋々と東京の通牒を読み上げる。
「…創成学園東京本校は学園横浜に所属する生徒について懸念がある。まず、イリイチという生徒だ。本校に対する不法侵入や東京での示威行為。これらは見過ごすことの出来ない野蛮行為だ。そして横浜が契約を結んだイリーナは元々東京が契約する予定だった。これは契約違反だ。生徒の契約は1番最初に接触した東京に優位性がある。それを反故にして、何ひとつとして話し合いなく、黙認していることに対して遺憾の意を表すと共に、イリイチ及びイリーナの東京への出頭を求める。…だそうです。」
委員長たちに一斉して重苦しい空気が漂う。東京の言い分はもっともなことだ。こちら側がグレーゾーンを反復横跳びして煽っているのは周知の事実である。だからといってPKDI:RANK4の生徒とそれに匹敵する生徒を差し出す訳にも行かない。
「あの胡散臭いイングランド人が裏で空気っているのは諸君らが知っての通りだ。内務委員長として彼を追っていたが、本校に拾われて復讐のためにイリイチを拿捕したいようだ。」
リーコンは知っている限りの事実を冷静に喋る。重苦しい空気の中でも彼は異常なまでに冷静だ。
「はっきり言ってどうしようもないね。彼らからしたらかなりの譲歩だが、俺らからすれば屈服するも同然の内容だ。会長殿。決断を。」
わざとらしく責任を美咲に押し付けたリーコンは、元々危ない橋を渡っていた学園横浜の責任者になるのは馬鹿馬鹿しいということを理解していた。内務委員長の彼が大智を会長にしようと思ったのも、傀儡として操って責任は丸投げするためだからだ。
「超能力者開発委員長から言わせてもらうと、東京と闘いになれば間違いなく負けるわ。東京は12校で最も進んだ開発力を持っている。数でも質でも負けてるのに、仮に戦国時代みたいに攻めてきたら学園は陥落。私たちは懲罰大隊で死ぬまで働くことになるわ。」
美咲の肝いりで超能力者開発委員長になった紗友希は端的に話した。絶望的な現状を。3年生はどちらの学園も関係ないとしても、2年生以下の生徒の数で負けており、質でも負けているのが事実であった。
「あの露助を生贄に捧げれば何とかなるけどね。学園同士が戦争するなんて論外だから、これ以上の要求はしてこないと思われるよ。」
外務委員長である三嶋は呟いた。確かな情報筋からの結論だ。アーサーを初めとする過激派たちも、無理矢理戦争に持ち込んだ所で生徒の支持を得られないことを理解していた。この最後通牒を受け入れれば彼らはこれ以上の要求なく引き下がるであろう。
「…だが、どうしてもと言うのなら、外交的解決が閉ざされて最終的解決をするというのなら…。」
外務委員長はディスプレイに学園12校を映し出す。位置と戦力と同盟関係と敵対関係を。
「東京本校と学園横浜の戦争が勃発した場合、このような事態になると思われる。まず、学園埼玉は伝統的に本校との繋がりが強い。地理学的にも実力的にも本校に唯一対等同盟を結べる存在だ。さらに、学園千葉は数年前まではそれなりの力があったが、今は再興中だ。中立を保つだろう。そして、そしてだ。」
東京第2校の場所を叩く。三嶋はやや興奮気味に話し始める。
「学園東京第2校。こいつが我々の重大な同盟学園になる。学園埼玉が伝統的に本校よりなら、第2校は伝統的に反本校だ!遥か昔からな!本校の帝国主義に嫌気がさしたヤツらが集まるファミリー気質の学園。横浜との関係は悪くは無い。我々も反本校だからな。敵の敵は味方!会長、外交的解決をする気がないのなら俺は今すぐにでも第2校と同盟関係を築いてくる。さぁ、決断を!」
「…わかったわ。同盟を組むにしても時間稼ぎが必要でしょ。本校首脳との話し合いの場を設けてもらいましょう。」
美咲も覚悟を決めた。時間稼ぎのための外交茶番劇が始まろうとしている。




