第六感:イリイチVS電気量:山崎康太
「山崎…。聞いた事のねぇ名前だな。」
頭を掻きながらイリイチは疑問と答えを同時に考えていく。
「貴方の名前は有名だからな。イリイチ。シックス・センス使いにして開発指数段階4。学園最強クラスの超能力者よ。」
電気量が康太の身体に集まっていく。それが集まりきったところでイリイチに向けて放射して行った。
「平和的じゃあないな!」
電磁波はあえてイリイチの隣をすり抜ける。宣戦布告という意味合いだろうか。今度は、電磁波が分裂してイリイチの身体を狙う。
それを最小限の動きで避ける。着弾した電磁波は地面を焼き付くした。
「ま、頑張れよ。」
イリイチは安い煽りをする。その僅かな時間で相手の脳波改竄のために制御を外して、送受信で自らに当たらないように脳波を送信する。
「いくらたったってそんなんじゃあ何も倒せねぇ。」
余裕を見せるイリイチではあるが、相手の術算式が思いのほか短いことに気がつく。今までの超能力者は算式が10桁ほどだったが彼の場合は5桁ほどだ。改竄するために怒涛の勢いで計算をするが、それすらも追いつかなくなる可能性がある。
「貴方は超能力を反射しているように見せかけているだけ。シックス・センスを介して改竄を行っているだけだ。だから算式を短くすればいい。」
電磁波が四方八方からやってくる。飽和攻撃によりシックス・センスが反応する前にイリイチに当たれば康太の勝ちだ。イリイチはどんなにシックス・センスが強かろうと、彼自身は生身だ
「だけどよぉ、こうやって中距離攻撃で飽和しようとしたって、俺自身に当たらねぇと意味がねぇぞ。その間にも俺はお前自身の算式を暴いているんだからな!」
切羽詰まっているのはイリイチだけではない。康太としても時間をかけたくはないのだ。算式を完全に暴かれれば、電磁波による攻撃は全て自分に向けられるのは明白だ。今日初めてあった相手というアドバンテージが消えようとしつつある。
電磁波による攻撃を一旦辞めて、康太は電気量を自分の身体にかけて光の速さでイリイチに殴り掛かる。それを喰らってイリイチも思い切り倒れ込む。
「っいてぇ!そう来なくてはな!」
近距離の間合いに入ればイリイチにも少しは分がある。身体を電気に変える算式とそれの速度で詰め寄る算式と相手を落とす程度の威力を込めた殴りの算式を3つ同時並行で行うことになるからだ。どれか1つでも誤算があれば、その時点でイリイチは優位に立つ。
「ただの殴り合いで俺に勝てるやつはいねぇよ!」
「それはどうかなぁ!」
光速でつめ寄れる康太に対し、光速で妨害改竄を行いながら隙があれば拳銃によって頭を撃ち抜かんとするイリイチ。だが、その考えは康太の腹に向かって殴り掛かったイリイチの右手の痛みとともに崩れ去る。
「身体中に電気を纏わせてるのか…。」
「ただの生身でシックス・センスに近づくほど素直じゃあないんでね。貴方は私を殴れない。拳銃だって意味が無い。当たる前に消滅するからだ。ほら、気をつけろよ!」
渾身の蹴りがイリイチの頭に直撃する。脳波改竄をするための時間は、ない。
頭から血を流し、長いこと忘れていた死というものを思い出す。
「思い出したぜ。一号式とか、二号式とか、インチキばっか使ってたからなぁ!おらよぉ!」
追撃をしようとする康太に改竄脳波を送り出す。電気を纏えていないことに気がついた康太は撤退しようとするが、それを掴んだイリイチによって頭突きを喰らわさせられた。康太も軽く脳震盪を起こしつつある。イリイチの体術は17歳とは思えない程に完成されていて、さらにそれを支えるための筋力も着いている。喧嘩ではなく、殴り合いによる殺し合いならイリイチにかなり優位性がある。
それでも康太は攻撃を仕掛ける。単調な電気を纏った蹴りでイリイチの頭を撃ち抜こうとする。それを察知したイリイチは、康太の足に纏った電気量をゼロにして足を掴んで叩きつける。
「何笑ってんだよ。頭ぶつけられすぎておかしくなったか?」
叩きつけられた康太は不遜な笑み浮かべながら勝ちを確信したような口調で話し出す。
「…いいや。…シックス・センスともあろうものが…こんな単純な陽動に引っかかってくれたのが…おかしくてよ…!」
イリイチが頭上に気がついたときにはもう遅い。康太の身体から生じた電磁が溜まってイリイチの身体を撃ち抜く寸前だった。
「あばよ…クソ露助!」




