イエスロリータノータッチ
「いねぇな。犯人もいねぇ…。」
特定された場所にはなにも残っていなかった。イリーナも学園の手先も。さっきの超能力者が時間稼ぎをしていたのなら、彼らが逃げる時間は十分だった。
リーコンに連絡をする。情報力で負けてしまえばもう勝ち目はない。
「リーコン。連中の位置情報をもう1回送ってくれ。俺相手にこんな舐めたことをしたやつにお仕置きしてやる。」
「あいあいさー。」
気の抜けた返事とともに相手の位置情報が送られてくる。やはり情報通を仲間にしておくのは正しい判断だ。
「あんたの妹はお急ぎのようだ。もう時期東京に入っちまうぞ。本校に入られれば厄介だってことぐらいは分かるよな?」
「学園同士の争いになるだろうな。そしてそうなれば俺のクビは吹っ飛ぶ。」
「よォくわかってるじゃない。俺としてもお前という手札が消えるのは惜しい。サポートはすると約束しよう。だから急げ。」
車を再び動かす。速度制限を無視して走り抜ければ、警察が追いかけてくる。
「ったくよ。災難だなぁ!」
それを振り切るためにより速度をだす。どうせ学園の生徒証を見せれば無罪放免だ。だが、そんなことをしている時間も惜しい。
「カーチェイスで俺に勝てる日本人なんていねぇよ。」
イリイチは元々犯罪者だ。大小問わずにあらゆる犯罪をこなしてきた。平和な日本で彼のテクニックに勝てる警察など存在しない。
東京との県境で警察を振り切った。位置情報は確実に近づいている。
「…イリーナは何してんだ?寝てるのか?」
シックス・センス使いが拉致されることなんてありえないことではある。さらに拉致されても振り切る手段はいくらでもある。現についさっきに犯人を気絶させていたはずだ。嫌な予感が漂う。
「…いや、死んでいるなら俺も消滅しているはずだ。」
イリーナは天然な所がある。長いこと隔離されていたのがそうさせたのか、今どき幼稚園生でもかからないような誘拐の誘い方にあっさり乗ってしまうような子だ。適当なことを吹き込まれて黙って座っているのだろうと思うしかない。
「ここだな…!」
路上裏、人気のない所だ。犯罪をするならうってつけの場所だ。
「おいおい、犯そうとでもしてんのか?」
近づいてみると、どうも学園の手先という感じではない。別の日本人のようだ。今にも興奮で死にそうな男たちは、今にも強姦をしようとしている。
「ストップ。レイプはあまり好きじゃないんでね!」
空に向かって発砲する。その音にたじろいだ日本人の強姦魔たちは一斉に動きを止める。
「な、なんだ!お前は誰だ!!」
「その子の保護者だ。保護者の前で子供犯そうとはいい度胸してんじゃねぇか!」
主犯格の足に弾を当てる。激痛と共に足の骨が折れたのかこの世のものとは思えないうめき声を出し始める。
「イエスロリータノータッチ!」
イリイチもイリイチで意味のわからないことを言いながら強姦魔に近づいていく。こうなると虐めのようだ。武装済みの超能力者とただの強姦魔数人では話は知れている。
「はよ去れや。お前ら、そんなにヤリてぇなら…。ほら、治療費と風呂代だ。無意味な殺人はしたくねぇ。」
10万円を投げ捨てる。紙切れ10枚で生命線が無傷で戻ってくるなら全く痛みがない。悪党どもは、金を拾って去っていった。
「ま、確かに金髪碧眼のお人形さんみたいな白人幼女がいれば汚したくもなるか…。だが、その裏には大熊が控えてるんだぞ。阿保どもめ。」
イリーナは眠っていた。睡眠薬でも飲まされたのだろう。恐らくはさっきの強姦魔の仕業だ。つまり、まだ犯人はいる。
「学園の犬か、政府の犬か、それともただのロリコンか…。」
その答えは直ぐに分かった。敵性意思を持った超能力者が近づいてきている。
それを察知した瞬間、電磁波がイリイチの身体のすぐ近くを通り抜ける。
「流石は学園第2位の強者…。やはりそう簡単に殺れないものだな。」
もし、身体を電気そのものに近いものに出来ればそいつはどのぐらいだろうか?自らの意思で電磁波を放って、自らの意思で光の速さと同等に動ければそいつはどのぐらいの化け物なのか。嫌な予感は的中するものだ。
「学園の順位が更新されただろ?その中にはイリイチでも苦戦するであろう猛者が入っているんだ。」
リーコンは大智に話していた。その猛者をピックアップして写真付きで語る。
「電気量を自在に操る正真の化け物。開発指数段階4、第5位。名前は…。」
「「山崎康太だ。」」
 




