制御
開発指数は公示された。結果を集計中。
「今まで埋もれていた本当の化け物たちが浮き彫りになったな。翔。」
「そのようだな。ま、それが何かと言われれば何も無いんだがな。」
リーコンと翔は会談していた。彼女との関係から始まった同盟関係は今になっても生きている。現在学園が認知している限りで1番の実力者だと認められた男は特に変わりようがない。
「案外関係あるかもしれないぜ。お前さんは抑止力だ。学園を覆う陰謀は数しれない。うちのロシア人が悠々としてそれに参戦することがあれば、お前さんはそれを止めなくてはならない。」
「イリイチはそんな馬鹿な真似をするようには見えないがな。」
「暴力装置は暴力の現場にこそ真価を発揮するのさ。金を積まれればアメリカの大統領だって暗殺しに出かけるような男だ。それに…。それに、イリーナという新しい不安要素も出来た。」
翔は考え込んだようだった。彼は自分から学園の陰謀に首を突っ込むつもりはない。だが、段階4に指定された生徒は裏を返せば危険因子でもある。段階3の生徒との大きな違いは1人で学園全体と闘えるだけの超能力者ということだ。翔が知っている段階4はイリイチだけだが、そのイリイチ自体が異常者であることも熟知していた。
「学園本部としては、義経先輩たちがいなくなって抑止力が消え去るのを防ぐための措置なのだろうな。俺や美咲に抑止力をやれといっているのだろう。」
「そんな所だろうな。とにかく、騒ぎが起きたらお前さんやイリイチは出動する義務を付けられるだろうから覚悟しとけよ。」
露骨に嫌そうな顔つきになる。万物破壊という轟々しい能力名に恥じないクラスの超能力者ではあるが、だからといって全てを壊したい衝動に駆られているわけでもないのだ。
「イリイチとも会談しないとな。あいつは特に騒ぎを起こしているから、その分働くハメになるだろうしな。」
リーコンは海の近くのベンチから去っていた。
「ったく、なにが開発指数だよ。静かに暮らしたいだけなのに強制的に名前が売れちまったじゃねぇか。」
舌打ちをして彼もその場から去るのだった。
「まずは学園第2位おめでとう。」
「めでたくはねぇな。めでたくない。なにが開発指数だよ。そういう科学者の自己満足は他の実験動物でやれよ。」
イリイチは珍しく不満げだった。それを気にせずに、これからについての説明をする。
「自己満でもなんでもいい。結果が全てだろ?シックス・センスが弱体化していることもな。」
少し驚いた様子をイリイチは見せた。
「東京にいた平和維持部隊の1人、アレキサンダーがお前と交戦して、激戦の末に宇宙空間と地球空間をねじ曲げる荒業でお前を始末ようとした。結局はお前が根性勝ちして生き延びたが、それの後遺症でシックス・センスが作動しない。」
ここまでバレていたのかと驚愕するような眼差しでリーコンを見つめる。
「そのあと、同じくシックス・センスを使用できる少女、イリーナにお前の意思を補強させることによって、意思の集合体としてイリイチという人間が消滅するのを辛うじて免れた。だが、大人数を相手にするときの二号式も一号式も使用不能。戦闘能力は大きく下がったことを吟味して、順位はひとつ下げられた。更に…。」
アクセサリーを取り出した。綺麗な赤色のピアスだ。
「制御装置だ。お前が昔居た組織でも付けていただろ。このままシックス・センスを行使し続けると、脳波が滅茶苦茶になるぞ。知っての通りだが、これは相手の脳波をジャミングする。意思自体はジャミングしない。いや、できないんだ。敵性意思を感じた時だけ、制御を切れ。普段からシックス・センスを使うのは脳に対して大きなダメージになる。」
イリイチはピアスをつけた。昔居た組織でも似たようなことを言われた。それは間違ってはいないのだ。他の超能力者は脳の指令があって始めて超能力を駆使するがイリイチのシックス・センスは常時作動している。かかるダメージが桁違いなのだ。
「ま、しかたねぇな。意思は相変わらず流れ込んでくるが、脳波改竄は緊急自体の時にしか使わねぇ。そうしねぇと俺の脳が死ぬからな。」
鳩が豆鉄砲食らったような顔つきだったイリイチも落ち着きを取り戻し、然るべき行動をとった。イリイチの意思を補強しているイリーナの影響もあるのかもしれないが、今までの冷徹な夜叉のような目付きが少し人間味を帯びてきてる。
「どっちにしたって風は吹くしな。」




