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Keep Yourself Alive 第六感の場合  作者: 東山琉生
外道、日本に立つ。
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Great King Rat

「偉大なるならず者の王」はいつ死ぬのか。その答えを導き出すにはまだ時間が足りない。

荒野が広がる田舎街にて、親も知らずに産まれ、人から愛を与えられなかったかわりに神から愛を貰って生きてきた。超能力というものはどれもこれもが神から与えられた力であると、数百年前までは誰もが信仰してきた。だが、それは本当にそうなのだろうか。当たり前では済まない「力」を当たり前のように受け、突然変異だとか、思い込みの力だとか、そういう投げやりな説明もなく、ただの「超能力」だ、と思考停止せずに研究を続けた人々はおおよそ増えており、結果的に超能力というものは、一種の計算式として納められるのではないかと、人類はまたひとつ栄光を掴む。シンプルに超能力算術と呼ばれる計算式は非常に長く、それでいて凡人には理解しようのない、数字や文字の羅列であった。

それでいても、この算術を計算すれば摩訶不思議な超能力が使える。この事実は、発展こそしても、死に絶えることは決してないのだろう。

そしてこの算術では捉えきれないさらなる未知の能力、通称シックスセンスはやはりすべてを解明するのに値する力であった。

「市場価値によって順位は変動。順位が高ければ高いほど、成功を約束される可能性は高くなる。」

創成学園横浜校。大都市横浜の郊外に位置するこの高校は、創成学園の中心核のひとつであるためか、生徒の質は非常に高い。

そんなエリート揃いの学校の中でも順位は存在する。横浜校2年生、イリイチの学年順位はまだ発表されてないが、契約金の大きさや、実際の能力の高さから、まず学年一位はほぼ内定と言っていいだろう。

この事実を気に食わない生徒は多いだろうが、推定市場価値は小国の国家予算級だ。下手すれば全校第一位になる可能性も高い。そんな天才児は今…

「わからねぇな、わからん、わからないですな。」

天才というものは不思議なものだ。彼、イリイチは勉強という点では壊滅的であった。仕事柄、日本語を話すことはできても、書くことに関してはそれこそ壊滅状態。ロシア語も書けないし、小学校低学年レベルの算数もできない。実際勉強はしたものの、普段の天才肌は消え失せ、入学試験では総点3点と創成学園初の快挙を成し遂げた。

「イリイチ、お前は確かに逸材だよ。こんなことは見たことがない。逆に今までどう生きていたか気になるぐらいだ。」

算術の勉強をすると言うから、わざわざ彼の部屋までやってきた日本人の友人、大智は呆れる様子でそう答える。

「まぁ、超能力は使えないということは理解出来たさ。なに、俺にはお前という銃弾がいる。護衛隊長に任命しよう。」

銃弾と評され、少々首を捻る。攻撃系超能力が使えない以上、仕方の無いことではあるが、暗殺者の護衛というのは、妙な響きだ。

「そいつは構わねぇ。構わねぇが、常時お前の傍にいろって言う宣告じゃあねぇのかそれは?」

「それは互いにメリットが少ねェな。」

彼の能力が如何に優れていようが、あくまで自己防衛のためのもの。撃つ銃弾がなければ、防衛も困難になってしまう。

「とりあえず、ハンドガンと弾をくれ。殺し屋の取り回しを見してやる。」

そういった取り回しは見事なものだった。少なくとも、ある程度の人数を集めるかあるいは、優秀な超能力者でも連れてくるか。そうでもしないとまず、勝ち目はない。

「久々に暗殺でもしたいものだ…。大智、殺したいやつはいるか?」

厨二病の如く言うものの、目付きは本物のソレである。喫煙者が定期的にニコチンを入れないと、落ち着かなくなるのと同じようなソレである。

「だったらよ、学年上位の奴らに喧嘩でも売ってこいよ。」

「ダメだ。喧嘩と暗殺は違う。依頼を受けて、遂行し、報酬を貰う。そうじゃないとただの野蛮人になってしまうからな。」

現時点で十分すぎるほど野蛮だが、どうも美学のようなものがあるらしく、あまり口出しするのは良くなさそうだ。

そんな野蛮人と意味の無い会話を繰り返していると、彼の携帯が声を上げる。

「大智、殺戮の夜がやってきたようだ。」

非常に興奮し笑みが止まらないという表情で、彼は今日の夜が楽しいものとなることを告げる。

「今日の夜、不幸なことにこの学校の生徒が1人行方不明となる。そして幸運なことに我々はそいつの居場所を知ることとなる。」

「…シックスセンスで未来予知をしたのか、それともそうなることを知ってるからか。」

「両方だ。」

ターゲットは名前のみ。それだけで十分なようだ。

「相手は超能力者。性別女子。学年は3年。学年順位6位。相手にとって不足はない。」

「女でも殺っちゃうのかよ。中々外道行為だぜ。」

「俺は平等主義だからな。性別、年齢、生まれ、そんなものはまるで意味の無いものだ。」

依頼内容を見てみる。どうやらくだらない男女の痴情のもつれのようだ。

「こんなくだらないこと理由でかよ。」

「報酬は支払い済み。消したかどうかは自分で確認するとさ。理由なんざ意味は無いのさ。

そう吐き捨てると、どこから持ってきたのか、アサルトライフルにマガジンにフラグに…最後に覆面マスクを2個持ってきたのだった。

「勉強はできねぇが、こっちの勉強は首席級だ。俺についてこい。ひと稼ぎさせてやる。」

少しを間をおいて「わかった」と俺が言うのを待たずにマスクを投げてくる。

夜は長い…




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