謁見
「相変わらず馬鹿でけぇ学校だな。」
季節は9月、まだまだ暑さの残る日本列島は、この学園においても例外ではない。取り敢えず自分の部屋に戻りたいと感じるが、その前に連中を呼びだす事のが先決だ。
「久しぶりだな。リーコン、大智。」
「確かに久しぶりだ。東京はどうだった。旧友には会えたか?」
「あぁまぁ、けじめを付けたというのか、とにかく終わらせてきた。」
イリイチの顔は久しぶりに拝んだが、隣には見知らぬ少女が立っていた。
「お前…。とうとう幼女にも…。」
「んなわけねぇだろ。色々あってこいつもこの学園に編入させることにした。イリーナだ。可愛がってやれよ。」
大智は邪な考えを浮かべたが、よくよく見てみると顔は瓜二つだ。きっと兄妹かなにかだろうと推測する。
「イリーナ…。おい、イリイチ。ちょっとこい。」
リーコンは何かを察した様子で少し離れた所で耳打ちをする。
「東京本校のネットワークで遊んでいたら、シックス・センスをもった少女を手に入れる寸前まで来ているとあった。まさかとは思うが…。」
「ビンゴ。あたりだ。あの子はもう1人のシックス・センスだ。東京の馬鹿どもには少し勿体ないと思ったから、横浜で生活してもらう。」
「学園同士の外交問題に発展するぞ。」
「それがそうなるかは今から学園長殿に伺ってみるさ。」
リーコンはなんとも難儀な顔になった。東京本校が彼女のために用意した金額を考えればそれを横取りする形になる横浜校に対する思いはより悪化する。
「ま、そんな深く考えんな。どっちにしたって風は吹くっていうだろ?学園長との謁見の準備を頼めるか?出来れば今すぐに。」
「義経先輩なら可能だろうな。」
「あの不能野郎に頭下げるのか。仕方がねぇな。電話番号をくれ。」
スマホを取り出し連絡のために電話番号を取得する。そのまま直ぐに電話をかける。
「長引くかもしれんからその間にイリーナと遊んでやれ。」
「あいあいさー。」
コールが4回鳴って相手は電話に出る。
「よぉ、義経せんぱぁい。この前の桑原の問題は理解しているよな?今回はそれの話じゃねぇぞ。」
「だったらなんなんだよ、どうせろくなことではない。」
「どうだろうな?俺や翔の契約金知ってるか?50億円だ。もしそれに匹敵する中学生をこの額の50分の1以下で手に入るとしたら、先輩はなんて答える。」
「学園長に対していい点数稼ぎになると答えるだろうな。東京で大暴れしたお前のせいでこちらとしてもお前を放っとくわけにもいかねぇし。」
「互いにとってメリットのある話だな。学園長と話す機会を用意しろ。予定時刻は…そうだな、17時ぐらいでいい。頼んだぞ。」
通話の先からは舌打ちが聞こえた。
「ったく、わかったわかったわかりましたぁ!」
「ご機嫌なようで何よりだ。じゃあな。」
通話を切る。イリーナの様子を見てみると案外馴染めそうである。現在年齢が12歳だ。恐らくは中等部に入れられるだろう。
「お前ら、俺がいなかった間に何かあったか?」
「ねぇな。皆何かを準備しているかのように何もなかったぜ。生徒会がそろそろ改選するってのもあるだろうがな。」
「あの風紀委員殿が生徒会会長を目指すんだろ?生徒会権限とか言って桑原を襲わねぇようにちゃんと見張っとけよリーコン。」
「だな。その通りだ。」
謁見まで少し時間が空いたのでその時間は暇つぶしに学園内を歩いていた。
「サッカー場にテニス場にバスケットボール場に野球場まである。大体のスポーツが本格的に楽しめるんだな。」
「野球してぇな。」
大智が呟く。元々野球部であった彼は、たまにキャッチボールをしている時がある。生徒数が無数にいる学園にはキャッチボールの相手ぐらいはどこにでも居るのだ。
「図書館も日本最大規模だしな。1人の人間が一生かけても読み切れねぇぐらいの本だらけだ。」
人間の知の結晶。本はその時代を知ることができて、様々な分野に卓越したものがいることが分かるものだ。
「でも結局喫煙所にいるのさ。」
「あぁ、その通りだ。」
かなり開いた喫煙所にて空を眺めながら煙草を吸う。17歳の趣味にしては退屈な気もするが、それでも彼らにとってはそれが1番の遊び道具なのだ。
「…そろそろ時間だな。イリーナ。行くべ。」
「わかったー。」
そこら辺にいた中等部の生徒と仲良くなって遊んでいたイリーナを呼び出し、謁見のために学園長室に向かう。




