子供のように駄々をこねて、害虫のように駆除される
「このライフルもふさしぶりだァ…。相変わらず軽くて、相変わらず綺麗だぁ。」
「フラグ、閃光弾、銃、弾、そしてこのスーツ。世の中その気になるのが重要だ。映画みてぇな殺し屋さん復活だ。」
イリイチとジダーノフは笑っていた。かつてのようなやり方でかつてのような格好でかつてのような武器。昔を懐かしむということはなんともいい気持ちになる。
「この車も昔のままだな。シートにはヤニの匂いと血が染み付いてやがる。」
1970年代の旧共産主義国家特有のボロボロの車。今となれば味が出ている。日本で動かせば悪目立ちするだけなような気もするが。
「中身は別物だ。このデザインが大好きなんだよ。無駄だらけな無駄のないフォルム。環境汚染に貢献するような排ガス。無骨なデザインの前には誰もが逃げていく。」
「まぁそんなことはどうでもよろしい。とっとと学園に殴り込みに行こう。」
良くも悪くも目立つこの車に乗れば、警察とのカーチェイスにでもなるかと思うが、そこはシックス・センスが有効だ。パトカーがいない所を走り抜けていく。
「そろそろ着くな。二号式開放準備を整えておけ。」
学園には教員生徒警備員併せて1万弱ほど。ここまで多ければ大半の人間は気絶する。
「ここら辺でいいか。二号式を久々に見せてくれ。」
「よォくみておけ。」
ほんの一瞬、イリイチの青眼は赤くなる。それはシックス・センスの受信を送受信に切り替えた合図だ。一瞬にして1万人ほどの人々が気絶状態になる。
「相変わらず痛快な能力だ!おまけに俺までシックス・センスを解析出来るぜ!」
イリイチとジダーノフは敵地に向かう。監視カメラがついている場所を巧みに躱していき、あっさり科学者の居場所、客人用のホテルまでたどり着く。
「あっさりすぎるときのが恐ろしいものだ。」
護衛は倒れている。なにも虐殺する必要も無い。ただ万が一に備え、注意しながら前へ進む。
その刹那、意識を取り戻した護衛が立ち上がろうとする。サプレッサーで頭を撃ち抜くと、残された時間はそう多くはないと感じる。
「警報でも鳴らされれば、一瞬で蜂の巣だ。」
間抜けな、いや今となれば哀れなオタク野郎、科学者は一番奥の部屋で気絶ていた。
「回収して行くぞ。聞き出したいことがあるらしい…イリイチ?」
イリイチは何か肝心な情報を手に入れたかのように、書類を運びだそうとしている。
「シックス・センスの研究データだ。この情報は破棄しないと俺は終わりなところだ。」
シックス・センスの研究。未知の世界を探求する心は非常に尊いものではあるが、イリイチの第六感はもし解明されることがあれば彼の人生は破綻する。ギリギリまで書類を回収しようとする。
「おいおい!不味いぞ!馬鹿共が目を覚ました!脱出出来なくなるぞ!」
「わかった。久々に運動しようか。」
そこから先は一方的な虐殺であった。軽機関銃を乱射し、武装している警備も護衛も関係なく吹き飛ばして行った。
「くそっ!なんでこの暗闇で姿が見えるんだ!」
哀れな断絶魔が聞こえる。シックス・センスからすれば暗闇如きは障害のうちに入らない。明確に頭を撃ち抜き、銃声と悲鳴が収まると、イリイチが前に出て、ジダーノフは科学者を担ぎながら学園を走っていく。
「よし!ズラがるぞ!」
車に追いつき、エンジンをかける。ジダーノフが運転席に座り、後部座席に拳銃を科学者の頭に向けながらイリイチが座る。
「どうも追っ手が来てるな。片付けるか。」
日本だと言うのに堂々と銃を打っ放すのは如何なものと思うが、正当防衛でもあると思い、運転手の頭を撃ち抜く。
「3台お釈迦にした。もういねぇ見てぇだな。ガラスが割れちまったが、請求は学園にしといてくれ。」
イリイチは煙草を咥える。科学者は恐怖のあまりなにも喋らない。猿轡を手馴れた手つきで口に巻きつければ、今度はうめき声がうるさい。
「うるせぇなぁ。イリイチ。黙らせろ。」
「りょーかい。」
足を撃つ。それでも暴れるので今度は目に煙草の火を押し付ける。ようやく落ち着いたのか途端に静かになった。
「ったくよ。大の大人が拉致された位で女みたいに騒ぐなよ。」
「祖国で殺されかけて、亡命した先でも殺されかければ騒ぎたくもなるさ。」
2人は高笑いをする。良識が欠如していると言われればそうだが、別に快楽殺人鬼という訳でもない。彼らにしてみればこれは家出した子供を保護して家に送るようなことだ。亡命した大人を拉致してあの世に送るとそれほど違いはない。
「さぁてと、着いたぜ。依頼人様の所だ。」
黒塗りの車が1台あった。ジダーノフが後部座席の扉を開け、直ぐに黒塗りの車のトランクにぶち込む。
「間抜けな科学者。子供のように駄々をこねて、害虫のように駆除される。墓石にそう刻んどいてやろう。」
時刻は午前2時、その勢いで呑みにでも行きたかったが、シックス・センスの研究というのは何処まで進んでいるかを確認するため、ホテルに戻るのだった。




