マーチオブザブラッククイーン
夜の女王。どういうニュアンスにも取れるこの言葉は、今回は昼の女王との対比として扱われる。リーコンは夜の女王に支配されるのか。あのひねくれた性格の男が女1人に踊らさせられるのか。その答えはすぐそこにあった。
「ご機嫌だなぁ、リーコン。」
大智はどこか面白がりながらそう言う。有頂天はまだ終わっていなかった。
財布の中には新品のコンドーム。彼女の部屋で一気にクリアする気だ。
「苦節17年!報われる時がすぐそこまで来ています!」
とてもご機嫌なリーコンは息子もご機嫌だ。大智からしたら別にどうってことはないだろうが、リーコンにとっては意味合いが違う。
「じゃあ、頑張ってこいよ。応援してる。」
散らかりきった大智の部屋を出て男は戦いに向かうのだった。
弾道が1上がった!
「良かったよ…未来…。」
「ありがとう…。リーコンくん。」
この時のために喫煙していたのではないかと言うぐらいに、手馴れたような手つきでベットの上で煙草を吸う。映画の1幕のようだ。
ロマンチックなムードの中、リーコンは急激に眠気を感じ、落ちてしまうのだった。
目が覚めた。覚めたら朝であることを感じ、そして手が動かないことを認知する。
「これはなんのプレイなんだ?未来。」
まだ余裕がある。拘束はきついがまさか何かをするつもりもないだろう。
「なんのって…決まってるでしょ。リーコンくんが逃げないように拘束してるの。」
そいつは結構なことだ。
「それはいいけど、煙草吸いたいな。吸わせて。」
煙草を咥えさせられ、そのまま火を付けられる。完璧なタイミングで離してくれるため、とても吸いやすい。
「なぁ未来。俺は逃げないぞ。拘束されるとトイレ行きにくくなるから解いてくれないか?」
別に逃げる理由もない。本当にそうなのだ。それを分かったのかあっさりと拘束を解いてくれた。
「ありがとう。」
メンヘラだろうとヤンデレだろうと、ひねくれた男にはまるで意味をなさない。殺されないことだって理解した上での行動だ。
「今日も今日とて遊び行こうぜ。」
きっと感情が軽く昂ったのだろう。昨日のこともあって不安定な感情が束縛に向いている。こういう時は別のことでも考えさせた方がいい。
スマホをみる。鈴木翔の位置はここから遠く離れている。大丈夫だ。
「そうね。朝ごはんつくる。」
「よくよく考えたら、俺の位置情報しか渡してねぇじゃねえか。やべぇ!」
起きて少しふらついていた彼は重要な事実に気がついた。翔はいつでも彼女といる訳では無い。当たり前だが、生徒会の仕事がある彼女とは会う時間のが少ない。そしてその時にどこにいるかなんてことはわからない。
「リーコンに連絡した方がいいな。電話かけよう。」
「もしもし?」
「彼女の位置情報を渡すのを忘れていた。今度高橋さんに話すから、友だち登録しといてくれ。」
「以外な盲点だったな。危ねぇ。」
電話を切ると、アカウントが送られてきた。それを登録しようとした瞬間だった。
「ねぇ…なにそれ。」
殺気が恐ろしい。今までで1番の殺気だ。
「ち、違うんだ。誤解だ。気にしn」
満身の力で振り落とされた木製バットはリーコンを気絶させ、眼鏡を叩き割るには十分だった。
「あの糞女…!あたしから全てを奪うつもりなの!?」
感情のベクトルは不安定な方向に進む。危険な状態だ。今なら止められるだろうが今じゃないと止められない。
リーコンのスマホを持ち、当たり前のように登録しておいた指紋でロックを解除する。間違いない。あの女だ。
「…。」
ただ黙り、黙々と武器を用意する。大量の武器が出てくる。彼女の能力は4次元空間アクセス権だ。4次元空間に無限にものを閉まっておける。超能力の単純な強さもあり、しかも無限に等しい武器を閉まっておける。継戦能力では美咲には負けてはいない。
リーコンはどうすることもできない。意識は微妙に残ってはいるが身体は動かせない。連絡を取る方法がない。
(まずいな…。高橋を殺したあとに真っ先に俺も殺しにくるぞ…)
そんな意識も、僅かな動きに気がついた未来によって止められ、完全に意識不明になった。
「何もかもを奪おうとする悪魔に制裁を下してやる…!」
確実に闘いになる。黒い女王の行進が始まろうとしていた。




