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Keep Yourself Alive 第六感の場合  作者: 東山ルイ
異常者たちの哀歌。
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夏。海。喧嘩。恋愛?。

「いやぁ、平和だねぇ。」

「まったくだ。退屈だ。」

白紙和平ということで終了した一連の流れはイリイチと仲間たちの名声を大きく上げた。まず、チェーカーの崩壊から始まり、学園生徒の大半を占め、そして学園序列第1位をぶちのめした。一応は極秘扱いではあるイリイチの存在ではあるが、その伝説は学園中に知れ渡っていた。

そんな彼らはやることがなかった。季節は8月。海にでも行こうかと普通の高校生らしいことを言い出す始末だ。

「やっぱ女の子が居ないと行く気にはならないねぇ。」

「それなぁ。そもそも車も免許もないしねぇ。」

大智とイリイチが干物と化している間に、リーコンは何処かに行っていたようだ。イリイチの部屋のインターホンが鳴る。

「おぉ、リーコンさんではないか。昼から飲み会しちゃう?」

「いいや、君たちの願望を叶えるために少し色々とやってたんだ。明日、海に行こう。」

「普通の」青春がようやく始まった。


「内務委員殿はお友だちが多くていいですなぁ。車も免許も女も用意してくれるとは。」

「俺たちの伝説は知れ渡っている。非常に簡単だったよ。」

その言葉のどおり、色々な生徒がやってきた。あまりにも多いので車を2つ用意し、海に向かうことにしたのだ。

こちらのメンバーはほぼいつものメンバーだ。運転手ともう1人女子が着いてきた。

「自己紹介しちゃおうぜ。俺は三浦大智。よろしく。」

ヤリ○ン男は元気そうだ。それも納得がいく。中々顔のいい子じゃないか。

「貴方が三浦くん!?よろしくねぇ〜。」

大智は何故か勝ち誇った顔をしていた。だけどな…。

「俺はイリイチだ。一応ロシア人。」

顔じゃあ、俺も中々イケてるんだよ。

「イリイチくん。よろしくね!」

そしてリーコン。こいつは読めないな。まぁ読めるんだが。

「リーコンだ。名前は通称。よろしく。」

彼女は目がさめたような顔を一瞬したのを見逃さなかった。一目惚れだな。

「運転手を忘れんなよー。伊藤健斗。先輩だな。」

「あぁ、よろしくね。伊藤くん。」

そんなに悪い海にはならなそうだ…


「来たはいいが、混んでんな。」

混んでいた。夏休み、しかもお盆休みを選んだのは少し失敗だった。年がら年中休みな俺たちは、別にこの期間じゃなくてもよかったのだ。

「まぁ、取り敢えず着替えんべ。」

男子更衣室も混雑していた。当然騒がしがったが、イリイチたちが来たら途端に静かになった。

「イリイチ。お前刺青やべぇな。」

刺青。つい最近になってかっこいいと思って入れまくったはいいが、日本という国にはあってないな。

「傷もやべぇし…一種の芸術だな。R.I.Pとか入れている人初めて見たわ。」

「んなこと言うお前だってちゃっかり肩に入ってるじゃねぇか。」

「イタズラ彫りだよ。イタズラ彫り。」

イタズラ彫りと言う割にはしっかりしていて、本格的には遠い。半端だな。

「ほら、他のヤツらもドン引きしてるって。」

リーコンの言う通りだ。あれだけ混雑していた更衣室はすっかりがら空きだ。

「やっぱりクルーザーでも買って、そこで遊べばよかったな…」

ある意味本気でやりかねない男が言うと、冗談にも聞こえない。伝説の男たちは伝説に勝るとも劣らないほどにイカれてると知らしめるには十分だった。

「海だねぇ。海だ。結構汚いけれど海だな。」

イリイチは荷物番をしていた。押し付けられたというよりは、自分から率先して行っているのだ。

「よくよく考えたら泳げねぇのに海くるあったのか?」

そもそも来た理由自体を疑い始めるあたり、彼も根暗に近い。

「…でも面白そうなことになってんじゃん。」

夏。海。不良。そうなると定番イベント発生。喧嘩だ。お祭りだ。

大智は無双状態に入った。なんの遠慮もなく、容赦なく誰彼構わず殴りまくる。伊藤くんとリーコンが止めに入る。

「離せよォ!先に粉かけてきたのはあっちだろぉ!」

「おー怖」

2人じゃ無理だと思い、俺も止めに入ることにした。

「落ち着け大智。ほらセッター(セブンスター)だ。一服して落ち着け。」

一服して落ち着いた頃には、もう通報を貰った警察が走ってきた。

ポリ(警察)だ!バックレんぞ!」

まったく、海に来たというのに何やってるんだ俺達は。と、思っていたらリーコンが止めに入る。

「ちょっとまってろ。楽しい夏休みを壊しはしない。」

警察に歩み寄り、何分か話したあとに警察は去っていた。

「なんて言ったんだ?」

「ここら辺で起きた事件の証拠と犯人の情報を渡した。無能県警どもに手柄を与えたのさ。」

「それは良かった。おい、みんな。まだまだ海は終わらねぇぞ。」

少し戸惑っていたようだったが、流石はあの学園の生徒たち。また当たり前のように遊びに行った。

「みんな元気だねぇ。お兄さん疲れてるよ。」

「俺も疲れたよ。少し休んでいく。」

喫煙所に向かい、煙草に火を付ける。全身刺青のロシア人を見て、周りは引いていく。

「こんなんばっかだ。」

「そんなに墨いれているやつはそうそういねぇからな。」

「まだまだ入れられるさ。次は和彫りを入れようと思っている。ジャパニーズニンキョーだ。」

くだらない談話で喫煙所に屯していたら、先程の女子が来る。

「桑原さん?どうした?」

「あ、あぁいえ。なんでもないです。」

なんとなく空気を読んでイリイチは去ることにした。

「恋愛か…。」

どこか物憂げな顔をして、荷物番へと戻るのであった。



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