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Keep Yourself Alive 第六感の場合  作者: 東山ルイ
第2次ダウンフォール作戦
278/289

"化け物"

ちょっと長めです

狼が吠える音がこだました。それは確かに、変哲の宣告を告げた。

「やべェな…。これじゃあマジの化けの物だわ。」

創成学園唯一の虚空夜叉は、正銘の化け物にたじろぎすら覚えていた。それは羅刹速疾鬼も同様だ。

「どうする?公正。なんだったら俺が突撃して…。」

「下らねェこと言うな。誰も死なねェことが一番だ。」

公正と大智は作戦を考え始めた。現状2対1であることは大したアドバンテージにはならない。先に動いたのは公正だった。

「力技でぶん殴る以外思いつかねェんだわ、俺たちバカはよ!」

黒く萎れた翼を広げると、公正は間合いを中距離程に設定し、他愛もない拳骨をクリムへ当てた。

「……ヴヴヴ…ァァァァァァ!!!」

奇怪な鳴き声は、その攻撃が通用していないことを表す。あと言う間もなく、公正は距離を縮められ、勢いよく肩を噛み付かれた。慌てた大智はクリムを蹴りで吹き飛ばす。

「……化け物め!」

肩の大半が噛みちぎられたが、公正は虚空夜叉の持つ再生能力で窮地を脱出した。

()()な化け物型超能力者じゃあヤツには勝てねェわけかよ…。参るぜ。だったら…。」

かつてイリイチと会った射撃場で買った拳銃を公正は取り出す。銃本体も弾丸も人間には扱える代物ではない。

「人間様が食物連鎖の頂点に立つ理由はただひとつ。賢いからだ。今から文明の利器で証明してやるよ、獣野郎。」

安全装置を解除すると、公正はパーマのかかった前髪を上げた。そして、銃弾を放った。

「……!?」

「…ちィったは効いたか?効いたならもう10発ぐらいくれてやんよ。」

しかし黙って攻撃を受けるほどクリムも馬鹿ではない。1度吠えると、公正の照準制度では捉えきれないほどに高速で移動を始めた。

「待ってました!速度勝負なら…。少しだけ俺のが優位だぜ?」

今度は大智が動き出す。公正が渡した日本刀を有効活用出来る範囲に入ろうとする。

「四面楚歌だなァ!止まりゃ公正のデタラメ改造ハンドガンで傷ついて、走って逃げりゃ俺に追い詰められる!なァ?」

闘いが始まってから1時間は経過している。大智の威勢のいい言葉は、体力切れが近いことの裏返しだ。

「ここで決着(ケリ)つけなきゃ…。俺が終わるだけだ。」

既に元の身体を保つことも苦しい。1から鍛え上げて虚空夜叉に上り詰めた公正とは裏腹に、大智の羅刹速疾鬼は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「捉えた…。捉えたぞ!公正…。ヴッ…!」

高速展開の末、逃げ惑う人狼の背中を捉え切った所で大智は血を吐く。糸の切れた玩具のように、大智は無残な身体を晒したまま、その場へ崩壊する。

「大智!…テメェそういう事か。突撃ってのは…。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()俺としたことが…。クソッ…。」

制限時間を大きく通り越した速疾鬼は、砂埃となって朽ちていくだけだ。大智は口を動かす。だがそれは言葉にはならない。

「……しまっ…。」

消え去る大智を唇を噛み締めながら傍観していた公正は、クリムの追撃に対応が遅れてしまった。

____

___

__

獣の感というものは、知らない方がいいことすらも察知してしまう。クリムは心の底から、目の前に立つ女性らしき()()()()に恐怖した。

「旧ソビエト共産党の最過激派、ボリシェヴィキ、クリムね。私の弟、三浦大智をぶち殺したのって…。あんた?」

1歩ずつ彼女はクリムとの距離間を狭くしていく。クリムはこの距離が縮まり切った瞬間に死が訪れると確信を持つ。

「あんたね。時代遅れのカビくせェ共産主義って宗教にハマって、そしたら誰も着いてきません、しかも滅茶苦茶強い超能力者になっちゃいました。だから日本で学生相手に自殺します。……ふざけるなよ。たったひとりの家族を殺しやがって…。テメェ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

萎縮し切ったクリムには、反撃の可能性はない。

彼女はクリムの頭を斧で粉砕し、その脳髄を部下へ渡す。

「大尉、この腐った外道の脳髄は…。」

煙草、かの大智が好んでいたセブンスターへ火をつけた彼女は、冷徹に告げる。

「アァ…。()()()()()()()()()()()絶対に死なせねェし生かさねェ。分かったな。」

部下が敬礼し、去っていくと、彼女は優しげな表情で大智だった砂埃を眺める。

「ごめんね、大智。」

一部始終を見ていたのは公正だった。やられたことを確信し、先に倒れ込んでいて無事だったのだ。

「……貴方が大智のお姉ちゃんですか。アイツはたまに話してましたよ、俺には大好きな姉が居るって。羨ましいだろうって。」

立ち上がり、汚れを払った公正は、先程の冷徹な戦争屋と、今の愛情溢れる姉の姿が別人のように感じた。

「…そう。」

強い人だ。苦しい中も気丈に振舞っている。

「………。」

涙のひとつもあっていい場面も、公正と彼女にはあってはならない。彼らは化け物なのだから。



戦死状況

未来 核兵器を海の底へ転換させ死亡

海里 ウォーシップを自分ごと落とし死亡

大智 能力の限界を超え死亡


ヴェーチャ 全ての陽炎が優希とスバルによって溶かされ焼身

ラーリャ この世のものとは思えない翔の超能力の深淵に触れ消滅

クリム 死なないし生きてもいない


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