"第三次世界大戦"
この小説はフィクションです。
「この戦争は、電撃戦が肝となる。」
緊迫した空気の中、委員長はそう確かに言った。
「我が国は僅かな領土と僅かな人口、貧弱な軍を持っているだけの地域小国に過ぎない。当然日本という国の最大の同盟国、アメリカに敵う通りはない。しかし、我々には偉大なる兵隊と強大な兵器と鋼鉄の絆が結ぶ同盟国がある。国家情勢をひっくり返すにはこれ以上ない千載一遇の大好機だ。」
しかし、確信を持っていた。創成を模写しただけの超能力者部隊も、命中するとは限らない大量破壊兵器も、同盟履行をすると確証がない同盟国も、全てが組み合わされば、強力な武器となるのだ。委員長は続けた。
「日本、その首都である東京への核兵器投下。その後、全員超能力者の世界最大の軍隊が、日本へ上陸する。アメリカが対応できる前に日本を降伏へ追いやり、返す刀でアメリカをも滅ぼす。」
粗がこびりつくような、雑な作戦だった。1つの動作が失敗した時点で祖国は滅び去るだろう。それでも彼らは僅かの恐れを抱いてはいない。
「決号は本日0時。同士諸君、困難を共に乗り越えよう。」
既にミサイルは東京へ向いている。あとは発射するだけだ。
第三次世界大戦は、音もなく始まろうとしていた。
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アラート音がうるさい。明日も仕事だと言うのに。
「いつもみてェに通過して終わりだろ?全く、目を覚まさせるなよ。」
なんと皮肉なことだろうか。日本のレーダーは確実に大量破壊兵器を見抜いていた。だが誰もそれを信じようとはしない。
東京に住む者全てが、最後の平和だった時間を謳歌していた。
きっと、誰も信じてはいないし、アナウンサーだって、テレビ局だって、ラジオだって、政治家ですらも。
もはやできることは何もない。生命を全員で捨てる覚悟なんて、誰も出来ていない。
ジリッ。
東京都通信不能。
「……よォ。あれ見てみろよ。核だ。核の光だ。どこの指導者かは知らねェが、本当にやりやがった。これで第三次世界大戦への筋道は出来上がったな。」
淡々としたイリイチの報告は、学園横浜に居る生徒の危機度を直ぐには上げなかった。
「俺の母国も敵だな、ありゃ。創成学園を滅ぼすのはついで。本当の狙いは…。創成軍隊の完全壊滅。東京に集まった創成超能力者軍隊は何も出来ずに火の中に消えたわけだ。」
創成の軍事力は、他の国の全ての合計に近いアメリカをも超えている。その創成の戦力の3分の1は消え去った。
「……いや、まさかな。」
人間というものは何故、最悪の想定は簡単に出せるのだろうか。
「まさかとは思うが…。この国、いや、創成の敵は…。」
世界一の忌み子は、世界中との対決という方針を採択した。




