イリイチ VS 怪物コーバ
「コーバ、ここは私がやろうか?」
ヴェーチャの提案を腕を振って断ると、コーバの身体は徐々に変化していく。戦闘が始まろうとしていた。
「イリイチ、俺はずっとお前に会いたかったんだぜ?まぐれか実力かは知らねェが、俺に傷をつけたのは事実だからな?みろよ、痘痕みたいになっちまってさ。」
人間らしさを保つことが出来なくなったコーバは、まるでクマのように変わり果てた。イリイチは動揺をいよいよ隠せない。
「……怪物め。」
第六感を限界まで先鋭化し、瞳は朱色を帯びていく。赤い放射線が翼のように生えると、未来予知をしたイリイチは先手を取りに行った。
だが、それを単純な反射神経のみで防御され、さらに手痛いカウンターも喰らってしまう。イリイチは腕の骨折に悶える。
「ッッッァアア!」
「おいおい、どうしたイリイチ。まだ片腕がへし折れただけだろ?ほら、元気だせよ。」
何とか3本の放射線をコーバへ絡ませると、イリイチは残った1本の放射線で撃ち抜こうとする。直撃したそれは、コーバにダメージを与えたはずだった。
「おい…。曲芸じゃないんだぞ。何萎縮してやがる。ブチ切れて俺の顔に傷付けてみろよ。あの時みてェに。ほら。」
言い切った瞬間に、コーバの姿は見えなくなる。それに気がついた時には、背中の骨が軋む音が聞こえた。時間にして僅か2秒間ほどの攻撃だった。
「ッッテェな!クソがァ!!」
イリイチは我を忘れてコーバの範囲に入ってしまった。鍛え上げられた左腕から放たれる拳を顔面で受けた大熊は、それをものともせず、イリイチの腹部を破壊した。
「いtt6ェ…!」
悲痛な嗚咽だった。イリイチはその場に倒れ込む。そして、第六感による紫色の放射線を、横浜中に観測出来るほど垂直に顕にした。
「アアアアアアアアアアア…!!!」
それを振り回し、コーバを仕留めようとする。だが、コーバは1ミリと動くことなく右手の力技で大剣を止めた。
「近所迷惑だ、クソガキ。」
原理不能の放射線を気に留めることもなく、コーバはイリイチとの距離を縮める。その間に何度も何度もイリイチは攻撃を試みるが、それは全て排除される。
「ちったァ楽しいと思ったが…。期待外れだな。ヴェーチャ、もういい。ここを燃やしてやれ。」
足をかけられイリイチはコーバの前に力なく倒れる。コーバは永延と思える時間、イリイチを足蹴にするように、息絶えるまで蹴りを続けていた。
 




