第六感 VS 電気量変換
「…なるほどね。あの雷野郎の妹か。アイツにはお世話になったよ。脳髄に決定的な致命傷を与えられたりな…!」
第1号術式を脳に打ち込むと、瞳は赤を帯びて、イリーナによる補正の賜物なのか、赤い放射線が翼のようにイリイチを包む。
「空中に来い。遊んでやっからよ。」
「上等!」
電磁波も1号式による先鋭化があれば、未来予知のみで回避可能だ。しかし攻撃を与えることは出来ない。電極によって康美の身体に触れた時点で、大量の電気を自分の身体に放出されるからだ。イリイチは避けることに終始する。
「貴方とその一味は学園横浜の生徒会と学園横浜在住の創成超能力者軍隊から抹殺命令が下っている!その命令の有効期間はあと3日。なんでも上の人の意向なんだってさ!だから今無理矢理にでも全員抹殺と思ったけど…。やっぱ貴方だけは簡単に倒れないわね!」
強制放電。康美の身体から出鱈目な電気が不規則かつ無差別に放出される。横浜市中枢の至る所で大火事が起き始めた。
「そう思って全く関係ねェ通行人やサラリーマンをぶち殺すのか?簡単に倒れないから?感嘆しそうだぜ!その短絡な思考回路によ!」
これ以上の時間はかけられない。イリイチは総攻撃を行った。術式解読と改竄によって、康美の電磁波は全て不発に終わる。
「あとはどうやってぶん殴るかだな…。」
戸惑いを見せる康美は、依然として身体中を纏う電磁を無くされてはいなかった。大前提としてある身体そのものを電気に耐えるようにする術式は、非常に短く非常にシンプルが故に、改竄は困難なのだ。
「致命傷は無理だが…。削るしかねェな。」
2枚の放射線を4枚に分担すると、イリイチの翼は彼女を地面へ叩きつけた。電気に耐えきれない放射線の1部は消滅したものの、しばらく康美は痛みで動けないだろう。
「ッッ!イタッッッ!」
時間稼ぎにしかならない。しかし、イリイチはとあることを思いついた。術式の改竄は第六感の十八番と言っても過言ではない。では、その改竄を自分自身にかけることは出来るのか。
「イリーナが1号式にこの羽根だか翼をつけたのは、改竄の末にあるはずだ…。才能の差はあれど、この程度なら…。」
第六感は、気配を強く感じ取る直感。その直感は全て術式によって形成されている。つまりは、電気を無効化する絶縁体物質にも、必ず専用術式があるのだ。
「ということは…。コレか?」
放射線に変わりはない。変わったのは、康美の身体を触れても破壊されないことだ。
「……!一体なにをしたのよ!?イリイチィ!」
途端に笑顔が弾けたイリイチは、指の関節を鳴らしながら康美に近づいていく。その音が終わると、イリイチは容赦なく拳を康美の顔へぶつけるのだった。




