"夢のまた夢"
「第三次世界大戦はどこで起きる。中東か?東アジアか?ロシアか?アフリカか?それともなければ…。日本か?」
陰謀の末は創成が糸を引いている。実質的に創成グループのNo.2となった権藤と、終身名誉会長である渡邊は密会を果たしていた。
「……現在、北朝鮮に亡命した元創成所属の科学者たちが、よからぬことをよからぬ者に引き渡したという報告が流れてきました。最悪の事態に備えて、世界中に散らばる創成超能力者軍隊を集結させています。我が母国の武力では、国は守れはしないでしょう。」
ピースキーパー。超能力者傭兵軍隊、超能力者傭兵部隊、そしてそれの本質は創成超能力者軍隊。創成の権威を守るための軍隊であった。権藤は続ける。
「そして…。第2次決号作戦、それと並ぶ危惧すべき事態があります。我々の天敵、世界最強の超能力者、通名ジュガシヴィリ。かの超能力者1人によって中東展開10個師団が1日で壊滅したことは記憶に新しいと存じます。そのグルジアの怪物が創成傘下10校打倒のために、近々日本に上陸すると。」
権藤は2つの懸念をどこかで結びつけていた。いくら優れた超能力者であろうと、この島国へ単独で上陸することは不可能。つまり、裏で創成と張り合える組織、政府機関が関わっていると推測を建てていたのだった。
「…そういうことか。ロシア政府は敵の味方は味方という歴史的な理論の元、ジュガシヴィリと手を組んだ。政府当局そのものが裏に居れば日本上陸は容易いこと。怪物は列島を荒らして周り、それの討伐に我らは四苦八苦する。しかし、それは囮だと。中国、ロシア、北朝鮮、その他同盟軍が超能力者で武装した上で日本列島へ上陸。文字通りこの国、いや、創成を破滅へ追い込む。そういう事だな。権藤。」
今年を迎えて90歳になった者とは思えない明瞭な喋り口だった。権藤は決定への記名を要請する。
「そうなりますな。では、ご記名を。」
万年筆を取り出すと、渡邊は署名を済ませた。
「これは明確に各国政府に対する挑発行為となるな。弱腰なことに定評がある日本政府の連中が卒倒してるのが目に浮かぶよ。」
日本料亭を貸し切りにした上で、2人の男は重大な決断を果たした。渡邊は葉巻を咥え、権藤はそれに火をつける。
「創成はさらに進化する。科学は戦争を元に進化するからだ。第三次世界大戦を楽しもうではないか。指揮官としてな。」
葉巻の煙を燻らせながら、渡邊は呟いた。




