消耗戦
「この闘いを制すためには、どれだけ建物を制すかにかかっている。ガキの喧嘩じゃないんだ。結論が出ねェなら明日も明後日も明明後日も、永延と闘うだろうさ。だから、校舎、病院、ファーストフード店、コンビニ、なんでも問わずに占領しろ。」
生徒会No.3、三島は生徒会の会員を1時撤退させ、命令を下した。彼に対する支持率の高さは、疲弊した会員が発奮したことに表せる。
「消耗戦だ。生徒会及び治安維持部隊、反生徒会連合、そして第3の組織。どれかが白旗を上げるか、妥協点を見つけ出すまで終わらねェ。治療班は中立に治療するからな。」
消耗戦を宣言した三島は、再び死地へ会員を追いやる。もはや簡単な終わり方はありえない。
生徒会の動きに気がついた連合軍は、結局同じことを行った。食料や寝床、更には娯楽もなくては戦闘継続は困難。超能力者は超能力者である前に人間であるからだ。
終わりの見えない闘いは、基本的に関与するつもりもなく、学園横浜所属病院でテレビを眺めていた翔の参戦をも突き動かす。
「そこまで酷いのか。外は。」
「そこまでだね。大筋の大矢派閥と近藤派閥に、生徒間同士の重い恨みから軽い妬みまで。仕舞いには単純に闘いを楽しんでいるイカれた人間もいる。」
特使として派遣された未来は、まず翔を説き伏せようとしていた。序列第1位の力は計り知れないものがあるのが全てだ。
「……美咲は?アレがこの状況を無視して寝てる訳がない。」
「もう、鎮圧に向けて闘ってるわ。生徒会派閥の長だから中々前線には出れないみたいだけど。」
思うことがある彼女が闘っている。結局、それが決め手となり翔もまた、泥沼の抗争へ参入することを決める。その時だった。
「病院を確保しろ!ここにゃ救急物資が溢れてんぞ!」
大砲か、或いは超能力者の攻撃により、病院の1部に穴が開く。黒い煙と共に、病人の呻き声がこだました。
「……ちょっとアイツらやってくる。」
怒りを顕にした翔は、窓を開け外に巨大な暴風を作る。それを狂いなく声の主へ当てようとする。
「おい!どこの誰だかは知らねェが!病人相手に攻撃なんて正気じゃねェぜ!お返しだ!」
腕を振ると、その黒い暴風が傍若無人な彼らを彼方へ追いやる。
「桑原…。だよな?ああいうヤツらを潰すのみなら参加してもいい。非戦闘員と戦闘員の区別もつかねェバカどもをな。」
制服を取り出すと、カーテンを閉めて、翔は着替え出す。
「行こうか…。」
未来の空間移動により、生徒会の陣地である第3校舎へ送られる。
「鈴木翔!序列第1位!」
「アァ…。そうだ。ぶっ壊すことしか能のねェ序列第1位だ。」
長い間寝たきり生活だったためか、翔は若干ふらついていた。
「お前ら、生徒会の方で限定的に参戦する。まかせとけ。」
学園横浜に激震が走る。内通者による報告に、反生徒会連合の頭領となっていた海里は青ざめた。




