"で?"
「あー。もしもし、こちら側、第4校舎はヤバいことになってる。増援が欲しい。え?そんなものはないって?第4はそこまでだって?こっちは幼なじみが人質に取られてんだよ。ちょっとは配慮してくれてもいいじゃないか。全く…。」
生徒会からの救援は望めない。ならば、裏の裏をかくしかない。足にかかる速度を上げるために、地面を3回蹴り、第4校舎へ彼は突撃する。
「いい女だなァ…。本当なら触れることもままならないだろうが…。そうだな。科学班に感謝だ。」
多量の犠牲を払いながらも、第4校舎の防衛担当の最高格である冷気量自在超能力者、山下優希を昏睡に陥らせることに成功した彼らは、おもむろにスラックスを脱ぎ始める。
「ヤって、殺して、も1回ヤる。暖かい感触と硬い感触を味わえるなんて…。やられたバカどもに感謝しねェとな?」
まさにその時だった。4階、化学室に彼が乗り込んできたのは。
「ビンゴ。」
扉を吹き飛ばすと、彼が怒りを見せるには十二分な状態が、そこに転がっていた。
「……やってくれたな。」
「何がやってくれたんだ?このチビがァ!」
詰め寄る巨体の男を、速度を込めた拳で天井へ投げ捨てる。その時、彼らは思い出す。1学年の時に、学園横浜に伝説を作った男のことを。
「高木スバルだ!テメェら!用心しろ!ソイツが触れた瞬間に…!」
時すでに遅し。速度が全身にかかったスバルは、身体中に蒼い放射線が纏われる。
「くたばりやがれ、半端者どもが。」
静かな語り口で、スバルは淡々と距離を詰めては、即死級の速度が掛かった拳や蹴りを加えていく。
「ッ!…だがよ、俺とてお前と同じRANK3だ。まだケリは付いてねェ!」
最後に残った、優希に乗っかろうとしていた男は威嚇する。
その威嚇も、めり込む勢いで急所を蹴られてしまえば終わりだった。
「で?」
「ッッッァア!」
たった1人の男により、第4校舎の抵抗は壊滅したのだった。
蠢く声が鳴り止み、そうするとスバルは優希を起こそうとする。
「ゆうちゃん、起きろ。なんで幸せそうな寝顔なんだよ。」
「んー。あと5分。」
「今日だけでそれ10回目。起きなさい。」
半ば無理矢理起こすと、肩を担ぎながら、第4校舎の保健室へ優希を連れていく。
「気持ち悪い…。」
「そう言うと思ったから保健室に来たんだ。あのクソ野郎どもが盛りそうな薬の解毒剤は…。」
危ない薬だらけの学園横浜に3年も在籍していれば、その薬の解毒剤ぐらいなら誰でも覚える。見つけて、優希へと渡す。
「あたしが倒れてる間に一体何があったの?」
「何も。ゆうちゃんが頑張って敵を倒したおかげで、俺も早くこちらへ来れた。」
「そうでしょ?やっぱあたしはRANK4に相応しいわ!」
自画自賛に過ぎない。やはり、RANK4から降格は応えたのだろうか。それともなければ、RANK4予備枠にスバルが入っていることを知らないのだろうか。
「そうだね。ゆうちゃんの方が…。向いてると思う。」
彼女を傷つけたくない。スバルが絞り出した言葉は、精一杯の擁護だった。
で?




