RANK:3 完全透明
「お初に。イリイチだ。序列第2位のロシア人のな。」
学園横浜の寮と一重に言えど、それは大量に分岐されている。そのうちのひとつ、考える間でもなく戦力外寸前の生徒が押し込まれる古めかしい寮に、イリイチは来棒しに来た。
「…帰れ。」
「そんなこと言うなよ。第2校期待のホープだったヤツがよ?山田理人。」
第2校の崩壊は、理人のような生徒の未来を無下にした。彼は超能力者として優れた才覚を見せていたが、学園横浜での扱いは下の下であった。
「アァ!そうだ!ホープだったんだよ!それが今じゃどうだ?学園横浜は第2校の物理的な崩壊を必死に隠蔽して回ってやがる。俺がこうやってラクガキだらけのクソ寮に住んでんのもそれが原因だ!」
怒りをぶつけた所で何も変わらない。もうわかり切ったことだ。それでも理人の鬱憤は続く。ヘラヘラとしながら、イリイチも耳を傾ける。
「よし、よくわかった。要は生徒会に報復、基、逆襲したいんだろ?奇遇なことに俺もそうなんだ。取引をしよう。今から俺が言う内容を厳守して、実行してくれるなら3億円出そう。復讐して金まで貰えるなんてそうそうねェぞ?」
突拍子のない金額、理人の心拍数は上がっていく。しかし、その後にイリイチが言った事の方が恐ろしいことだと確信を持つ。
「火炎瓶、火炎放射器、ガソリンぶっかけて…。なんだっていい。生徒会を燃やし尽くせ。」
「本気で、言ってるのか?」
「本気で、言ってるぜ。全身透明系統超能力、その最高格に到達した山田理人にな。」
しばらく硬直していた理人は、いつしか力のこもった目付きを見せた。それは了承であると解釈したイリイチによる説明が始まる。
「まず、俺が雇ったハッカーに本部の1部監視カメラをハックさせる。だがそれは囮。目立つようにハッキングの後を残させる。それが始まった瞬間に、お前は透明化して、真正面から堂々と侵入しろ。灯油を持ってな。んで、灯油を満遍なく零していけ。所要時間は10分。10分以内にここに来い。分かったな?質問は?」
「何故10分以内なんだ?俺の透明化は、制限時間こそあるが姿かたちも見えないし、音も聞こえない、落としたものも見えない。10分じゃあ少なすぎるだろ。」
「大丈夫だ…。しっかりと皆殺しにするための方法はある。人の家を燃やしやがった薄汚ェ外道どもに、正義の制裁を下してやる。」
もう引き返すつもりはない。超能力者たちは、学園横浜史上例を見ない内戦の火蓋を切り落とそうとしている。
 




