違う目的
「こちら側に鞍替えする者も多いだろうな。これも全て君のおかげだ。公正。」
「はァ…。」
漠然とした違和感は、ついに隠しきれない所まで来ていた。間違えた選択に公正は考えを巡らす。
「何故なんだろうな。確かに、生徒会の連中は正すべきだ。それは俺の意思でもある。だがよ、それだけでいいじゃあないか。粛清だか懲罰だか知らねェが、醜い派閥争いを見せて、それが下のヤツらの手本になるのか?」
「答えのないことを言わないで。私だってさ、こんなの間違ってるって思ってるわ。ここには0か100以外の答えはない。行くところまで行くだけ。」
海里の言う両極端な体制自体をひっくり返したい。それが公正の答えなのだろう。そのためには、ある程度の権限がいる。
「だから派閥を拡張するしかないってか。今、俺が認知している限り、翔は行方不明。イリイチも同様。捨て石にされた石井は…。今頃死んでるだろうか。」
「三浦は列記とした生徒会。取って付けたような超能力でイキリ散らしてるんじゃない?進藤陸はこの前貴方が討伐した。これでRANK4の残りは、2人と1人。」
学園横浜におけるRANK4生徒というものは、とても重要な地位を持つ。基本的にその直下のRANK3が束になっても敵うことはない。熟練の教員たちですら手こずり、或いは敗北するだろう。海里と公正はRANK4であることと同時に、同次元の超能力者と対決することの困難さを理解していた。
「出来ることならRANK4全員をこちらに引き入れて、闘うことなく終わらせたいがな。こんなもんは無意味な茶番だ。」
「茶番で終わるかどうかはあの露助が決めることになりそうね。見て。」
横浜市xx区xx町にあった家が、何者かの放火によって燃え去った。海里が見せた映像は、それを配信した動画だった。
「…おい、まさか。」
「まさか。そのまさか。この家の持ち主は便宜上、田代富田っていう元超能力者傭兵軍隊になってるけれど、本当の持ち主は…イリイチって訳。当然こちら側はそんな蛮行をするヤツは居ない。つまりは…。」
「危険因子の壊滅作業。イリイチもイリーナも剣呑な存在だ。第六感によって気がつくことを承知で仕掛けたんだろう。脅しか、宣戦布告か。」
逆に清々しい。公正と海里は苦笑いを見せる。そして、近藤率いる「反生徒会連合」へ一斉にメッセージを送るのだった。
「生徒会本部には近寄るな。」
激しい報復措置が、生徒会の前途を多難にする。




