"フォロー"
イリイチの生活は不変動だ。睡眠は1日2日徹夜程度ではそもそも眠くもならないし、食事も疎ら。酒と煙草が彼を支えているといっても過言ではない。
緊急事態を鑑みて、ビジネスホテルに逃避したその日も、イリイチは一睡としていない。眠ったと思えばまた目を醒ますのだ。
「寝れねェな。まるで寝れねェ。」
確保した部屋は3部屋。イリイチとイリーナは同室にて睡眠を取る手筈だった。
「つまんね。」
小音でテレビを眺めても、全くと面白くはない。母国ロシアのテレビすらもあまり見ることのなかったイリイチには、その楽しさは理解不能の領域だ。
妹が居る以上、外に出ることは叶わない。セキリュティが疎かであるのは明らかであるからだ。
「…武器の手入れでもすっか。」
愛国主義者として、アメリカの武器は断じて使わない。信用性の問題や単純な性能はあちらが上回っているかもしれないが、そこはプライドの問題なのだ。
とは言えど、手入れを行うものはひとつだけ。9mm弾頭の拳銃だけだ。あっさりと終わらせると、また模索の時間に突入する。
携帯を開き、SNSを閲覧すると、そこには大量のDMが溜まっていた。
「普通のロシア人 フォロー128 フォロワー5823」
日本語を喋り、日本語で呟くだけでフォロワーは淡々と増えていく。悪趣味な服装を一心不乱に褒めちぎられると、少し怪訝な気分にもなるが。
「連中のでも見てみるか。」
学園横浜で検索して出てくる馬鹿は居ないだろう。そう思っていた自分が馬鹿だった。該当が何名か、そのうちのひとりは顔見知りのようだ。
「ゆーちゃん フォロー457 フォロワー273」
「アニメとゲームと自撮りしかねェな。オタサーの姫ってヤツか?」
次は本名でエゴサーチだ。こうなると少し面白さを帯びてくる。
「D.MIURA フォロー120 フォロワー123 」
恐らく大智だろうか、鍵アカウントで閲覧は不可能だ。プロフィールを見る限り、野球関係のアカウントのようである。
「これが普通かな。多分。」
知り合いは片っ端から閲覧していく。完全に楽しみを覚えていた。
「みく フォロー2013 フォロワー2010」
「高橋美咲 フォロー853 フォロワー1283」
女性陣はどうも多めのようだ。露出度高めの服装を載せている未来がリードしている所だろうか。
「シバター フォロー17 フォロワー17」
公正の場合、本当に仲のいい人間以外フォローもしないようだ。交友関係の広さから意外性を覚える。
「スバル フォロー403 フォロワー432」
「SHOW フォロー357 フォロワー400」
彼らは小学校、中学校、そして学園横浜の1部生徒をフォローしているのだろう。丁度アベレージだと感じる。
「……寝るか。」
全く意味の無いエゴサーチをするよりかは、床に寝転んだ方がまだ有意義だと思い、イリイチは眠りにつく。
閑話休題的な、とばしていいです。




