小競り合い
「三島さん、また小競り合いが発生してます。鎮圧部隊を派遣する許可を。」
所謂社長椅子に凭れながら、三島は空を眺めていた。学園横浜は四面楚歌状態に陥り、各地で小規模な闘いが生じていたのだ。
「アァ…。許可する。極力死人が出ねェようにな。」
会長、美咲は復帰する日にちに丁度大怪我で病院へ搬送。会長代理となっている大智は極秘で入院して、先日RANK4の第6位になったことが発表された。貧乏くじを引かされたというのは否めない状況である。
「高橋のアホも三浦のバカも居なくなったと思ったらこのザマだよ!笑いたきゃ笑え。大矢のおっさんの権力闘争に巻き込まれて、リーコンの野郎はあからさまにヤベェことに関与してやがる。ったく!誰が責任取ると思ってんだよ!自己中どもめ!」
「…また、三島さん1人で怒鳴り始めたよ…。」
「俺らの前だと痛々しいぐらいにまともなのにな…。」
もはや生徒会所属の生徒の大半は三島に信仰心すら抱いていた。このまま大智か美咲が復帰すれば、三島の苦労も終わりを遂げるのだろう。
「あの…。休暇を貰ってもよろしいですか…。」
「アァ。構わんぞ。何日欲しい?」
組織の頂点に立つ者として、部下には甘く自分には厳しいでは長続きしない。この時期の休暇申請とは難儀なものだが、それでも、三島は受け入れる。
「…よし、じゃ、おふくろさんにもよろしく言っといてくれ。」
「あ、ありがとうございます。」
申し訳なさそうに立ち去る生徒が部屋から出た瞬間に、また怒号が飛び散る。
「いつになったら帰ってくるんだよォ!あのアホどもはァ!後輩どもが萎縮してるだろうが!アァ!?」
壁に黒い穴が出来る。これで12個目だ。
「失礼します。緊急です三島さん。また小競り合いが発生したとですが…。今回の件は…。」
青ざめた生徒の顔から三島は察した。そして覚悟を決めた。
「RANK4同士の闘いです…。序列第3位、いや、第4位の柴田公正に我が生徒会の最高戦力である序列第7位、進藤陸が噛み付いたとの報告が…。」
人間本当に怒りが込み上げる時は、案外落ち着くものだ。三島は深い深呼吸をして、抑えられない感情を暴露するように叫んだ。
「ふざけんじゃねェェェェェェ!何やってんだ進藤のバカはよォ!柴田とやって勝てるとでも思ってんのか!?アイツは近藤派だって散々報告したよなァ!相手にするなともなァ!捕まって全部ゲロられちまえば俺たちは終わりだぞ!?あーあ!!クソがァァ!」
棚に陳列してあったウイスキーをコップに注ぎ、三島はそれをストレートで飲み干す。明らかに頭のねじが外れた形だ。
「生徒会各員に伝達!会長代行命令である!今日はみんな上がれ!つか呑むぞ!呑みだ呑み!」
本部に歓声が巻き上がると、誰かが始めたビールかけに三島は参戦するのだった。




